日本貿易振興機構(ジェトロ)および駐日インドネシア大使館主催による「インドネシア・ビジネスフォーラム」が、3月24日に東京都内のホテルで開催された。1000人を超える参加者の前で、ジョコ・ウィドド大統領自ら基調講演し、スライドの前でレーザーポインターを使ってプレゼンテーションを行うなど、トップセールスにより日本企業のインドネシアへの投資を幅広く呼びかけた。
セミナーでは、冒頭ジェトロの石毛博行会長と来賓として日本インドネシア協会会長の福田康夫元首相が挨拶し、福田会長は「大統領の強いリーダーシップに大いに期待したい」と語った。
次にインドネシア商工会議所のスルヨ・バンバン・スリスト会頭が講演し、「日本の自動車産業の技術移転は満足のいくものではない。技術移転を推進するようにお願いする」と語った。
続いて、ジョコ・ウィドド大統領が基調講演した。大統領はインドネシアの概況や2019年に年率8%の経済成長を目指すことなどを説明し、「今後インドネシアは原材料を輸出するのではなく、完成品を輸出したい。そのノウハウを日本企業は持っている」と語った。また、ジャワ島に集中せず、インドネシアを全面的に開発するとし「日本の投資家にチャンスを逃さないで欲しい」と語った。演台での説明は冒頭にとどまり、その後はスクリーンのスライド資料に向けてレーザーポインターを使用してプレゼンテーションを行った。
インドネシアでの、8カ所の経済特区開発、15カ所の工業開発区開発、8カ所の高速道路開発計画、9カ所の鉄道開発計画、24カ所の港湾開発計画と海上交通路整備計画、15カ所の空港開発計画、豊富な水産資源を活用した水産加工場の整備計画、3万5000MWの電力開発計画などを説明し、広く日本企業の投資を呼びかけた。大統領は「インドネシアは営業許可が下りるのに時間がかかったが、1月からワンストップソリューションを導入し許認可が早く下りるように改善しており、ぜひ利用して欲しい」と説明するとともに「投資家から私たちのサービスに苦情があれば改善していきたい」とし、「皆さんのさらなる投資をインドネシアでお待ちしたい」と締めくくった。
セッション2に移り、インドネシア商業省のバッフルール・ハイリ貿易協力局長がインドネシアの経済状況について、インドネシア投資調整庁のアズハル・ルビス副長官がインドネシアの投資環境について説明した。
続いて、進出事例としてダイハツ工業(株)代表取締役社長の三井正則氏が「インドネシアにおけるダイハツの取り組み~自動車生産台数No.1の支えは“人”から」のテーマで講演した。ダイハツ工業は、インドネシアでは合弁会社のアストラ・ダイハツ・モーター(ADM)が生産を担当しており、ダイハツブランドの自動車だけでなく、トヨタブランドの自動車も一部生産している。ADMで生産しているバン・トラックの「グランマックス」は日本にも輸出されている。
ADMは、約200社の仕入先があり、その9割が100km圏内に立地している。ダイハツは02年にADMを子会社化し、最重要国として投資、人材育成、現地化を進め、インドネシアではトヨタに次いで2位のシェアを有しており、生産台数はインドネシア最大となっている。
現地ニーズに合わせた専用商品であるダイハツ・アイラ/トヨタ・アギアを投入。現地調達化を推進している。12年にはカラワンに新工場を建設。モデル工場であるダイハツ九州の工場をインドネシアの環境にフィットするように進化させている。ダイハツのインドネシアでの投資額は5年ごとに3倍に拡大している。
三井社長は、インドネシアでのビジネス成功のキーポイントとして「現地に近づく」「現地のマネージメント力を活かす」「現地の人を中心に」の3点を挙げており、今後の投資拡大のために「物流を中心としたインフラ整備の加速、飛躍のスピードを減速しないようにお願いしたいと思う」と締めくくった。
最後に国土交通省 森重俊也海事局長がインドネシアにおける造船産業の発展性可能性について説明。インドネシアでは海洋国家構想に伴って船の需要が拡大し、300隻の調達計画が示されている。そのほとんどが官公庁船であるため、現地調達となるとし、「インドネシアで造船業、修繕業をしっかり伸ばしていければ経済成長を支えられるのではないか」とコメントした。