厚木市立病院(神奈川県厚木市水引1-16-36、Tel.046-221-1570)は、敷地内に救急医療などに対応可能な新病院の整備を進めている。スクラップ&ビルド方式を採っているため、工期を1~3期に分けており、第1期工事の新南棟、救急・手術棟が12月末に完了する。当初、工期は2013年3月末までを予定していたが、神奈川県立厚木病院の当時行われた建物解体で発生したコンクリート廃材など多数の障害物が広範囲にわたり地中から発見されたため、9カ月延期することとなった。基本・実施設計は日本設計、施工は大成・小島JVが担当。
同病院は、1951年10月に開設した県立厚木病院が神奈川県から厚木市に経営譲渡され、03年4月に開設した。現在は外来棟、仮設棟、本館、南病棟、RI棟、メディカルセンターなどで構成されている。診療科目は15科目(内、循内、精、小、外、整、形、脳外、泌、産婦、眼、耳、放、麻)を標榜しており、病床数は感染症病床を含め356床。
少子高齢化、疾病構造の変化などにより、求められる医療が拡大・多様化しており、1つの病院がすべての医療を提供することは困難となっている。こうした中、同病院が所在する県央医療圏には基幹病院がなく、同病院と大和市立病院の2公立病院と、社会医療法人の2病院が中心的役割を担うことが期待されている。
しかし、現状では機能面、規模の面で相互に競合する病院として存在し、医療圏内や病院間での役割が明確となっておらず、県央医療圏には3次医療を担う医療機関や救急救命センター、周産期・母子医療センターなどといった地域の拠点病院も存在しない。
また、厚木市立病院は2次医療機関として、厚木市、愛川町、清川村の救急医療の中核を担っているが、同病院にはICUがなく、手術件数や救急の受け入れ率を高めることが困難である。さらに、給排水設備や空調機械設備、高・低圧電気設備、非常用高圧発電機などの老朽化が進んでいるほか、電気設備はコンピューターや医療設備の増大による変電設備の増設を行っているものの、スペース的にもこれ以上の増設はできない。これらの理由や患者への安心・安全な医療の提供という立場から、新病院の整備を推進することとなった。
新病院は、「救急、小児・周産期、がん、災害治療など、公立病院として引き続き地域医療の中心的役割を果たし続ける病院」をコンセプトに整備を進めており、具体的には救急医療体制を充実させるため、新たにICUやCCUも整備する。昨今の全国的な医師および看護師不足の状況から、NICUとしての開設は困難としながらも、NICU基準を満たす設備も設置する予定。ICUを活用した救急医療体制での対応を考え、SCUの設置も行わない。
また、診療科目は現在標榜している15科目に加え、新たにリハビリテーション科と救急部も開設する。さらに、地震や風水害時にも災害拠点病院としての機能を発揮するため、免震構造や防水扉を採用、効率的で省エネ効果が高い太陽光発電パネルも設置する。
建設用地については、厚木市では市街化区域内に広大な土地を確保することは困難であり、現在地でのスクラップ&ビルドのほうがコストや整備の短期化というメリットがある。
1期工事で建設される新南棟は、RC造り地下1階地上6階建て延べ8384m²の規模となり、地下には機械室や厨房、設備諸室などを配置。地上1階は管理部門のほか、患者やお見舞いに来た人などが使用できるコンビニエンスストア、レストラン、2階には管理部門を配置する。3~6階は病室となり、設置する病床は182床を予定している。
同じく1期工事で建設される救急・手術棟の建物規模は、RC造り地下1階地上4階建て延べ8669m²。地下1階と地上1階には放射線診断部門を配置。診断用CT 2台、CT併設リニアック1台を設置する。また、地下に中央材料部を配置し、3階の手術室まで2基のエレベーターでそれぞれ使用前、使用後の材料を送受することができる。内視鏡室は3室あり、うち1室は治療も可能だ。2階には透析部門、検査室を配置する。3階の手術室は8室(うち1室がハイブリッド)、クリーン度は2室がクラス1000で、ほかはクラス1万となる。4階にはICU 6床、CCU 4床を配置する。
今後は、2期工事で南病棟、RI棟を解体して中央棟を建設、3期工事では本館、外来棟の解体と外構工事を施し、建て替えが完了する。工期は1期工事の9カ月延長により、2~3期も延長する。17年3月に全体の工事完了を目指しており、1期、2期で建設される建物と一部活用する既存施設を合わせた延べ床面積は3万2535m²となる見込み。なお、メディカルセンターは解体せず、引き続き休日・夜間診療拠点として運用する。