韓国流通業界の「免税店戦争」が一段落した。韓国関税庁の免税店特許審査委員会は7月10日、ソウル市内における新規免税店の大手企業事業者として、HDC新羅免税店(ホテル新羅と現代産業開発の合弁法人)とハンファギャラリアタイムワールド(ハンファギャラリア免税店)を選定した。
景気低迷や消費不振にもかかわらず、観光客に活気付いた韓国免税店市場は持続的な成長をみせており、13年は6兆8000億ウォン(約7391億円)だった市場規模が14年は8兆3000億ウォン(約9022億円)へと急成長した。韓国関税庁は中国人観光客の爆発的な増加に伴う免税店の需要増に応じて、ソウル市内3カ所の免税店を新たに出店することを許可することにしていた。
今回選定されたHDC新羅免税店は、「世界最大級の都心型免税店」構築を掲げ、ソウル市龍山区のアイパークモールに出店する計画。ハンファギャラリア免税店は、「汝矣島観光コース」を手がけつつ、ソウル市汝矣島63ビルに出店する。
このほか、中堅・中小企業に割り当てられた免税店枠にはSM免税店(ハナツアーなどのコンソーシアム)、済洲島には済洲観光公社が選ばれた。
今回の審査には、韓国内の2大免税店事業者のロッテと新羅をはじめ、新世界や現代百貨店グループのほか、イーランド、SKネットワークスなどが参画した。
HDC新羅免税店が事業権を勝ち取ったことによって、ホテル新羅は韓国免税店業界におけるトップ争いに加わることになる。14年の韓国免税店市場シェアをみると、ロッテ47%、新羅31%だった。ホテル新羅はさらに東和免税店持ち分19.9%と、HDC新羅免税店持ち分50%を持っており、実際の占有率はさらに高くなる見通しだ。
また、現代産業開発は、ホテル新羅と免税店事業を共同運営することによって、独自で運営する場合と比べて、売上高は2倍、営業利益は3%強高められるという試算もある。シナジー効果を出せるホテル新羅と組んで、免税店特許審査に臨んだのが功を奏したといえよう。
さらに、ハンファグループは、14年に済洲島空港免税店の事業権に続いて、ソウル市内の免税店まで獲得し、本格的な免税店事業ができるようになった。ハンファギャラリア免税店は、中国人が好む金色の「汝矣島63ビル」に出店する。
他方、今回審査に脱落した免税店は、再度のチャンスに期待を寄せている。関税庁は、15年末に特許期限が終了するソウルと釜山市内免税店について、9月にも後続事業者の申請を募る。
特許期限が満了となる店は、SKネットワークスが運営するウォーカーヒル免税店と、ホテルロッテが運営するロッテ免税店小公店、ロッテワールド店など、ソウル市内3カ所と釜山1カ所(新世界免税店)で合計4カ所となる。韓国流通業界では、15年末にも免税店特許権を巻き込んだ熱い獲得合戦が、再び展開される見通しだ。