商業施設新聞
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第435回

(株)JR熊本シティ 代表取締役社長 永田史朗氏


アミュプラザは売上高277億円に
開業3周年、周辺人口も増加

2024/6/18

(株)JR熊本シティ 代表取締役社長 永田史朗氏
 この春、熊本駅の「アミュプラザくまもと」が開業3周年を迎えた。コロナ禍に開業し、最初は苦戦したものの、2023年度の全館売上高は277億円を記録し、開発時に想定した数字になってきたという。高架下の飲食・物販ゾーンなどを含む「JRくまもとシティ」全体としても賑わっており、(株)JR熊本シティ代表取締役社長の永田史朗氏に施設の動向などを聞いた。

―― 施設の概要や、直近の概況を。
 永田 アミュプラザくまもとを導入した「JR熊本駅ビル」、改札の目の前にある「肥後よかモン市場」などで構成するJRくまもとシティを運営している。4月でアミュプラザくまもとなどが開業して3年を迎えた。
 開業した時はコロナの影響もあり、アミュプラザくまもとの初年度売上高は193億円と当初の想定より低い数値だったが、23年度は277億円、来館者は1707万人まで伸ばすことができ、開発時に想定していた数値になってきた。

―― 駅ビルは有力ファッション店が顔になっていますね。
 永田 1階のエントランス近くに「ビームス」「アーバンリサーチストア」など、ターミナル駅の駅ビルらしくハレの日に対応するブランドを設けているが、オールターゲットの施設としている。というのも、熊本市は中心部や郊外に大型商業施設があるが、熊本駅がある西部・南部には大型商業施設がなかった。西部と南部にお住まいの方が中心部に行くにしても熊本市の中心部は渋滞が多く、郊外の施設も近くはない。つまり西部と南部の方は買い物が少々不便だった。そこで、熊本駅にはハレの需要だけでなく日常的な需要も取り込めるような施設が求められていると考えた。このため1階には高感度なファッション店もあるのだが、その奥には惣菜など食物販店やスーパーの「ハローデイ」なども構えている。

―― 確かに周辺はマンションが多く、足元需要がありそうです。
 永田 開業当時はここまで多くの住宅はなかった。駅ビルが開業して大きく変わった点の一つで、上熊本駅~西熊本駅は特にマンションが増え、駅周辺の人口は増えた。足元需要にも対応した施設を開発したことで、エリアの利便性が上がったと評価されているようだ。

―― アミュプラザ全体ではかなり幅広い店舗構成です。
 永田 約180店あり、ファッション、ファッション雑貨のほか、アウトドア、シネマコンプレックス、アミューズメント、フードコート、レストランフロアなどがある。特徴的なのは4階で、「ウィゴー」「スピンズ」など若い女性をターゲットにした店舗が集まっている。館全体の客層をみると、40~50代の女性が大きなボリュームになっているのだが、20代前後の女性はそれに次ぐくらい来ていただいている。昔の熊本駅は若い方が少なかったので、こうした方を取り込めたことがエリアの活性化にもつながっていると思う。

―― JRくまもとシティ全体としてはさらに業種は広がります。
 永田 ビックカメラが出店するビルもあるほか、飲食店やお土産店が集積した肥後よかモン市場もあり、JR熊本駅ビルにはホテルや婚礼施設も設けている。ターミナル駅周辺に発生しそうな需要はかなり取り込めているのではないか。
 このうち、肥後よかモン市場はJRくまもとシティ全体の中でも23年度は特に好調で、他よりも伸び率が高かった。ファッションについては、消費行動が変化する中、SNSによるタイムリーな情報発信やセール時期の見直し、鮮度感の高いVMDや接客研修により、健闘が光る1年となった。
 このほか、JRくまもとシティには駅前広場も整備されており、ここでは毎週のようにイベントを行っている。年2回行う日本酒のイベントが特に好評だ。熊本県産の畳を100帖敷き詰めた場所でお酒を楽しむもので、多くの方に来ていただいている。

―― 熊本の買い物は市街地が中心でした。駅に人を誘引できた要因は。
 永田 幅広い需要に対応したMDに加え、約2100台の駐車場を用意したことも大きい。駅から1km圏内という観点では、熊本駅は大分駅や鹿児島駅などより人口が少ない。これが10kmまで広げると熊本の方が多くなる。駅ビルが開業して差は埋まってきたが、それでも熊本はドーナツ化が起き、郊外に人口が多い街。郊外からの集客も考えるとやはり駐車場の充実が必要だった。

―― 今後の方針は。
 永田 アミュプラザくまもとの店舗面積は約4万9000m²だが、これは中心部の百貨店などと比べると小さい。地方の人口が減っていく中、規模だけではなくテナントミックスなど知恵をしぼって運営していく必要がある。また、かなり先の話にはなるが、JR九州などが在来線を経由して熊本国際空港まで乗り入れる空港アクセス鉄道の整備を構想している。実現すれば熊本駅と空港アクセス鉄道が直結するとみられ、熊本駅がさらに賑わう。将来的にはこうした需要も取り込んでいきたい。


(聞き手・編集長 高橋直也)
商業施設新聞2548号(2024年6月4日)(1面)
 デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.435

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