商業施設新聞
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No.976

地域性溢れるキャノピーbyヒルトン


高橋直也

2024/10/8

 9月6日に「キャノピーbyヒルトン大阪梅田」が開業した。ヒルトンの地域密着型ライフスタイルブランドで、日本1号店にあたる。以前中国のキャノピーbyヒルトンを写真で見たことがあったのだが、地域性、デザイン性が高く、日本にもぜひ出店を、と思っていたブランドだ。

キャノピーbyヒルトン大阪梅田にあった大阪らしさ全開のスマートボール
キャノピーbyヒルトン大阪梅田にあった大阪らしさ全開のスマートボール
 ホテル、小売店など業態にかかわらず、『日本1号店』は首都圏にオープンすることが多い。ところがキャノピーbyヒルトン大阪梅田は日本1号店を大阪に出店しており、大阪の観光地としての活況ぶりがうかがえる。ヒルトンとしては、たまたま適した案件が東京でなく大阪にあっただけかもしれないが、ヒルトンは現在、大阪に「ヒルトン」「コンラッド」「ダブルツリーbyヒルトン」も展開しており、グラングリーン大阪にはヒルトンの最上級ブランド「ウォルドーフ・アストリア」も開業する予定だ。大阪に力を入れていることは間違いないだろう。

 日本1号店を関西圏にオープンしたライフスタイル型ホテルとしては「エースホテル」が挙げられる。出店を発表する記者会見で「なぜ東京でなく京都を選んだのか」という旨を質問した際、「様々な著名な人が愛する歴史ある街だから」といった回答が返ってきて、しっくりこなかった記憶がある。エースホテル出店発表後、業界関係者の話として、「京都は見るべき場所が多いためホテルに滞在したい。ラウンジなどで過ごすことに強みを持つエースホテルは適さないのでは」といったネガティブな声もあった。

 今年、ようやく京都のエースホテルに泊まってきたのだが、なぜ京都なのか合点がいった。東京に住んでいると京都には「職人」「伝統」のイメージがある。エースホテル京都の内装、雰囲気は素晴らしく、クリエイティブな場所としての京都がホテル内で表現されていた。客室内にはレコードプレイヤーがあるなど、伝統の町・京都で文化を感じる楽しみもあった。

 そして、キャノピーbyヒルトンもデザイン性が高く、個性的だった。ベッドのキャノピー(天蓋)は豊臣秀吉の馬印「千成瓢箪(せんなりびょうたん)」をモチーフにしているほか、バー&ラウンジではスマートボールをのぞき込むと道頓堀の「グリコサイン」をモチーフにしたデザインが施されているなど、大阪らしさで溢れている。インバウンドには気づきにくいものがあるかもしれないが、大阪にいることをほかのホテル以上に感じられる。その日、訪れた場所の思い出を思い起こすにはピッタリだ。

 キャノピーbyヒルトンの内覧会に参加した際、グラングリーン大阪内の「蛸之徹」というたこ焼きを自ら焼く業態に行った。少し焦げてしまい、不格好なたこ焼きになってしまったが、なぜだか美味しく感じたのは大阪にいたこともあるだろう。東京で食べるたこ焼きもおいしいが、なぜか大阪で食べる方がよりおいしく感じるのである。地域性は満足度向上において大きな武器となる。キャノピーbyヒルトンのような地域性が豊かなホテルはまだまだ増えそうだ。
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