都心で「喫茶室ルノアール」などの喫茶業態を展開する(株)銀座ルノアール(東京都中野区)は、コロナ禍で苦しんだが、今期は最終利益も黒字化する見通しだ。さらなる成長に向け、新業態も投入する。今後の取り組みについて、6月に新社長に就任した岡崎裕成氏に聞いた。
―― 喫茶業態の状況は。
岡崎 売り上げは2023年から単月ベースで前期比10%以上伸びており、今期は最終利益も黒字化に転換できるだろう。ただ、円安や気候変動、物価高、さらに労働力不足や賃金、家賃上昇などの経費が増え、利益率の低下が懸念される。それを押し返す新たなビジネスモデルの投入で、利益を増やしていく。
―― 具体的には。
新ブランド「アリーヌ カフェ エ シュクルリ」の店内
岡崎 女性客層の獲得を目指し、当社の女性スタッフを中心に立ち上げた新ブランド「アリーヌ カフェ エ シュクルリ」を、4月に「ぷらりと京王府中」(東京都府中市)にオープンした。従来の当社の業態にはない内装やメニュー構成になっており、7~8割は女性客で手応えを感じている。客数は想定どおりだが、目標の客単価が取れていないので、メニューを改善していく。
―― 2号店の立地は。
岡崎 当初は銀座や有楽町の既存店を業態変更する予定だった。設備の関係で実現できなかったが、改めて銀座、有楽町でリサーチしている。また中野駅周辺でも検討している。
―― 今期の出店計画は。
岡崎 今期の出店計画は基幹の「喫茶室ルノアール」と「アリーヌ」の2本立てで進めたい。
―― 喫茶室ルノアールの取り組みは。
岡崎 3店の出店を計画している。すでに6月、「ザ ヨコハマ フロント」(横浜市神奈川区)に開店した。計画どおり進めば3店の出店をクリアできるだろう。良い条件があればそれ以上出店したい。
―― 黒字化への施策は。
岡崎 今は業績回復を第一義としている。赤字でもそのエリアに必要な店舗を除き、赤字が続いている店舗や近隣に喫茶室ルノアールがある店舗を対象に計画閉店を23年度に実施した。
コロナ禍で社員やベテランアルバイトがだいぶ離職した。出店案件は多いが、人材をどう確保するか。今後、高齢者や外国人労働者をどこまで受け入れるかも課題だ。
また、「カフェミヤマ」「カフェルノアール」「ニューヨーカーズカフェ」などブランド数も多い。ターゲット層は分かれているものの、利用されるお客様のメーンは男性ビジネスマン。お客様にはカフェミヤマとカフェルノアールの違いが分かりにくい。メニューや内装を統一すれば負荷が減る。ブランドのスリム化を今期から進め、財務状況を見ながら、来期以降の完了になるだろう。
―― 郊外型の「ミヤマ珈琲」については。
岡崎 コロナ禍では回復が早く助けられた。周りの郊外の状況が変わり、ブランドとして認知されて地元に密着して根付いているので、ブランドのブラッシュアップを図っていきたい。
―― 郊外は「コメダ珈琲店」が強みを発揮しています。
岡崎 ミヤマ珈琲が劣っているとは思わないが、4店のミヤマ珈琲と、1000店以上を誇るブランドでは力が全く違う。1号店の朝霞店から2号店の大宮店まで1年かかった。その後も1年に1店出店と拡大が遅れた。出店を加速させないと、ブランドはなかなか広がらない。
従ってアリーヌの2号店は早期に実現したい。全く合わない立地に出店すると低迷を余儀なくされてしまうため、見極めることが大切だ。また、出店したから安心ではなく、課題が見えたらすぐに解決する連続的な取り組みが必要である。
―― 中期的な取り組みは。
岡崎 まずは財務状況をしっかり整える。また、企業価値向上を目的にサステナブルな活動にも取り組む。すでに行っている分野もあるが、それを可視化や外部に対して発表はしていない。サステナブルな活動を前面に出して支持や評価をいただければと考える。そのうえで、どう利益を上げていくか。
当社は空間やくつろぎを提供している。規模は決して大きくないが、そのなかで利益を担保しながら、サステナブルな取り組みをしていきたい。
―― 最後に一言。
岡崎 コロナ禍では社員やアルバイトを不安にさせた部分もある。そういう思いをさせない経営、人生設計が普通にできる当たり前の会社を目指す。そのために何をやるのか、順番を間違えないようにそのつど考えていきたい。
(聞き手・特別編集委員 松本顕介)
商業施設新聞2564号(2024年9月24日)(8面)
経営者の目線 外食インタビュー