商業施設新聞
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No.514

少子化における商業施設の役割


高橋 直也

2015/7/14

 建設系の業界新聞を読んでいた。何の気なしに読んでいたのだが、二度見してしまった。筆者の母校が生徒数の減少などを理由に近隣の小学校に統合され、廃校になるかもしれないという記事があったからだ。少子化の時代において、小学校の統廃合はありふれた話題だが、母校は筆者が通っていた約20年前まで北海道・東北エリアで有数のマンモス校だった。少子化、ここに極まれり。

 母校のホームページを見たところ、今はほとんどの学年で2クラスしかない。筆者が通っていた当時は5~6クラスあった。当時は「これ以上児童が増えると教室が足りなくなってしまう」と、ちょっとした危機になっていたはずだ。

 そういえば2~3年前、飛ぶ鳥を落とす勢いで成長していたステーキ・ハンバーグレストラン業態が実家の近くに出店した。その会社の社長は「国道沿いの良い場所を見つけた」と思って出店したそうだが、その後同業態で初めて不採算による閉店をしたという。小学生の子供を持つような若い家族が少ないことも影響したのかもしれない。

 まだ統廃合は『案』であり、母校が統合する側として残る可能性もあるようだ。しかし、母校が残ったとしても近隣の小学校は廃校になるはずだ。それも悲しい。「何とか若い家族を呼び込む方法はないものか」と考えてみた。しかし、考えを巡らせると、あるジレンマに気付く。

 もし画期的なアイディアで、地元に若い家族や子供を呼び寄せることに成功したとする。しかし少子化が進んでいるため子供の絶対数が少なくっている。そのため、地元に若い家族を呼び寄せるということは、他のエリアから奪い取ることになる。地元が良くなっても他のエリアは少子化が加速することになってしまう。自分たちが幸福になるために他人を蹴り落とす……なんだか人生の縮図だ。

 結局、少子化そのものを解決しないといけないようだ。では少子化の解決(食い止め)にあたっての商業施設の役割は何か。期待したいのは若いママ、ニューファミリーのサポートだ。

 ネット通販が拡大していても、まだまだ商業施設は生活する上で欠かせない。夕飯の時間が近づければスーパーに行き、ちょっとした飲み物を買いにコンビニに行く。休憩時間や友人と話すときにはカフェに行く。商業施設は生活に深く密着している。それぞれの施設で、若いママ、ニューファミリーをサポートするような取り組みがあれば子育てしやすい環境ができるはずだ。

ららぽーとではキッズルームなどを設置して「ママに優しい」施設づくりをしている
ららぽーとではキッズルームなどを設置して
「ママに優しい」施設づくりをしている
 例えば三井不動産が「ママwithららぽーと」として、広い授乳室を設置したり、駐車場フロアまで荷物を運ぶポーターサービスを行うなど、小さな子供を持つ母親が過ごしやすい施設をつくっている。こういった取り組みが必要になるのではないか。

 最近はスーパー、コンビニなどを中心に多くの業態で「シニア対応」が増えている。しかし「若いママ対応」がもっとあってもいいのかもしれない。
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