商業施設新聞
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第431回

東急(株) 渋谷開発事業部 開発計画グループ 統括部長 関光浩氏


渋谷 街づくり、駅直上に大型フロアや広場誕生
東急百貨店本店跡は街歩き拠点に

2024/5/21

東急(株) 渋谷開発事業部 開発計画グループ 統括部長 関光浩氏
 100年に一度の大開発が進められている東京・渋谷。2027年度に開業予定の「渋谷スクランブルスクエアII期(中央棟・西棟)」は渋谷スクランブルスクエアI期(東棟)とつながり、駅直上にワンプレート約6000m²の大型フロアが誕生する。東急百貨店本店跡地の「渋谷アッパー・ウエスト・プロジェクト」も進んでおり、ここは新たな街歩きの拠点にしたいという。東急(株)の渋谷開発事業部 開発計画グループ 統括部長の関光浩氏(所属・役職は取材時のもの)に話を聞いた。

―― 23年までに、渋谷駅周辺では様々な施設が開業しました。
 関 東急東横線の副都心線直通および東急東横線渋谷駅の地下化を契機に、様々な再開発事業を推進してきた。12年には「渋谷ヒカリエ」が開業し、これを皮切りに「渋谷ストリーム」など、19年には「渋谷スクランブルスクエア東棟」が開業した。
 23年11月には東急不動産が推進した「渋谷サクラステージ」が竣工し、高品質な住宅や、外資系宿泊施設の「ハイアット ハウス 東京 渋谷」を誘致し、渋谷駅前に足りなかった機能がある程度補完された。

―― 渋谷スクランブルスクエア中央棟・西棟について。
 関 東棟は地下7階地上47階建ての高層棟として建設されたが、中央棟は地下2階地上10階建て、西棟は地下5階地上13階建てとなる。東棟は縦積みで商業施設を整備しており、ワンフロア面積は決して広いとは言えなかったが、西棟と中央棟が完成すると、地下1階、および地上4階~9階において3棟がつながり、ワンプレート約6000m²の大型フロアが誕生する。様々な使い方ができるだろう。

―― 中央棟・西棟の開業で駅は大きく変化しそうですね。
 関 かなり変わると思う。中央棟の北側4階には広場を、屋上10階には国際交流施設を設ける予定で、イベントが開催できるようにする。渋谷駅は多くの人が訪れ、イベント需要も多いため駅周辺でイベントの開催が可能な広場が多くできるのは大きい。また、ハチ公前の広場から見て、現在のJRの改札があるところには4階レベルで屋外型の広場ができる。高層棟に向けて連続的な動線ができるほか、デッキで周辺施設とつながることで回遊性も飛躍的に向上するだろう。入り口も複数設ける予定だ。

―― 駅前では、宮益坂地区でも再開発が計画されています。
 関 宮益坂地区は渋谷ヒカリエの隣接地と、宮益坂を挟んで北側の敷地、神社の再建も含んだ計3街区で再開発を実施する。渋谷ヒカリエの隣接地は低層棟を建設する予定で、建物は地下2階地上7階建て延べ約8850m²の規模を想定し、主に店舗などを集積する。
 道路を挟んで向かいの敷地には、地下3階地上33階建て延べ約19万1150m²の高層棟を建設する。高層棟は店舗やオフィスに加えて、ホールや宿泊施設を導入する。宿泊施設は、外資系ラグジュアリーホテルの誘致も視野に入れている。低層棟と高層棟の間には通路を渡す予定で、地下レベルでは地下鉄通路とも接続する。これにより、渋谷駅周辺の回遊性は向上するだろう。

―― 東急百貨店本店の跡地もついに開発がスタートしました。
 関 従前、東急百貨店本店は松濤に住んでいる方や高所得層の方などにもご利用いただいていた。改めてこうした方に愛用されていたことを感じる。開発にあたっては、スモールラグジュアリーホテル、ハイエンドレジデンス、洗練されたライフスタイルを提案するリテールを設ける方針だ。

―― 駅から少し距離があります。どのように誘客しますか。
 関 東急百貨店本店跡地は「奥渋」など渋谷に点在する各エリアの結節点に位置するため、街歩きの拠点的存在になるようにしたい。そのため、街歩きの途中に立ち寄りたくなるような施設にする必要がある。駅から距離があるからといって、目的性の高い店舗ばかりで集客するようなイメージとは異なるだろう。

―― 渋谷は貴社以外にも様々な事業者が開発を進めています。
 関 当社が拠点とするエリアではあるが、当社が渋谷のすべてを開発するのは現実的ではない。渋谷の魅力の一つに「カオス」があるが、他社が渋谷で開発をしてくれることで、こうした魅力が増すことも期待できる。

―― 今後も渋谷の街づくりは続きそうです。
 関 渋谷の地域の方々は、街を熟知しており、街づくりの意欲が高い。地域の方々なくして開発はできないし、教えていただくことが多い。我々もそんな熱意溢れる地域の方たちと連携しながら、渋谷をより魅力的な街にしていきたい。


(聞き手・編集長 高橋直也/新井谷千恵子記者)
商業施設新聞2545号(2024年5月14日)(1面)
 デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.433

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