商業施設新聞
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第452回

(株)ぐるなび イノベーション事業部 店舗開発部 部長 池田克氏


フードホール事業
富山、広島、東京など積極出店
小規模ながら光る飲食店誘致

2024/10/15

(株)ぐるなび イノベーション事業部 店舗開発部 部長 池田克氏
 (株)ぐるなび(東京都千代田区)は今夏、「GURUNAVI FOODHALL WYE」を富山県と広島県に開業し、11月には新たに東京・勝どきへ出店する計画だ。積極出店する同事業はただのフードホールではなく、小規模ながら魅力的な食を提供する企業を誘致したり、協業したりすることで、商業施設としても差別化につなげることができる。フードホール事業について、同社イノベーション事業部 店舗開発部 部長の池田克氏に聞いた。

―― 事業の紹介からお願いします。
 池田 商業施設や複合施設の飲食エリアで、ぐるなびがコンセプト設計から店舗構築、フロア運営まで総合的にプロデュースする事業であり、施設の要望に合わせて様々な出店形式でサービスを提供している。「地域の食の発信、新たな『おいしい』に出会える場所」を共通コンセプトとして、全国展開を進めている。

―― これまでの事業展開は。
 池田 2020年4月に店舗開発組織を作り、2年間の準備期間を経て、22年4月の天文館(鹿児島市)を皮切りに、栄(名古屋市中区)、天空橋(東京都大田区)、新宿(東京都新宿区)、八戸(青森県八戸市)、日立(茨城県日立市)の商業施設で飲食エリアをプロデュースしてきた。24年7月には富山駅近くの複合ビル、8月には広島市で新しく完成した中央公園広場とサッカースタジアム一体型の商業施設「HiroPa」に出店した。11月には9店目を、東京・勝どきのタワーマンション1階に初の都心型として開発する。ぐるなびならではの食とITの知見やノウハウを生かし、「食」による継続的な賑わいの場を創出する。

―― 飲食店支援のぐるなびがフードホール事業を始めたきっかけは。
 池田 「楽天ぐるなび」の加盟飲食店は、小規模な飲食店が多く、与信の観点で大手の商業施設に入居できないことがある。一方、商業施設側は飲食テナントの与信力や知名度を重視することで、大手のチェーン店を中心としたテナント誘致になってしまう。そこで当社が小規模の飲食店を、出店に係る投資を大幅に軽減するという形で支援させていただき、ともに成長する機会として提案してきた。施設側にとっても特徴のある飲食店を誘致でき、これによって施設間の同質化を避け、特徴のあるフードエリアを築くことができる。

―― 7月下旬に開業した富山店の状況は。
「GURUNAVI FOODHALL WYE 富山」の風景
「GURUNAVI FOODHALL WYE 富山」の風景
 池田 地元の名店から富山初出店の人気店まで計6店に出店いただいた。席数は約320席で、ランチを中心に集客は好調である。8月は帰省客も加わり、家族、友人同士など地元の方に多く来店していただいた。今後はディナー需要をさらに獲得し、夜の賑わいづくりを強化したい。周辺の企業へも利用を促していく。11月には100人規模の団体予約の話もいただいている。近隣にはオフィスビルや芸術文化ホール、富岩運河環水公園などがあり、当社も食を通じた賑わいづくりを通じて、駅北エリアの発展に貢献していきたい。

―― 8月1日には広島県で開業しました。
 池田 スタジアムと芝生広場が目の前にあり、広島城も近いため、店内飲食だけでなくテイクアウト需要も見込まれる。サッカーのホームゲーム開催日はサポーターなどが来店され、テイクアウトされる人も多い。全体的には、20~30代の子育て世代の女性を中心にファミリー層で賑わっている。事業初のカフェ・ダイニング業態で、ぐるなびの独自開発メニューをはじめ、全国の飲食店ネットワークを活用したメニューや食材、半調理品などを提供させていただくモデルだ。

―― 11月には東京都中央区に初の都心型をオープンします。
 池田 総戸数1121戸の大規模タワーマンションの1階で、広島県に続き「GURUNAVI FOODHALL WYE Cafe」として開業する。住食一体の賑わい空間の創出を目指し、32席を設ける。湾岸エリアならではの需要に対応してテイクアウトメニューを充実させ、ぐるなびが開発した独自メニューをはじめ、全国名店の味が楽しめる加盟飲食店メニューも提供する。勝どき駅直結なので、様々な人に来店いただきたい。

―― 事業のこれまでの評価と、今後の出店への考え方は。
 池田 各フードホールは開業後に1~2年が経ち状況を把握できてきたので、より良くするための次の策も見えてきた。フードホールごとにそれぞれの課題はあるが、これを共通化して仕組み化し、成功モデルを作るように取り組んでいきたい。今後は、年間3~5店の出店を目指していきたい。直営事業のプラットフォーム化などができれば、さらに拡大できると考える。当社が得意とするDXで、飲食店支援につなげ、将来的には日本ブランドをアジア市場に展開したい考えもある。


(聞き手・笹倉聖一記者)
商業施設新聞2566号(2024年10月8日)(8面)
 ズームアップ!注目企業インタビュー

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