プロ野球もメジャーリーグも2023年のレギュラーシーズンが終了し、あとはポストシーズンを残すだけとなった。振り返れば今年は例年より野球に没入した1年だった。始まりは3月初旬、北海道北広島市に誕生した「エスコンフィールド」の内覧会。足を踏み入れると、これがボールパークなのかと、度肝を抜かれた。
自分が初めて野球場を訪れたのは1976年のヤクルト対巨人の神宮球場での開幕戦。ちなみに先発投手はヤクルトが松岡選手、ジャイアンツが堀内選手の両エース。当時外野席は芝生で、試合の途中でライトスタンドから煙が上がっていた。あまりの寒さに焚火でもしていたのか、アナウンスで注意されたほどだ。当時の神宮球場の記憶を辿ると、エスコンフィールドはなんとも贅を尽くした施設であることがわかる。屋内型でありながらこちらは外野席ではなく、フィールド自体が全面天然芝だ。当時、トイレと売店くらいしかなかった神宮球場とは打って変わり、エスコンフィールドには、ホテルにサウナ、大型の厨房を備えた飲食店や多彩なフードホール、スタジオ型乗馬クラブやミュージアムまである、まさに夢のボールパーク。札幌市内のホテルに戻ってテレビつけると、WBCの練習試合で大谷選手が豪快なホームランをかっ飛ばしており、エスコンフィールドのコンコースに描かれた大谷選手の巨大な壁画を思い出した。その後の大谷選手の活躍はご承知のとおりだろう。
そして今年は9月に立て続けに2試合観戦する機会があった。数年ぶりに見た生の試合はだいぶ雰囲気が変わっていた。2019年3月にレフト・ライトの観客席増設など大幅リニューアルを行った横浜スタジアムは、球場の外(敷地内)には統一されたユニフォームで運営するたこ焼き・やきそば店があり、ファンが並ぶ。これだけでも気分が盛り上がってくるし、様々なサービスで、ファン数が増え、横浜スタジアムのチケットは取りにくくなっている。
球場内は大型LEDビジョンが多彩なビジュアルを提供する。イニングの間にはファンによるダンスや徒競走など様々な小イベントを実施し、飽きさせない仕掛けが見て取れる。先の増設で飲食店が増えてフードメニューが充実しており、ボールパーク化を大いに体感した。だが、個人的に真の「ボールパーク」と感じたのは、横浜DeNAベイスターズの牧、宮崎選手の連続ホームランで球場全体が1つに盛り上がった瞬間だったかもしれない。
その2週間後、神宮球場で観戦した。気が付かなったが、最寄りの外苑前駅の改札や出口も一新されていた。球場に向かう出口の前に立つビルの壁面にはヤクルトの高津監督ほか選手のポスターが施され、気分を高める(優勝争いをしていればより気分が高揚したのだろうが)。球場に向かう道すがら、同日早朝にラグビーワールドカップの日本対イングランド戦が控えており、秩父宮ラグビー場はジャパンのジャージを着たファンも多くみられ、街全体がボールパークの熱気に包まれている感じすらした。しかし、数年後、同地は再開発で劇的に変わる。半世紀近く前に見た景色、今の風景を記憶にとどめたい気分にさせられた。