商業施設新聞
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第416回

(株)アダストリア 海外企画室長 佐藤正啓氏


海外事業、台湾で出店攻勢、タイにも進出
旗艦店作り込みブランドを発信

2024/1/30

(株)アダストリア 海外企画室長 佐藤正啓氏
 (株)アダストリア(本部=東京都渋谷区)が海外で積極出店を展開している。台湾では2022年から出店を加速し、中国・上海では「niko and …」(ニコアンド)の旗艦店が好調だ。23年4月にはタイ1号店をオープンし、24年にはフィリピンにも進出する予定。10年後には海外事業の規模を1000億円まで引き上げたいという。同社海外企画室長の佐藤正啓氏に、海外事業の現況や戦略などについて聞いた。

―― 展開する地域と店舗数は。
売り上げが好調な上海の旗艦店niko and … SHANGHAIは600坪で展開
売り上げが好調な上海の旗艦店
niko and … SHANGHAIは600坪で展開
 佐藤 03年に初出店した台湾を皮切りに、香港、中国大陸、タイに店舗を構えている。実店舗数は台湾が53店、香港が19店、中国大陸が11店、タイが1店となっている。また、アメリカでは現地ブランドの運営を行っているほか、24年にはフィリピンでの1号店開業を目指している。
 特に台湾では22年度から出店攻勢を強めており、23年度は通期で21~23店の出店を計画している。5月にオープンした「ららぽーと台中」には7店を同時に出店した。

―― 海外で展開する主なブランドは。
 佐藤 03年の台湾1号店は「LOWRYS FARM」(ローリーズファーム)だった。また、当時は複数ブランドを組み合わせた「COLLECT POINT」(コレクトポイント)を積極展開していたが、個別のブランドを発信することを重視するため、現在は撤退している。
 今、特に引き合いや売り上げが大きいのはニコアンドだ。海外ではアパレルや雑貨、飲食などライフスタイルを複合的に提案する、ニコアンドの競合となるようなブランドがまだ少ない。また、当社のブランドの中でニコアンドはブランド力と発信力が最も強い。海外のお客様に対して端的にブランドの魅力を伝えるのにはニコアンドが最も適切だ。

―― 台湾や上海にはニコアンドの大型旗艦店があります。
 佐藤 台湾の旗艦店は158坪の規模で、アパレルや雑貨を販売しているほか、カフェも併設している。上海の旗艦店はそれよりも大きい600坪で展開しており、カフェだけでなくレストランも併設する。上海旗艦店には月に6万~8万人のお客様が訪れ、日本を含めても全店で最も売り上げが高い。
 台湾や上海の旗艦店は買い物ストリートのすごく良い立地にあるのだが、こうした旗艦店は海外進出にとても重要だ。というのも、デベロッパーに「うちに出店してほしい」と思ってもらえる情報発信力の高い旗艦店を1号店として作り込み、店舗網拡大の足掛かりにしている。その結果、台湾、香港、中国大陸では現地のデベロッパーからも多く引き合いをいただけるようになった。4月にオープンしたタイの1号店も路面の旗艦店として展開している。

―― 攻勢を強めているという台湾での出店について。
 佐藤 台湾は百貨店が強いため、現状では百貨店への出店が多い。また、台湾では複数ブランドを組み合わせながらまとめて出店するマルチブランド戦略を取っている。ららぽーと台中でもこの方法を採用した。今後も百貨店をはじめとする集客力の高い館で、時にはフロアをまたいで複数ブランドを出店できる体制を整えたい。
 ただ、コロナ禍にECが成長したことで、各エリアに出店しつつECで補完する販売形態が整ったと感じる。例えば台湾だと台南・高雄エリアは店舗数が少ないが、これ以上店舗を増やさなくてもECがあれば網羅できると思っている。上海など他地域でも、ECとの併用を見据えた出店を意識するようになった。

―― フィリピンへの進出も決まっています。
 佐藤 様々なファッションブランドを扱う現地法人よりニコアンドでの出店の引き合いがあったことがきっかけだった。フィリピンはほかの東南アジア諸国よりもショッピングモールが強いため、我々の得意とする売り出し方ができると考えている。詳細は決まっていないが、1号店は首都マニラのショッピングモールに24年秋ごろ開業したい。

―― 東アジアと東南アジアではどのような違いがありますか。
 佐藤 より南に位置する東南アジアは一年中暑いという気候的特性がある。そのため、日本では秋冬物が並ぶ時期の品揃えはよく考えなければならない。地元の衣料品店は年中半袖しか売っていないが、外資系ブランドはそうでもない。我々はどういったラインアップで展開するかを模索する必要はあるだろう。

―― 海外事業における中長期的な目標は。
 佐藤 海外事業の規模を10年をめどに1000億円までは引き上げたい。国内マーケットは縮小していくが、海外市場はまだまだ大きい。各国のお客様のニーズに応えられるよう、タイミングを見ながら各国で展開するブランドを増やしたい。足元ではタイやフィリピンでの足固めが必要だが、引き続き未進出国の調査も続けていく。

(聞き手・編集長 高橋直也/安田遥香記者)
商業施設新聞2530号(2024年1月23日)(4面)

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