商業施設新聞
新聞情報紙のご案内・ご購読 書籍のご案内・ご購入 セミナー/イベントのご案内 広告のご案内
第454回

JR西日本アーバン開発(株) 代表取締役社長 藤岡秀樹氏


郊外型施設の開発に注力
25年は大阪でも新施設を計画

2024/10/29

JR西日本アーバン開発(株) 代表取締役社長 藤岡秀樹氏
 JR西日本アーバン開発(株)は、神戸市内の主要駅や明石駅、姫路駅など兵庫県を中心に商業施設を開発・運営している。ここ数年は、「グリーンプレイス」という名称で駅から離れた郊外型施設の開発も推進しており、2025年には兵庫県外にも新施設をオープンする。今後の展開も含め、同社代表取締役社長の藤岡秀樹氏に話を聞いた。

―― コロナ禍の規制が緩和された、23年5月以降の各施設の状況は。
 藤岡 当社の施設は地域住民の日々の生活に密着したライフサポート型の施設を運営しているので、コロナ禍の影響による売り上げの大きな落ち込みはなかった。ただ、インターネット通販が普及するなど生活様式が変化したためか、規制緩和後は客単価が22年度比で平均1~2%上昇しているものの、入館者数はそれほど増えていない。

―― 姫路駅の施設は訪日客で好調のようです。
 藤岡 「ピオレ姫路」は、姫路城を訪れるインバウンドを含めた観光客増などの影響で、土産や飲食の売り上げが回復してきている。ただ、ピオレ姫路は、20代前半の若者向けのMDが中心となっており、その上の年代の受け皿が弱いことが課題となっている。そこで、9月には約10店をリニューアルし、20代後半から30代までのお客様に来館してもらえるようなMDをスタートさせた。

―― 明石駅の高架下においては、3月に「明石タイガー」の供用を開始しましたが、狙いは。
 藤岡 明石タイガーは、地域のコミュニティーの場所が提供できればと思い、高架下の遊休地を活用して設置した。敷地内にコンテナを配置し、飲食4店を展開している。また、地元と連携を図り、イベントを開催するなどにぎわいを醸成している。隣接する商業施設「ピオレ明石」との関連性について、現時点で入館者数の増加など相乗効果は少ないので、様々な取り組みを図っていきたい。今後は、明石タイガーの運営経験を生かし、新規の施設開発を行う際も、地域の交流を生み出すスペースの整備を検討していく。

―― 住吉駅にある「LiV」では、25年春に向け大規模改装が計画されています。内容は。
 藤岡 LiVの商圏は2km圏内で食品が強く、施設全体の売り上げの70%を占める。そこで、今回の大規模改装では銀行などがあったエリアに食品6~7店を導入する。また、周辺に店舗が少ないので飲食店を新たに導入する。飲食のジャンルは、広域商圏までの集客が見込める個性的な業態というよりは、買い物や通勤・通学帰りに気軽に立ち寄れるような業態を展開していく予定だ。

―― ここ数年は、郊外型施設の開発に注力されています。
 藤岡 もともとは、JR西日本グループの資産活用の一環として、社宅跡地を再開発し、「夙川グリーンプレイス」や「甲子園グリーンプレイス」をオープンした。駅や都心型施設だと人が集まりやすく優位性があるのだが、そればかりだと限界がある。日常生活に根ざしたライフサポート型の施設を開発することで、地域住民の生活を豊かにし、街の価値を上げる。そのことが今後の成長につながるし、JR西日本グループの当社が商業施設を開発していく意義だと思っている。

―― 今後の展開は。
大阪府高槻市に開業する「高槻グリーンプレイス」の完成イメージ
大阪府高槻市に開業する「高槻グリーンプレイス」の完成イメージ
 藤岡 これまではJR西日本グループの資産を活用して郊外型施設を開発してきたが、今後は行政が持っている土地の再開発などにも取り組んでいく。25年には吹田市が公募した「北千里小学校跡地等北東側利活用事業」に選定され、学校跡地の開発にチャレンジする。また、開発エリアもこれまで兵庫県内だけであったが、25年には大阪府高槻市で「高槻グリーンプレイス」を開設し、県外へ飛び出す。商業施設自体は中長期的な計画として、2年に1施設のペースで展開する方針だ。
 今後、注力したいのは地域活性化だ。企業として商業施設開発にあたり、社会的な価値を上げなければならない。ECサイトの台頭やコロナ禍による生活様式の変化で、従来のような物販店や食品店を入れ替えて対応するだけでは、施設を持続していくのは難しいかと思う。新規開発に関しては、地産地消を意識した店舗の導入や地域と連携した空間づくりにも取り組んでいきたい。


(聞き手・北田啓貴記者)
商業施設新聞2568号(2024年10月22日)(1面)
 デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.450

サイト内検索