ペンシルベニア州政府地域振興・経済開発局 日本投資事務所主催、日本貿易振興機構(ジェトロ)共催による「米国・ペンシルベニア州投資セミナー」が6月29日、東京都内で開催された。冒頭にペンシルベニア州政府地域振興・経済開発局 日本投資事務所投資担当アドバイザーの長谷川靖志氏が挨拶し、「今回のセミナーでは米国経済全般と新技術についての話もある。新市場の創造などヒントになる話ができればと思う」と語った。
セミナーでは、まずジェトロ海外調査部米州課アドバイザーの木村誠氏が「米国先端技術の動向とビジネスチャンス」のテーマで講演。先進国としての米国の特徴や魅力、先端技術に対する日本企業のビジネスチャンスなどを紹介した。
続いてジャパン・テクノロジー・グループ/恵泉国際特許・法律事務所の山本光良氏が「米国参入した先端技術企業のケーススタディー ~失敗事例から学ぶ成功への近道~」のテーマで、自身の経験談を踏まえて講演。米国で起業に成功するに当たっては、日本の成功体験を捨てることを強調した。米国には独自のエコシステム、テンプレートがあり、自己流では相手にされないが、逆にこのテンプレートを活用すればスムーズに行くと説明した。大手企業の子会社を設立する場合でも、起業家精神が必要であるとし、現地のネットワークの活用や弁護士、会計士、コンサルタントなどの専門家にお金を払うこと、特許戦略を重要視することなどを強調した。
最後にペンシルベニア州政府地域振興・経済開発局日本事務所投資担当代表の高山恵史氏が、「ペンシルベニア州の先端技術産業のビジネスチャンス~ペンシルベニア州の概要、事業・投資環境、助成制度化~」のテーマで講演した。
ペンシルベニア州は米国北東部に所在。面積は11万9289km²で、日本の本州の半分、北海道の1.4倍にあたる。人口は1278万人で全米6位。州都はハリスバーグで人口5万人程度。主な都市として人口150万人のフィラデルフィア、人口30万人のピッツバーグ、ペンシルベニア州立大学があるステートカレッジ、製鉄と造船が有名だったが現在は先端技術の町となったリーハイバレーなどがある。ピッツバーグは鉄鋼の町として有名だが、最近はライフサイエンス系が集積している。日本企業は200社、日系企業は539社が進出しており、約2万8000人が働いている。うち125社は製造業で、8500人が働いている。
ペンシルベニア州は巨大経済圏の中心にあり、同州からトラック1日で移動できる距離である800km圏内で米国人口の4割、カナダ人口の6割をカバーできる。
世界有数のライフサイエンス企業が州内に拠点を有し、約2300社のライフサイエンス企業があり、約8万人が州内で働いている。ペンシルベニア大学、ペンシルベニア州立大学、カーネギーメロン大学といった研究大学を中心にクラスターを形成。これら大学からの技術を持つベンチャーが、ベン フランクリン テクノロジー パートナーズやライフ サイエンス グリーンハウスといった州政府系ベンチャーキャピタル(VC)やプライベートVCから資金を受けて、成長が加速している。
また、州内ではフィラデルフィアとピッツバーグがICTのクラスターを形成。フィラデルフィア近郊では約15万人、ピッツバーグ近郊では約3万人がこの業界に従事している。
同州は歴史的に製鉄や造船が主要な産業であったため、現在は、その流れを汲んだ金属、素材、輸送機械、化学、プラスチック/ラバー、電気といった分野での製造業が多い。プラスチック産業においては、シェールガス由来のエチレンを低コストで調達することが可能となり、かつその場合は特別税額控除が可能。
1963年にフィラデルフィアにある5つの大学と研究所により設立された、米国で最も古く最大の都市型研究パークであるユニバーシティ シティー サイエンス センターがあり、ベンチャー企業や中小・大手企業向けにオフィスやラボラトリーを提供している。
日本事務所は、日本企業の進出サポートを無償で行っており、日本企業が米国に法人・事務所を設立する支援や、州内の労働、賃金、税金などの情報提供、候補となる土地や建物を探す手伝いなどを行っている。
高山氏は「日本からペンシルベニア、そして世界へ」の言葉で講演を締めくくり、ペンシルベニア州への進出を足がかりに、世界への飛躍に貢献することをアピールした。