電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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中小型パネル市場「技術優位が実力差に」


~「IHSディスプレイ産業フォーラム2015夏」開催(中)~

2015/7/10

シニアディレクター 早瀬宏氏
シニアディレクター 早瀬宏氏
 大手調査会社のIHSは、7月29日、30日に国内最多の受講者数を誇るFPD市場総合セミナー「IHSディスプレイ産業フォーラム 2015夏」を東京コンファレンスセンター・品川(東京都港区)にて開催する。注目の講演内容を登壇アナリストに3回にわたって聞くシリーズの第2回は「中小型FPD&アプリケーション市場」を担当するシニアディレクターの早瀬宏氏に話を伺った。



◇  ◇  ◇

―― 中小型パネル市場の傾向は。
 早瀬 流れが変わってきた。ジャパンディスプレイ(JDI)がかなり元気で、相当シェアを上げると見ている。円安の追い風もあるが、その主な理由は「技術優位性が実力差を分ける」ということだ。激しい競争の渦中にあるスマートフォン(スマホ)メーカーは、コモディティーに流されると勝ち残れない。ゆえに、JDIのパネルを搭載しないとスマホの競争力を高められない。誰もがソニーのCMOSセンサーを使いたがるのと同じだ。JDIの低温ポリシリコン(LTPS)、IPS、インセルタッチという技術優位性がブランド力向上につながっているという構図だ。

―― スマホにフルHDのアモルファス(a-Si)TFTを搭載しようという流れもありましたが。
 早瀬 無理をしてa-Siを使う必要はない。LTPSの価格が十分に下がってきたし、スマホメーカーは競争力が劣る選択肢を取れない。言わば「スマホにおけるa-Siの衰退」が始まっているのだ。


―― サムスンは有機ELで差別化しています。
 早瀬 有機ELで差別化する戦略をよりいっそう強めてくるだろう。フレキシブル化やそれを活用したデザイン性を打ち出してくる。アップルやシャオミーと対抗するには、それしか手がない。多少は外販もするだろうが、そう大きくは伸びないとみている。

―― IGZO/オキサイドはどうでしょうか。
 早瀬 LTPSと異なるステージで勝負する努力が必要だ。フルHDクラスのミドルゾーンで勝負する、あるいはタブレットやノートPCといった中型を狙うのも手だ。省エネ性能で徹底的に差別化するという方法もあるだろう。

―― パネルの高精細化に関しては。
 早瀬 4Kへ進むだろうが、フルHD~WQHDのあいだ、300~400ppiクラスがボリュームゾーンだ。中国勢がLTPSの事業化に躍起だが、このクラスで日韓メーカーの生産技術力に対抗できるかはまだ不透明だ。中国勢とて付加価値を上げていかないと投資を回収できない。

―― スマホ以外では。
 早瀬 車載市場が伸び盛りだ。a-Siに残された最後のフロンティアでもある。過熱しすぎの感もあるが、クルマは過剰生産がない。国産車は中級車だと1台に液晶2枚の搭載が当たり前になった。当社の予測で15年は年間1億枚の需要とみていたが、1.1億枚まで伸びそうだ。

―― 車載用は台湾勢など市場開拓に熱心です。
 早瀬 確かに品質面では台湾勢に限らず中国勢でも生産が可能だが、自動車メーカーそれぞれに独自の考え方がある。ナビ系のセンターインフォメーションディスプレーはある程度の標準化が進むだろうが、クラスターには細かなカスタマイズが必要とされている。実際のところ、Tier1各社と海外パネルメーカーでバッティングが起きており、これをTier1は快く思っていない。今後は自動車メーカー、Tier1、パネルメーカーで系列化が進む可能性もある。

―― ポストスマホも課題ですね。
 早瀬 スマホの先をどう見ていくかは、極めて重要だ。ウエアラブルやスマートウオッチがどこまで普及するかはまだ不透明。今後はセットメーカーとパネルメーカーが一緒に商品を開発し、新たな市場を開拓していく必要がある。そうした意味で、自社製品にパネルを搭載できるシャープから新たな提案が出てくることを期待している。

(聞き手・編集長 津村明宏)

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