商業施設新聞
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第456回

(株)Bonchi 代表取締役社長 樋泉侑弥氏


大丸東京にカフェ1号店
客層の合う都心で店舗拡大へ

2024/11/12

(株)Bonchi 代表取締役社長 樋泉侑弥氏
 2019年に創業した(株)Bonchi(山梨県南アルプス市)は、果物の卸売を主な事業とするスタートアップ企業だ。9月には「大丸東京店」(東京都千代田区)の9階にカフェ1号店「Bonchi Cafe」を出店。創業時からの目標であったという『実店舗の出店』を実現した。今後も東京都心での店舗展開を広げたい考えだ。代表取締役社長の樋泉侑弥氏に聞いた。

―― 会社創業の経緯から伺います。
 樋泉 私は山梨県南アルプス市の出身で、桃畑やさくらんぼ畑に囲まれて育った。親戚が果物農園を営んでいたこともあり、果物は常に身近なものだった。高校卒業後に留学で行ったオーストラリアで、改めて日本の果物の上質さに気づかされたが、帰国後に上京して都内のスーパーに並んでいる果物の小ささに衝撃を受けた。「大きくて味の詰まった美味しい果物をもっと日本中に届けたい」という想いから創業に至った。

―― 事業について。
 樋泉 事業の約65%が菓子店や飲食店などへの卸売販売だ。洋菓子店の「銀座コージーコーナー」、大手レストランチェーンの「HUGE」、フルーツ大福の「弁才天」などに果物を卸している。また、「TRUNK(HOTEL)」を運営する(株)テイクアンドギヴ・ニーズとも取引がある。そのほか、果物のECでの販売やふるさと納税の返礼品提供なども行っている。

―― 取り扱う果物へのこだわりは。
 樋泉 我々が直接契約している生産者は、除草剤や農薬をできる限り使わないなど、こだわりを持って果物を生産している。そのような鍛錬された職人技から生み出された果物を、自信を持ってお届けしている。収穫した果物は直接物流網に乗り、36時間以内には店舗や消費者に届く。新鮮で安心・安全なものを提供している。

―― 9月には大丸東京店にカフェの1号店をオープンしました。
 樋泉 創業時から、オンラインだけでなく店舗を通じて直接お客様と触れ合える機会を持ちたいと思っていた。これまで年間15~30回は都内で直売イベントを行ってきたが、2024年に入ってから出店を具体的に検討するようになった。その中でご縁があった大丸東京店に、25年3月までの期間限定で出店させていただけることとなった。当社のECを利用いただいている顧客のボリュームゾーンは40~50代だ。こうした客層は大丸との親和性が非常に高いと思っている。
 「我々の果物をいかにしてより多くの人の口に入れるか」を目標としている。そのため、試しやすく、その場で食べられるカフェ業態を選んだ。こだわりや美味しさを分かっていただけたら、ECなどを通じた果物そのものの販売につなげたい。

―― 今後の店舗展開は。
大丸東京店に期間限定で出店している「Bonchi Cafe」
大丸東京店に期間限定で出店している「Bonchi Cafe」
 樋泉 他の商業施設や百貨店などからのお声があれば、カフェやパーラーといった業態での出店を前向きに検討したい。自社で路面店を構えたり、取引先である飲食店と共同で展開したりすることも考えている。
 大丸と同様、客層が合う立地での展開が好ましいと思う。エリアとしては都内の中心部を想定しており、銀座、青山、自由が丘などがマッチするのではないか。新幹線が通る東京駅周辺はインバウンドのほか、地方からの往来も多い。こうした場所は魅力的だ。

―― 就農支援にも取り組んでおられます。
 樋泉 現在、農業従事者の平均年齢は68歳で、20代は全体の1%しかいないという。また、60%以上の農家が後継者不在だとも言われている。こうした状況を何とか変えようと、Bonchiとは別に農業法人「Earth Works」を立ち上げ、同社を通じて就農支援を行っている。
 Earth Worksでは農業を始めたい40歳以下の人材を雇用して技術やノウハウを伝授する。農家として独立できるようになった時点で退職してもらうが、代わりにBonchiの契約農家になってもらう。Bonchiは拡散力のある生産者を取り込め、門下生たちも比較的安定した環境で農業を行え、ウィンウィンだ。これこそが「農家になりたい人がなれる」仕組みだと自負している。

―― 中長期的な事業目標を教えてください。
 樋泉 今後5年以内をめどに、山梨県内で観光農園「Bonchi Park」を開業する。「泊まれる果樹園」をコンセプトに、果樹園とドッグラン、温泉、アスレチックなどの機能を一体的に設け、田舎の良さをすべて体現できるような施設としたい。すでに場所の選定などを始めている。
 我々の長期的な目的は「農業界を再定義する」。危機的な状況にある農業界において、我々は新しい農業の仕組みを率先して作っていく。まずは店舗などを通じて、日本の果物の素晴らしさを日本の人たちに実感してもらいたい。それから海外でも勝負する。


(聞き手・安田遥香記者)
商業施設新聞2570号(2024年11月5日)(8面)
 ズームアップ!注目企業インタビュー

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