商業施設新聞
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No.493

ロッテホールディングス副会長が電撃解任


嚴 在漢

2015/2/10

 2015年の新年早々、ロッテグループに激震が走った。ロッテグループ総師 辛格浩(日本名=重光武雄、93歳)会長の長男である辛東主(同 重光宏之、61歳)ロッテホールディングス副会長が電撃解任されたためだ。

 これによって、ロッテグループ後継者候補の勢力図にも大きな変化が予測される。一部では重光宏之元副会長は、事実上グループの後継者候補から外され、韓国におけるロッテ系列会社の経営を担っている次男の辛東彬(同 重光昭夫、60歳)ロッテグループ会長にパワーが集中し、日本における系列会社まで管轄するという見方が浮上している。

ロッテグループの次期総師と目される辛東彬会長
ロッテグループの次期総師と
目される辛東彬会長
 1月13日夜、重光昭夫会長は日本訪問の日程を終えて、ソウル・金浦空港での記者の質問に「兄の解任などは、父親が直接決定する範囲なので、自分にはよく分からないことだ」と答えている。

 ロッテホールディングスは、日韓ロッテグループ両方を管轄する会社で、日本に37の子会社を擁する。また、韓国で運営するホテルロッテの持ち分株19%を保有し、さらにホテルロッテは韓国ロッテ主力会社のロッテショッピングの株式8.8%を持つなど、ロッテグループの循環投資構造の主軸となる会社である。

 今回の重光宏之元副会長の解任劇は、韓国財界にも大きなショックとして受け止められている。なにより、辞任ではない解任形式を取ったのは、後継者候補からは完全に遠ざかったことを意味する。重光宏之元副会長が解任された理由は、最近、韓国ロッテ製菓の持ち分を買い入れることによって、弟の昭夫会長と持ち分争いを繰り広げたからだ、という分析が韓国経済界では支配的だ。

 他方、実績不振による問責人事という見方もある。韓国ロッテの13年総売上高は83兆ウォン(約9兆1209億円)を達成した反面、日本ロッテは5兆7000億ウォン(約6264億円)程度で、両社間の隔たりは大きい。

韓国ロッテの本社ビルが位置するソウル中区
韓国ロッテの本社ビルが位置するソウル中区
 また、複雑に絡んでいるロッテグループの支配構造を明確にするための解任だ、という指摘もある。つまりは、重光宏之元副会長を経営現場からしばらく退かせて、重光昭夫会長の支配構造改編作業のための時間稼ぎをする、という分析も説得力がある。

 それは日韓ロッテが抱えている複雑な支配構造の特性上、重光宏之元副会長が独自で系列会社の分離作業を開始する場合、重光昭夫会長の韓国ロッテの支配構造に対する改編作業は案外、思うように進まないのではないかという懸念があるためであろう。

 サムスンや現代グループなどの韓国大手財閥グループは、経営権を後継者に譲る際に、常に兄弟同士の見苦しい経営権争奪戦が繰り返されてきた。サムスングループ2代目の李健煕氏も、長男ではなく三男だったため会長職に就く時(1987年)に紆余曲折があった。
 現代グループの場合は、2000年に起きたいわゆる「王子の乱」で、兄弟同士の熾烈な経営権争奪戦により、グループ存廃の危機に曝されたことがある。

 ロッテグループでは重光宏之元副会長が多くの持ち分を持っているだけに、十分な影響力を依然として発揮できる。万が一、重光昭夫会長が直接的に兄の解任に関与したことが明らかになった場合、兄弟同士の経営権紛争へと飛び火する可能性が潜んでいる。
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