半導体メモリーの世界がとんでもないことになっている。とりわけ、DRAMの分野が爆裂成長し始めた。筆者が半導体記者としてデビューした1980年代は、日本企業がDRAMで圧勝し、半導体世界シェア52%を取ったことをよく覚えている。それ以来の30年ぶりともいうべき、メモリーブームにいささか戸惑っている。
周知のように、AIチップの周辺には膨大な数のメモリーが必要であり、とりわけ、HBM(高帯域メモリー)という新世代バージョンが猛烈な勢いで拡大している。加えて、エヌビディアが独自標準で設計したメモリーモジュールである「SOCAMM」にも注目が集まりはじめた。
それはともかく、DRAM各社はすごい勢いで設備投資を拡大している。サムスン電子は、低迷していた半導体部門の回復を鮮明にしつつある。HBM分野をはじめ、ファンドリーやシステムLSIなども揃って高成長を記録している。同社の半導体部門は2025年7~9月期に売上高33兆ウォン、営業利益7兆ウォンを計上し、メモリー事業は四半期として過去最高の売上高を達成した。
サムスンは、次世代AI向け低電力メモリーモジュールや12nmプロセスを適用した高速グラフィックスDRAMも市場に投入し始めた。さらに、後工程にも注力しており、パッケージ技術の向上や製造工程の最適化も進めている。
米マイクロンはニューヨーク州の新ファブ建設に着手した。これは米ニューヨーク州史上最大の民間投資とされており、投資額は20年間で1000億ドルという巨額となり、4棟のファブ建設が予定されている。この新工場は、米国最大の半導体工場になるというから驚きだ。
米エヌビディアのAIアクセラレーターで使用されているHBMの供給に関して、世界トップをいくSKハイニックスは、19兆ウォンを投じて、先端半導体メモリーのパッケージング施設を建設することを決めた。韓国南部の清州市で4月に着工し、2027年末までの完成を目指すという。
こうした動きのなかで、日本勢にあってもキオクシアが最先端のDRAMを開発し、話題を集め始めた。酸化物半導体を用いた新しいDRAM(OCTRAM)技術の開発を進めており、東芝のメモリー事業を源流とする同社はDRAMに再参入を果たそうとしているのだ。東北大学にあって国際集積エレクトロニクス研究開発センター長の任にある遠藤哲郎教授も、低消費電力という点でDRAMを凌駕するMRAMの開発を急ピッチで進めている。我が国日本においてもメモリー復活の機運は確実に高まってきた。
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泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 取締役 会長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』(以上、東洋経済新報社)、『伝説 ソニーの半導体』、『日本半導体産業 激動の21年史 2000年~2021年』、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。