兵庫県と西宮市が主催し7月3日、「(仮称)西宮総合医療センター 病院棟外建築工事 安全祈願祭・起工式」が建設予定地で執り行われた。西宮総合医療センター(以下、新統合病院)は、兵庫県立西宮病院と西宮市立中央病院を統合する新病院で、診療35科、552床(一般544床、精神/MPU8床)を擁し、兵庫県阪神圏域における中核病院を目指す。今後の医療ニーズの変化にも対応し、デジタルを駆使した高度専門医療・救急医療を提供するという。新統合病院の開院は2026年度上期を予定している。
安全祈願祭・起工式には、兵庫県議会関係者、西宮市議会関係者、近隣市町関係者、大学関係・医療関係者など約50人の関係者が出席した。主催者を代表し、齋藤元彦兵庫県知事は、「2病院は、戦火や阪神淡路大震災をのり越えて、それぞれ高度専門医療や地域密着型の医療を提供し、公立病院としての役割をしっかり果たしてきた。一方、全国的に少子高齢化に伴う疾病構造の変化や増加する救急患者の対応など医療を取り巻く環境は大きく変化している。阪神圏域も将来の高齢者人口のさらなる増加が想定される地域で、今後は循環器系や呼吸器系などの疾患の医療需要や高齢者の方々の救急搬送の増加が見込まれる」と挨拶の中で2病院統合の課題を挙げた。そのうえで、「県と市の病院が統合することで、阪神圏域の中核的な役割を担う急性期病院として、心臓血管外科、脳神経内科、精神科を新たに設置し、ハートセンターや脳卒中センターを整備することで救急医療を強化していく。感染症対応や免震装置を採用し、さらに消防との連携を図り、災害拠点病院としての役割にも万全を期す。また、地域の医療機関との役割分担や連携強化も行い、医療の質の向上に取り組んでいきたい」と抱負を述べた。
続いて、石井登志郎西宮市長も主催者を代表して挨拶し、建設地の津門大塚町について、「かつてこの地域は港の入り口を守る豪族がいたと言われている。この地に栄えた豪族にあやかり、新統合病院も地域の命を守る拠点としての価値を高めていきたい」とユーモアを交えて熱く語った。さらに「新統合病院の敷地内には、西宮市が救急ワークステーションを整備し、常時、市の消防車と救急職員が待機するため、救急対応能力が向上する」とコメント。最後に「26年度は西宮市政101年目で、この節目の年にスタートする病院は大きな事業だ。未来に向けて高い医療サービスを提供し、我々も県と協力して新統合病院の開院に尽力していきたい」と述べた。
新統合病院の概要について、建設地は西宮市津門大塚町のアサヒビール西宮工場跡地で、国道2号線沿いと阪神国道駅すぐのアクセス性に優れた立地。敷地面積は2万6000m²。建物は、S造り(免震構造)11階塔屋1階建て延べ5万4531m²の病院棟、RC造り(耐震構造)3階建て延べ1995m²の放射線治療棟で構成。3階建ての立体駐車場棟(病院棟と2階レベルで渡り廊下で接続)のほか、関連施設として、2階建ての救急ワークステーション棟も整備する。
設計上の特徴は、救急・手術・ICUエリアとヘリポートを専用エレベーターで接続する高度救急エリアの強化、将来の医療環境の変化に対応する増築スペースを各所に確保、感染専用の導線・診療室・病室の確保、感染拡大フェースに対応するゾーニングや空調計画の強化、カンファレンス室やスタッフステーションの充実、地震や浸水対策およびトリアージや処置エリアの設定などの災害への強化を挙げている。また、都市型病院として、建物、隣接する公園、道路など一体的に地域に溶け込む景観や導線とする。敷地内の西エリアは人々が憩えるようなランドスケープの整備、東側は病院の顔となるアクセスしやすい導線設計とする。ほかにも、救急車両などが国道2号線からダイレクトにアクセスできる導線設計や救急ワークステーションを病院棟内の救急エリアのすぐ近くに設置することで、災害や救急対応の効率化を徹底する。
病院棟のフロア構成は、1階に救命救急センター、感染、MPU、放射線、内視鏡センター、2階に医事・患者支援、検査・処置、外来、化学療法、レストラン、3階に医局など管理部門、中央材料、栄養、SPD、剖検、薬剤、4階にGCU、GICU、CCU、手術、病理、ペイン、透析、ME、アイセンター、リハビリ、5階に地域周産期母子医療センター、小児病棟、一般病棟、6~10階に病棟(SCU含む)、11階にヘリポートを配置する。
設計および工事監理は(株)佐藤総合計画、施工は(株)熊谷組を代表とする熊谷・新井・高階のJVが担当している。
なお、新統合病院開院後の現西宮市立中央病院跡は、民間病院の誘致を見込んでいる。
(今村香里記者)