商業施設新聞
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No.460

外食企業の変化


岡田 光

2014/6/10

 取材するのが難しい業界の一つが外食業界だ。外食産業の不況はもはや周知の事実であり、「弊社は今期も出店を控えます」とだけ答えて、電話を切られるケースも少なくない。
 一方で最近、商業施設への出店に意欲を見せ始めている外食企業もある。その最たる例が(株)王将フードサービスだ。先ごろ開かれた決算説明会において、同社の渡辺直人社長は、「前期はイオンやアリオなどのSC内に10店を出店しており、今期も商業施設内(SCを含む)への出店として、上期に5店、下期に2店の計7店を計画している」と説明。その理由について尋ねたところ、渡辺社長は「単独の路面店を開店するには、1億円程度の設備投資が必要になる。その一方で、最近はSCで食事する機会が増えているため、単独の路面店よりも商業施設の優位性を考え、出店立地を見直した」とコメントした。

フードコートに出店した「ラーメン魁力屋 イオンモール東員店」
フードコートに出店した
「ラーメン魁力屋 イオンモール東員店」
 同社だけではない。ラーメン店「京都北白川 ラーメン魁力屋」をチェーン展開している(株)魁力屋も、路面店に次ぐ新たな店舗フォーマットとして、13年11月、「イオンモール東員店」をオープンした。同店はイオンモール東員の3階にあるフードコート内に立地し、商業施設内に出店するためのモデル店舗として位置づけられている。メニューは路面店とほぼ変わらず、ラーメンは全アイテムをラインアップ。この東員店の売り上げが好調に推移していることから、同社は今後、路面店だけでなく、商業施設内への展開も本格化させる方針で、2014年は年間で20店(路面店と商業施設内の店舗の合計)の新規出店を計画している。

商業施設内に出店した「エッグスンシングス神戸ハーバーランド店」
商業施設内に出店した
「エッグスンシングス神戸ハーバーランド店」
 これらはほんの一例であり、「お店の世界観を表現するには、商業施設内の区画では狭すぎる」と答える外食企業も確かに存在する。それでも、外食企業が商業施設内の出店に興味を持ち始めたのは、大きな変化であると筆者は思う。モノ消費よりもコト消費が重要視されつつある現代においては、クリーニング店や理容・美容室といったサービス店はもちろんのこと、飲食店もコト消費を支える大きな柱となる。長引く不況、資材高騰、人材不足など、外食企業を取り巻く環境は厳しさを増しているが、商業施設内の出店という新たな武器を引っさげて、さらなる高みを目指していただきたい。そして願わくば、商業施設新聞をご購読いただいて、知見を深めていただければ幸いである。
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