アキノ大統領来日記念・フィリピン投資フォーラムが、6月4日東京都内のホテルで開催された。主催は日本貿易振興機構(JETRO)、日比経済委員会、国際機関日本アセアンセンター、駐日フィリピン共和国大使館、一般財団法人フィリピン協会。来日したベニグノ S.アキノ3世大統領が基調講演し、1000人を超える来場者に向けてフィリピンへの投資を広く呼びかけた。
セミナーでは、冒頭に日比経済委員会の代表世話人で日産自動車(株)代表取締役会長の志賀俊之氏が、開会の辞として「フィリピンでは自動車の現地生産、販売が期待され、産業育成、雇用拡大が期待される」と述べ、「フィリピンと日本は最も親しい隣国で、お互いが必要とする人材、物、サービスが補完関係にある」と語った。
マヌエル Mロペス駐日特命全権大使は、歓迎の辞として「日本とフィリピンは多国籍企業・大企業から中小零細企業の様々な企業が様々な分野で交流している。フィリピン政府は大胆な政策を進めており、一層の投資を求める」と述べ、日本からの投資を促した。
アキノ大統領の基調講演では、フィリピンがGPSプラスの適用を受けていることから、ASEANで唯一EU向けの輸出で免税措置が受けられることを紹介し、「ASEANやEUのゲートウェイとしてフィリピンを活用できる」と語った。また、官民連携で取り組むPPP(Public Private Partnership)を大型インフラ整備で積極的に導入しており、これによりインフラ整備のプロジェクトが進められていることも紹介した。PPPだけではなく、アキノ大統領就任以前はGDPの1.8%しかなかったインフラ整備予算の拡大も進めており、「16年度までにGDPの5%にしたい。GDP自体も伸びており、インフラ整備の予算は大幅に拡大している」とし、空港、港湾の整備計画や発電能力拡大の計画などについて紹介した。電力の増強では、環境に優しい国を推進する方針で、再生可能エネルギーをメーンとする計画。さらに、「最も投資できるのは国民、人間、人材」とし、子供たちを学校に送ることを条件とした現金の給付、教育期間の2年間の延長など、フィリピンの子供たちの学習の場の拡大に尽力してきた実績を紹介した。大統領は最後に「一緒に新たな成長を続けるために、ともに手を携えていきましょう」と締めくくった。
セッション2に入り、まずリリアB.デリマ経済区庁長官が「フィリピン経済特区における投資の機会」のテーマで講演した。フィリピン経済区庁(PEZA)は、フィリピン経済特区における機会、投資を増やし、雇用を生み成長することを目的としている。フィリピンには325の経済特区があり、産業および輸出加工区が68、ITパークが43、ITセンターが172、観光経済区が19、医療観光パークが2、アグロインダストリアルパークが21となっている。
国籍別の投資では日本が1位で、製品・分野別投資は電子機器/半導体が1位となっている。フィリピンは、14年7月に人口が1億人に到達。高い識字率や英語力など人材が豊富で、毎年100万人のフィリピン人が労働年齢に達し、そのうち半数が大学卒となっている。外国人投資家に配慮した政策をとっており、利益の送金、海外債務支払い、投資引き上げなど投資家の基本的権利を保障。リーズナブルな居住費、最高級のスポーツ・レジャー施設、ワールドクラスの医療施設などが整っており、住環境も万全である。
PEZAでは、法人税免除や資本設備、スペア部品、補給品、原材料の輸入関税ゼロ、総売上高の30%まで国内販売可能などのインセンティブを用意。建築・入居許可、輸出入許可、特別数年次入国ビザ(非移民用)取得などのワンストップサービスを提供しており、また1日24時間、毎週7日間の継続的サービスを提供している。賄賂や汚職などもなく、アキノ大統領のグッドガバナンス、透明性、汚職撲滅の政策を実現している。デリマ長官は「投資ではなくてもまずはお越しください。フィリピンでお待ちしています」と締めくくった。
続いて基地転換庁のアーネル パシアノ D.カサノヴァ長官・CEOが「クラーク・グリーンシティー・プロジェクト」について説明した。同プロジェクトはクラーク空軍基地跡地に9450万m²の都市を開発するもの。都市開発だが、農地も計画地内に設置し、都市で食料をまかなえる計画とする。120万人が居住し、80万人が雇用されることを想定。居住区、工業区、商業区のほか、大学や研究施設なども整備する計画で、日本の大学やリサーチセンターの進出も要望している。第1フェーズでは281万m²を開発する計画で、アクセス道路の建設や鉄道の敷設、スマートグリッド、ITシステムなどを整備する計画。電気、データセンター、水などのパートナーを探している。16年には起工式を実施する予定で進出企業を広く求めている。森林や温泉などもあり、日本でリタイアした人向けの施設などの進出も可能としている。
カサノヴァ長官は「フィリピンのおもてなしの言葉で『私の家はあなたの家』という言葉がある。『我々の都市は皆さんの都市である』」とコメントし、広く投資を呼びかけた。
最後にフィリピン観光推進局のドミンゴ ラモン C.エネリオ3世COOが、観光産業における投資機会を紹介した。