電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第113回

ふくしま復興再生可能エネルギー産業フェアは意味がある!!


~洋上風力、マグネシウム空気電池、ナタネ油変圧器など注目~

2014/12/12

 縁があって福島県郡山市を訪問することとなり、第3回ふくしま復興再生可能エネルギー産業フェア2014(会場=郡山市ビッグパレットふくしま)の基調講演をやらせていただいた。タイトルは「水素エネルギー、再生可能エネルギーの新時代」というものであったが、200人以上の方が参集されていることには驚かせられた。会場には筆者の知人も多くおり、声をかけられ、うれしかった。

 主催は福島県および福島県産業振興センターであり、東日本大震災からの復興を果たすための運動論として、再生可能エネルギー産業を大きく育成したいとの趣旨によるものだ。原発事故で多くの被害を受けた福島県において再生可能エネルギー産業が育ち、全国または全世界に情報を発信することには多くの意味があると強く認識した。出展規模は170団体・285ブースまで拡大し、動員も第1回4149人、第2回5590人、そして今回は6000人以上と順調に増えている。福島県の進める運動論が認知されてきたといってよいだろう。

 講演の前に会場を回らせていただいたが、実に活況であったように思う。ドイツやベルギーなど海外からの出展者も目についた。そして何よりも、再生可能新エネルギーにかける多くの企業の不退転の姿勢が良く分かった。注目すべきブースだけに絞って大急ぎで回らせていただいたが、感銘の深い研究発表が多かった。

 福島洋上風力コンソーシアムは、2MWのダウンウインド型浮体式洋上風力発電設備1基と、世界初となる25MVA浮体式洋上サブステーションおよび海底ケーブルの設置を完了した。第2期としては7MW浮体式洋上風力発電設備2基を新設することになっている。総事業費は実に500億円であり、第1期の羽の部分は日立製作所が担当し、第2期は三菱重工業が手がけることになっている。なお、このコンソーシアムに参加しているのは、丸紅、東京大学、三菱商事、三菱重工業、ジャパンマリンユナイテッド、三井造船、新日鉄住金、日立製作所、古河電気工業、清水建設、みずほ情報総研といったメンバーである。

世界初の紙製容器でできた大容量非常用マグネシウム空気電池(古河電池)
世界初の紙製容器でできた大容量非常用マグネシウム空気電池(古河電池)
 古河電池が発表していた世界初の紙製容器でできた大容量の非常用マグネシウム空気電池にも驚かされた。手に取ってみたが実に軽く、寸法も233×226×266mmと意外にコンパクトであった。水や海水を入れるだけで発電し、正極は空気、負極はマグネシウムという構造になっている。スマートフォンを最大30回充電できる、としており、USBタイプの出力端子も2個装備している。発電時に二酸化炭素や騒音を発生せず、実に環境に配慮した電池だと恐れ入ったが、いよいよ12月から本格販売に移行するという。なお、紙製複合容器の技術については凸版印刷が担当している。

 北芝電機のナタネ油入負荷時タップ切換変圧器も実にユニークな製品であった。最大の特徴は、絶縁油に通常の鉱油を使用せず、天然のナタネ油を採用していることだ。鉱油の場合の寿命は30年であるが、ナタネ油を使えば寿命は60年まで延びるという優れものなのだ。言うところのカーボンニュートラル効果もある。ナタネ油を燃焼する際に発生するCO2がアブラナ生育時に大気から吸収したCO2と相殺されるために、地球温暖化の防止効果が得られるのだ。また万が一の漏洩時においても、ナタネ油は生分解性が高く、土壌への汚染防止が図れ、環境リスクも低減されるという。北芝電機の現在の製品は、関西系の会社からナタネ油を調達しているが、いずれは青森県下で作られるナタネ油を採用する計画であり、東北エリアにおける地産地消を図っていきたいとしている。

 そのほかにも、世界最高レベルの次世代型小型風力発電機、小水力発電システム、地熱発電システムなど、時代を切り開く再生可能エネルギーの開発成果が多く見られた。それにしても、会場に行くまでの間に仮設住宅が一杯あることに驚かされた。あの悲惨事から3年半も経つというのに、実際の復興はまだまだなのだと実感させられた。


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。30年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 社長。著書には『半導体業界ハンドブック』、『素材は国家なり』(長谷川慶太郎との共著)、『ニッポンの環境エネルギー力』(以上、東洋経済新報 社)、『これが半導体の全貌だ』(かんき出版)、『心から感動する会社』(亜紀書房)など19冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長 企画委員長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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