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厚生労働省老健局高齢者支援課(併)振興課 高齢者居住福祉専門官 山口義敬氏(下)


医療・介護連携強化で要介護者を24時間支援
「空家・学校を低所得高齢者住宅化、14年度予算に概算要求」

2014/2/25

質問に答える山口義敬氏(左)
質問に答える山口義敬氏(左)
 JPI(日本計画研究所)が主催した、厚生労働省老健局高齢者支援課(併)振興課 高齢者居住福祉専門官の山口義敬氏による特別セミナー「『住まい』と『医療』と『介護』の連携が重要とされる『高齢者向け住まい』整備普及の為の施設の進捗と課題~有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅、医療と介護の連携、地域包括ケア等、課題への行政対応~」の連載2回目(第1回は本紙2013年12月20日付2011号に掲載)は、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の詳細、「高齢者向け住まい」の課題と今後の取り組みについて紹介する。

◇   ◇   ◇

◆サ高住の82%が介護保険事業所を併設
 山口氏は、サービス付き高齢者向け住宅の非常に興味深いデータを講演テキストで提示した。以下は、厚生労働省の調査(2012年8月31日時点)による。サ高住の事業主体(12年8月31日時点、厚生労働省調べ)の事業種別は、事業実施法人/事業実施法人の母体法人では、介護サービス関連法人が46.1%/38.4%、不動産・建設業関連法人が17.6%/20.6%、医療法人が16.5%/20.1%、社会福祉法人が8.6%/8.7%、NPO法人が6.4%/6.0%、その他4.8%/6.3%の構成となっている。
 併設施設では、訪問介護事業所など、介護保険サービスの事業所を1つ以上併設している物件は81.7%(診療所、配食サービスは含まない)で、併設している施設は、訪問介護事業所が54.9%、デイサービスセンターが49.2%、居宅介護支援事業所が41.2%、訪問看護事業所が18.3%、小規模多機能型居宅介護事業所が14.7%、定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業所が5.7%(以上介護保険サービス)となっている。診療所併設は9.9%、配食サービスは16.5%。また、入居者による介護保険サービスの利用状況については、居宅介護支援が48.1%、訪問介護が44.7%、デイサービスが33.8%、訪問看護が6.3%、小規模多機能型居宅介護が4.0%となっている。

◆入居者の平均は82.6歳/要介護度1.8
 入居者は、比較的「要支援」「要介護1と2」が多く、全体としての平均要介護度は1.8となっている。開設からの期間が短い住宅も多い中、「要介護4と5」の入居者も相当数認められることから、制度上は同じサービス付き高齢者向け住宅であっても、個別の住宅によって機能が多様化しているものと考えられるとしている。認知症高齢者の日常生活自立度については、「自立」「Ⅰ」で約4割を占めているが、アンケート上、入居者の日常生活自立度を把握していない事業者等が約4割ある。入居者の年齢は、80代が最も多く53.7%を占め、以下、75~79歳が13.7%、90~94歳が13.2%、70~74歳が6.7%、65~69歳が4.0%、95歳以上が3.8%、64歳以下が3.1%、不明1.8%の順で、平均は82.6歳。
 平均入居率は、全体では76.8%。事業を開始してから12カ月以上が経過し、入居状況が安定していると思われる住宅の平均入居率を集計すると86.9%となる。

◆82%が夜間の人員配置、ヘルパー60%配置
 職員配置の状況では、ホームヘルパー(2級以上)が60.4%、介護福祉士が46.5%、ケアマネージャーが22.5%、看護師が11.9%、社会福祉士が7.5%、その他7.0%、特になし2.4%、無回答1.9%。夜間の人員配置なしは16.8%で、宿直または夜勤の人員配置を行っているものが81.7%。
 入居者の状況把握は、「居室への訪問」、「喫食状況による確認」や「緊急通報装置」などさまざま。生活相談の内容に関しては、「介護に関する相談」が72.8%、「医療に関する相談」が67.5%と高いが、「日常生活に関する相談」(買い物やゴミ出しなど)が49.1%、「他の入居者との人間関係」が31.4%など、一定の件数が確認できる。
 実施している生活支援サービスは、通院への付き添い64.2%、ゴミ出し59.5%、通院以外の個別の外出(散歩、買い物など)の支援と買い物の代行がそれぞれ53.7%、洗濯サービス52.4%、清掃代行49.8%、介護予防を目的とした運動教室など14.0%、入居者の調理に対する支援10.3%、栄養指導や料理教室4.6%、その他特になし・無回答17.4%となっている。また、食事(朝・昼・夕の少なくとも1食)の提供は、92.0%(無回答の住宅を除くと98.2%)の住宅が実施しており、実態として有料老人ホームに該当する住宅が多い。

◆サ高住は平均32戸、1戸当たり22.5m²
 国土交通省の調べによるサービス付き高齢者向け住宅の規模(13年3月31日時点)では、1棟あたりの戸数は10戸未満が6.0%、10~19戸が23.2%、20~29戸が22.9%、30~39戸が19.2%、40~49戸が11.2%、50~59戸が7.9%、60戸以上が9.6%となっており、平均戸数は32.2戸。住戸の専有部分面積は、13m²以上18m²未満(登録基準を緩和したもの)が0.1%、18m²以上25m²未満が73.2%、25m²以上40m²未満が22.3%、40m²以上が4.4%で、平均床面積は22.5m²。特定施設入居者生活介護の指定を受けている事業者は4.5%で、残る95.5%は指定を受ける予定はないとなっている。

◆地域包括ケアシステムは医療と介護の連携から
 続いて、山口氏は地域包括ケアシステムについて概要を述べた後、高齢者向け住まいの課題と14年度からの新たな取り組みについて解説した。
 高齢者が可能な限り住み慣れた地域で生活を継続することができるような包括的な支援・サービス提供体制の構築を目指す「地域包括ケアシステム」では、「介護・リハビリ」「医療・看護」「保健・予防」という専門的なサービスと、その前提としての「住まい」と「生活支援・福祉サービス」が相互に関係し、連携しながら在宅の生活を支えるハード、ソフトのインフラ構築を目指している。
 訪問介護などの在宅サービスが増加しているものの、重度者をはじめとした要介護高齢者の在宅生活を24時間支える仕組みが不足していることに加え、医療ニーズが高い高齢者に対して、医療と介護の連携が不足しているという問題があり、このため、(1)日中・夜間を通じて、(2)訪問介護と訪問看護の両方を提供し、(3)定期巡回と随時の対応を行う「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」が12年4月に創設された。
 定期巡回・随時対応サービスのほか、主治医、協力医療機関や介護保険施設と連携を図りながら、医療ニーズの高い在宅高齢者への療養支援を行う複合型サービス事業所(登録定員25人以下、通い15人以下、宿泊9人以下)もまた、地域包括ケアシステムの機能を担う。

◆地域に応じた適切な住宅供給目標の設定へ
 高齢者向け住まいの課題においては、課題(1)「サービス付き高齢者向け住宅の計画的な供給」では、サ高住の供給に伴う高齢者の集住により、介護保険サービスの需要が高まり、保険者として負担が増えることを懸念する市区町村があること、また、住宅の登録権者が都道府県で、サービスの保険者が市区町村であることからくる、「介護サービスのニーズ」と「サ高住の供給」が合致しない恐れがあることなどから、都道府県による計画(高齢者向け賃貸住宅の供給目標:住宅の供給促進・介護サービス事業者等の施設の整備促進、計画期間)を策定する過程で、市町村別の住宅供給目標を反映し、地域の需要に応じた適切な供給目標の設定を促している。

◆空家・学校を低所得高齢者住宅へ予算要求
 課題(2)の「低所得高齢者の住まいについて」と「既存空家を活用した居住支援」を連動させ、「低所得高齢者等住まい・生活支援事業のイメージ」を実現するため、14年度の概算要求に盛り込んでいる。
 低所得高齢者の住まいについては、政府方針(13年6月14日閣議決定)として、増え続ける空家や学校跡地などの有効活用による新たな住まいの確保を図ることが示されている。
 14年度予算への概算要求をした「低所得高齢者等住まい・生活支援事業」は、社会福祉法人やNPO法人などが事業実施主体となり、(A)住まいの確保(事業実施主体が保証人となり、あるいはサブリースで確保した、空家を活用した(仮称)高齢者ハウスに軽度の施設入所者、住宅困窮者、生活が困難な住宅の高齢者を誘導、必要に応じて建物改修費を支援)、地域の医療、介護、看取りなど必要に応じた外部サービスを利用しながら(B)生活支援(事業実施主体が複数の(仮称)高齢者ハウスにおいて、24時間対応で第二種社会福祉事業:訪問や相談援助などの生活支援サービスの提供・見守りの実施)、さらに、(C)これらの事業を実施する基金の造成に係る立ち上げ支援で構成される。

◆消費者ニーズに沿った住まいの品質表示を
 課題(3)「高齢者向け住まいを対象とした品質表示」に関しては、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などにおいて、法定登録事項(部屋の規模・設備の内容)、ハードの質(車いす移動が可能なエリア)、自由の確保(介護・医療の選択自由:事業者を選べるか)、立地の状況(駅までの移動時間・移動手段)、サービスの即時性(介護・医療を受けるまでに必要な時間)、サービスの継続性(事業運営の透明性:財務諸表の公開など)、サービスのメニュー(生活支援の具体的な内容)、サービスの提供体制(スタッフの資格・人数)といった項目を整理し、消費者が高齢者向け住まいを適確に選択できるよう、個々の住まいの「品質」を表示するための手法について検討している。
 方向として、行政や事業者からのお仕着せではなく、消費者ニーズに応じた「モノサシ」を設置し、内容をホームページなどで公開するとともに、サービスなどの内容変更に応じて随時更新するなど、制度化はせずに、事業者の任意の取り組みとして裾野を広げてゆくイメージを描いている。
 山口氏は、こうした14年度以降の国の取り組みや、サービス付き高齢者向け住宅を含む住所地特例制度見直しの可能性などを解説し、講演を終えた。
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