商業施設新聞
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No.953

万世ビル最後の日


山田高裕

2024/4/23

 3月31日、東京都千代田区・秋葉原の「万世ビル」が閉館した。30年以上前の竣工以降、万世橋沿いに佇むビルは秋葉原のシンボル的な存在として知られており、閉館が発表されたときは話題となった。この閉館の当日、せっかくなので足を運んで見てみることにした。

閉館当日の万世ビル
閉館当日の万世ビル
 現地に近づくと、閉館を惜しみ万世ビルを眺め、写真を撮る人々がすでに集まっていた。万世ビルは地下1階地上10階建ての建物で、各階には鉄板焼から焼き肉、ステーキ、ラーメンといった様々な専門店があり、上に行けば行くほど価格帯が高くなるとして有名だったが、閉館時にはすでに多くの店舗は閉業しており、4階の洋食店と1階のラーメン屋が営業しているだけだった。しかし閉館当日はすでに閉業している階もライトアップし、在りし日の万世ビルを再現していた。

 近づくと、1階外壁部分で営業しているラーメン屋に長蛇の列ができていた。肉をたっぷり入れたパーコー麺が評判の店で、万世ビルの名物にもなっていた。閉店までに全員入店できるのかわからないくらい人が並んでおり、閉店を惜しむ人たちの思いがうかがい知れた。

 ビル内部の1階では、すでに閉店した店舗の前で「肉の万世」名物のカツサンドを売っている光景が見られた。建物内で記念写真を撮る人も多くおり、店の人も最後の思い出として閉店を惜しんでいる様子だった。

 今回の閉館は建物の老朽化などを理由としたもので、一部の店舗は近隣の施設に移転しそこで新装開店している。気になるのは跡地の活用だが、現段階では決まっていることはないようだ。しかし近隣では大規模な再開発である「外神田一丁目南部地区第一種市街地再開発」が進んでおり、今後秋葉原南部、神田川沿いは注目を集めるエリアとなる。そうした中で、地域のシンボルとなっていた万世ビルの後継としてふさわしい開発計画が出てくることを期待している。
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