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名古屋市療養サービス事業団、IT化で訪問看護の業務負担軽減を達成


万全なセキュア技術で「情報の保護と共有化」の両立をクリア

2013/12/17

近藤佳子氏(左)と篠田和紀氏
近藤佳子氏(左)と篠田和紀氏
 医療・福祉業界におけるITの利活用による生産性の向上に取り組む動きが加速している。このほど、一般財団法人 名古屋市療養サービス事業団(名古屋市中村区豊国通1-14、Tel.052-482-3781) でIT化を推進するキーパーソンに話を聞く機会があり、訪問看護の業界における課題とその解決への取り組みを聞いた。
 名古屋市療養サービス事業団では、超高齢社会への移行に伴い、訪問看護、居宅介護支援が増え、利用者情報管理や情報のやり取り、効率的な看護/居宅介護支援の体制確立の必要性といった、さまざまな課題をITの活用により解決する試みを3年前より進めてきた。
 1995(平成7)年に設立された名古屋市療養サービス事業団は、訪問看護事業および居宅介護支援事業を展開、地域包括支援センターの運営などを行っており、約300人の訪問看護師が年間15万件の訪問看護を行っている。高齢化がさらに進展することになると、訪問看護業務自体もさらなる効率化を図る必要がある。事業団ではそのような近い将来を見据え、訪問看護の「人を看る」という本来の業務に専念する環境を実現するためにIT化を急ぐことにした。事業団では約3年前から本格的なIT化に取り組み、居宅介護支援およびレセプト請求は日立システムズのシステム、看護システムを内部で開発した。2011年夏から看護師が携行するマシンの選定に取りかかり、アンドロイド系を含むネットブックやタブレット端末を検討したものの、業務用としての使い勝手、業務用ソフトの不足、セキュリティの面などで実用的でないと判断。11年末に発売されたウルトラブックと呼ばれる薄型軽量のモバイルパソコンの採用を決めた。
 当初は、220人の看護師にウルトラブックを渡した。さらに、レノボが発売したキーボードの脱着が可能なノートPC兼タブレットが発売されたことから、同事業団IT統括本部の篠田和紀氏は、「電子カルテなどさまざまなアプリケーションが駆動させられ、電池のより一層の長寿命化、より薄く軽い端末のため、その採用を決め、約80台導入した。今後も徐々に台数を増やしていく」と説明する。投資額はシステム開発に1億2000万円、端末に3000万円ほどを費やし、このほか、通信費、セキュリティコストなどがかかる。
 導入以前は、看護師が紙に記録された過去の情報を持ち歩き、また、本業の看護にかける時間と同じ時間を移動や入力作業に費やすなど負担が大きかったが、導入した端末では、情報を記録したタブレット部分だけを現場に携行し、データを収集し記録、ドキュメントは事務所などでキーボードから入力できるなど、大幅な負担の軽減が実現する。
 また、看護師の直近のスケジュール(24時間)の確認も可能で、ミスの回避や煩雑な確認作業から開放される。
 同事業団在宅療養部の近藤佳子氏は、「看護師は『看護の力で療養者の健康状態が向上する』という訪問看護の素晴らしさを知ると、退職することは少なく、現在では40代後半の看護師が多い。このシステムにより労働負担の軽減や間接業務の削減を図り、看護師の確保につながるのではないか」と期待している。
 「情報の保護と共有化」の両立が課題であり、セキュリティに関しては、「通信はセキュアなIPsec VPN、ハード面ではデータを端末に保存しない運用、暗号化によるHDDプロテクト、リモートからのプロテクト、ワイプ機能を備え、端末起動ではプレブート認証、ウインドウズログイン、システムの認証パスワードと万全を期している」(篠田氏)。
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