商業施設新聞
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第453回

(株)京王SCクリエイション 代表取締役社長 古屋圭子氏


商業運営3社を統合し新体制
新宿駅西南口地区開発計画にも参画

2024/10/22

(株)京王SCクリエイション 代表取締役社長 古屋圭子氏
 京王電鉄(株)は、商業施設運営を担う子会社・(株)京王SCクリエイション(東京都多摩市)を設立し、7月1日より業務を開始した。これまで京王電鉄のSC営業部と京王地下駐車場(株)、京王不動産(株)の3社が担っていた商業施設運営事業を1社に統合したものだ。統合によって事業を効率化し、京王電鉄とJR東日本が共同で進める「新宿駅西南口地区開発計画」に向けても力を蓄える。同社の代表取締役社長に就いた古屋圭子氏に聞いた。

―― 新会社設立の経緯から。
 古屋 京王グループの商業施設は常にトラフィックのある駅立地がほとんどだが、ECが台頭したことで店舗に足を運ばなくても買い物を済ませられるようになった。加えて、鉄道利用はコロナ禍以前の水準には戻らないと思われる。こうした社会情勢を踏まえ、今後はいかにしてお客様に喜んでいただき、集客できる施設を作っていくかを考えなければならない。これらをより突き詰めて考えるためには人材やシステムを統合することで効率化を図り、リーシング力をはじめ事業地盤を強化する必要があると判断した。

―― 商業施設の運営における課題はありますか。
 古屋 専門人財の育成についてだ。京王電鉄では担う事業フィールドが広く、幅広い異動が発生することから商業施設の運営に特化した人財を育成することが難しいという側面があった。事業環境が激化している中で魅力ある施設を作っていくためには、専門人財の育成が欠かせない。今回商業施設運営の専業会社を設立したことから京王SCクリエイションでの採用も積極的に実施し、人財育成を行うことで商業施設運営における競争力を担保したい。

―― 新宿駅西南口の再開発にはどのように関わっていきますか。
 古屋 再開発を主導している京王電鉄新宿再開発推進室の検討会に、当社のメンバーも参加している。

―― 新宿西口の「京王百貨店」については。
 古屋 京王電鉄とJR東日本が共同で進める新宿駅西南口地区開発計画の「北街区」に該当し、2030年ごろをめどに建て替え工事に着手する。新宿駅は巨大ターミナル駅で商業地としてのポテンシャルは高い。建て替え工事中も含め、今後も西口に商業施設は必要と考える。工事中の対応については、お客様の声を聞きながら今後検討する。また、同じく30年ごろに当社と(株)京王百貨店の法人格を統合する。現在、統合に際してどういった課題があるかなどを議論している。

―― 新宿以外での再開発についてはいかがでしょうか。
 古屋 京王多摩川駅周辺では24年度より基盤整備工事に着手している。また、リニア中央新幹線の新駅が設置される橋本でも、再開発に向けた議論が進んでいる。加えて、京王線の笹塚駅~仙川駅間では線路の高架化が予定されており、今後高架下の再開発を具体的に考え始めることになるだろう。
 新宿を含め、いずれも当社が商業施設を運営するかどうかは決まっていない。ただ、我々はこうした施設の運営を任せてもらえるよう、お客様にとって楽しく、魅力ある施設づくりを行える力を付けなければいけない。

―― 既存施設については。
 古屋 京王沿線には「京王リトナード」のようにデイリーで使っていただく施設だけでなく、「聖蹟桜ヶ丘SC」「キラリナ京王吉祥寺」「トリエ京王調布」など、より商圏が広く大きな買い物もできる施設もある。平日・休日問わず沿線の商業施設を選んでいただけるようになり、魅力ある・住んでもらえる沿線へと成長させたい。そのためには買い物ができることだけでなく、イベントなどを通じて楽しい経験・新しい発見を提供していく必要がある。

―― 沿線や地元に対する思いをお聞かせください。
ミカン下北では「東京都実験区下北沢」を実施している
ミカン下北では「東京都実験区下北沢」を実施している
 古屋 地域に根差し、地域に求められ愛される商業施設を作っていきたい。そのために、施設を拠点としたコミュニティの形成に力を入れている。例えばトリエ京王調布では、調布の街を自転車で巡るための案内地図「調布サイクルマップ」を作成・配布している。駅から離れたお店なども紹介することで、街全体の活性化を図っている。また、ミカン下北では、様々なことに実験的に取り組む「東京都実験区下北沢」を実施している。ミカン下北に入居されている方のみならず、下北沢にお住まいの方にも参加いただいている。


(聞き手・新井谷千恵子記者/安田遥香記者)
商業施設新聞2567号(2024年10月15日)(1面)
デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.449

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