商業施設新聞
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第445回

WHILL(株) 日本事業部 上席執行役員 事業部長 池田朋宏氏


近距離モビリティを展開
施設へ再来訪する動機にも

2024/8/27

WHILL(株) 日本事業部 上席執行役員 事業部長 池田朋宏氏
 WHILL(株)(東京都品川区)は、高いデザイン性と操作性を有した近距離モビリティ「WHILL(ウィル)」を展開している。ウィルは、スクータータイプや軽量タイプなど、様々な用途やシーンに対応できるモデルを取り揃える。近年は販売だけでなく、法人レンタルなどを通じたモビリティサービスも提供しており、商業施設や観光地、テーマパークなどにも設置を進めている。同社の日本事業部 上席執行役員 事業部長の池田朋宏氏に話を聞いた。

―― ウィルの概要から。
走破性の高いModel C2など3タイプを展開(写真はModel C2)
 池田 ウィルは歩道を走行できる近距離移動用のモビリティだ。免許不要で利用できるため、高齢者だけでなく歩行に不安を抱える人が全般的に利用できる。スクータータイプのModel S、折りたためる軽量タイプのModel F、走破性の高いModel C2の3タイプを展開している。
 例えば高齢者で歩行に不安がある人だと、出歩きたい気持ちがあっても「100m先のコンビニに行くのも辛い」と感じることも多いという。その場合に車椅子も移動手段の一つに挙げられるが、ウィルは電動で動くため介助者も必要なく、手元の操作のみで自由に行きたい場所に行けるのが特徴だ。現在は販売事業だけでなく、法人レンタルなどを通じたモビリティサービスも提供しており、ウィルの認知度も徐々に向上していると感じている。

―― どのようなプランがあるのでしょう。
 池田 「自動運転モデル」と「スタンダードモデル」の2種類のプランを提供している。自動運転モデルは、広い施設内で特定の地点と地点を自動で運転するもの。20年から羽田空港に導入いただき、そのほか病院などでも設置が進んでいる。車椅子では後ろから押す人が必要となることが多いが、ウィルの自動運転は人の手を使わず目的地へと移動できる。省人化にも貢献できるため、今後さらなる需要増加が見込めるだろう。
 スタンダードモデルは利用者が自由に運転できるタイプで、保険・メンテナンス・機体管理システムをセットで提供している。現在、「北海道ボールパークFビレッジ」や「ふかや花園プレミアム・アウトレット」のような広大な面積の施設、「ハウステンボス」といったテーマパークなどでも導入が進んでいる。

―― モビリティサービスを導入するメリットは。
 池田 以前導入施設を対象に調査したところ、「ウィルがあるからまた訪れたい」と答えた人が9割以上だった。ウィルを導入することで、結果として施設自体の満足度向上にもつながると考えており、再来の動機にもなるだろう。
 また、広大な施設やエリアにウィルを導入することで、利用者の行動範囲が広がり、滞在時間が増加するなどの効果も表れている。さらに、ウィルが導入していることをきっかけにシニア層が来訪し、その家族も一緒に訪れることも多い。そのため、客層や購買機会の拡大にも貢献できると考えている。

―― どのような施設が導入に適していますか。
 池田 アウトレットなどを筆頭とした、面積が広く低層の施設は導入に適している。また、歩く必要のある観光地なども設置に向いているだろう。一方、縦動線をメーンとしている施設では、バリアフリーの問題などもあることからまだ課題が多いかもしれない。

―― モビリティサービスの料金などは。
 池田 モビリティサービスは各法人に月額でウィルを貸し出すもので、その後施設や観光地でどのような値段でレンタルするかなどは各法人で自由に決められる。そのため、中には無料で貸し出しているところもある。
 レンタルは基本的には有人で行い、施設内など限定したエリアでのみ利用することを想定している。また、新たにスマートフォンのアプリを開発し、無人でレンタルできる仕組みを8月に実装した。アプリでのレンタルも、有人でのレンタルと同じく利用者が借りたところに戻す必要があることから、乗り捨てのできるレンタルサイクルなどとは少し違ったものとなる。しかし、アプリではウィルがどの施設に設置しているかなどを一目でわかるようにするため、「ウィルがあるからこの施設に行こう」といった、ウィルが施設への来館動機になるのではないかと期待している。

―― 今後の抱負などをお聞かせください。
 池田 日本の65歳以上の人口はおよそ3600万人で、そのうち500m以上を休憩なしで歩けない人たちは約1200万人もいると言われている。日本の人口自体は減少していくが、一方で高齢者の人口は40年ごろまでは増加する見込みのため、当社が主戦場としている近距離に特化したモビリティという市場はさらに成長していくと見ている。
 しかし、市場に成長余地がある一方、近距離移動ニーズへの対応というのは実はまだ広まっていない。当社はウィルを通じて、「自分の意思で行きたいところに行きたい」という思いを持つ人たちの移動体験の向上に貢献していきたい。



(聞き手・新井谷千恵子記者)
商業施設新聞2559号(2024年8月20日)(6面)

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