韓国では、大型ショッピングモールや商業ビル、オフィスビルなどで電気代の上昇が問題になっている。物価指数の上昇に伴う料金調整は避けられないにしても、政府による電力政策の失敗も影響していることが課題と言われている。
国家経済戦略会議を主宰する尹大統領
(24年5月23日、写真:韓国大統領室)
韓国に工場を建設する外資系メーカーは、電気代の相対的な安さを立地メリットとして挙げる。韓国はかねて産業・商業向けの電気料金を経済発展のため安く設定している。ところが、文在寅(ムン・ジェイン)前政権(2017~22年)では原発ゼロという政策を打ち出し、韓国原子力発電産業インフラを大々的に閉鎖・縮小した経緯がある。幸いにも22年5月に就任した尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は、前政権の原発ゼロ政策を全面的に見直している。
韓国の電力事情として、再生可能エネルギーの発電割合を高めたため季節的な要因による電力供給が不安定であり、むしろ化石燃料への依存度が高まることから、持続的な原発運営が欠かせないのが実情だ。韓国大統領直属の「2050カーボンニュートラル緑色成長委員会」の資料によると、22年に韓国の温室ガス排出量は前年比2210万t減の6億5400万tとなり、10年以降で最も少ない規模となった。23年には、発電分野における転換や産業、建物、輸送など主要4大部門の排出量は前年比1727万t程度減少したと推定され、全体排出量の最低値を更新したようだ。温室ガス排出量の収斂には原発の寄与が大きい。原発による発電量は、18年に133.5TWh(テラワット時)から23年は180.5TWhと35%以上増加し、火力発電の使用量を減らしている。日本や台湾とは異なり、地震の懸念が少ない韓国の原発拡大の機運は今後、さらに高まる見通しだ。
韓国は、原発の拡大と再生可能エネルギーの増強などを通して、カーボンニュートラル時代の到来をさらに早めようとしている。また、省エネ向けの先端半導体の開発をはじめ、EV向けのリチウムイオン2次電池やコア材料の正極材業界No.1などで産業的カーボンニュートラルに貢献している。
地球温暖化によりシベリアの永久凍土が溶けて大量のメタンガスが噴出したり、北極の氷河が溶けすぎて北極熊の餌が足りなくなったりするなど、問題は枚挙に暇がない。何が最適なのか地球温暖化を改めて考えてみる昨今である。