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日本政策投資銀行、23年度の大企業設備投資は20.7%増の17兆815億円


2023/9/12

 日本政策投資銀行は、2023年度設備投資計画調査をまとめた。これによると、22年度の設備投資は、コロナ禍で見送った投資の再開に加え、EVや半導体、同材料の開発・増産、都心再開発もあり、前年度比10.7%の17兆815億円と3年ぶりに増加した。ただし、工期の遅れもあり計画時点の26.8%増からは大幅な下方修正となった。23年度は同20.7%の20兆6152億円と大幅増の計画。22年度から先送りされた投資に加え、デジタル化の加速を受けて、半導体の製造能力増強が、素材型におけるシリコンウエハーなどの材料を含めて拡大し、EV投資も増加する。また、人流拡大を受けて、鉄道の安全対策、航空機導入が再開するほか、都心再開発も継続し、製造業、非製造業ともに2年連続で増加する。

 製造業の22年度実績は、半導体やEV関連、自動化ニーズを受け化学や一般機械が大幅に増加し、同11.2%増の6兆2550億円となった。23年度も幅広い業種で大幅増となり、同26.5%増の7兆5243億円を計画。非鉄金属は半導体やEV向けが大幅増となり、輸送用機械は半導体の供給制約が緩和する中、電池を含むEV投資が増加。化学は半導体材料や医薬品、脱炭素および資源循環関連分野を中心に堅調となる計画。

 非製造業の22年度実績は運輸の先送りなどで下方修正されたが、都心の大型ビジネス拠点開発などがあり、同10.4%増の12兆4658億円と大幅に増加した。23年度は、安全対策投資や輸送力増強投資がある運輸のほか、大型開発が続く不動産、既存店のリニューアルなどがある小売りなどで大幅増の計画で、全体では同17.6%増の13兆908億円を計画している。



 サプライチェーン見直しの契機については、新型コロナやウクライナ危機の割合は減少したが、原材料費や人件費の高騰、米中対立が増加した。見直しの内容としては、22年と同様に「海外調達先の分散、多様化」や「製品・部品の標準化・規格化」が特に製造業で多く挙げられたほか、「需要地での事業拡大」を図る企業も多くみられた。一方、「海外拠点の国内回帰」の割合は過去3年と同様5%前後にとどまった。

 製造業の中期的な供給能力の見通しは、向こう3年程度では、海外を強化するとの回答はやや増加したが、コロナ前の19年の比率までは戻らない。ただし、10年先では強化するとの回答が6割程度まで増加した。国内については、向こう3年程度で強化するとの回答が2年前から10%ポイント上昇し、10年先についても、12%ポイントの大幅上昇となった。精密機械や輸送用機械を中心に、コロナ前に比べて国内を重視する傾向が見られる。

 海外設備投資の22年度実績は、製造業では自動車、化学、非鉄金属など、非製造業は鉱業、不動産などで増加し、全体では35.9%と計画を上回り大きく増加した。国別では、中国は電気機械の減少により低い伸びとなったが、北米では自動車、化学、不動産、中国を除くアジアでは自動車、電気機械、その他では鉱業、電気機械を中心に増加した。23年度計画は21%の高い伸びとなる。中国ではEV向け大型投資の一服や地政学リスクへの考慮などにより、電気機械、精密機械などが伸び悩むが、内需の取り込みに向けて不動産、化学などで伸びが拡大。北米ではIRA(インフレ抑制法)もあり、自動車の電池、化学の半導体材料など2桁増が続く。中国を除くアジアでは内需拡大やサプライチェーン構築への期待から多くの産業で引き続き高い伸びとなるほか、その他地域においてエネルギー確保の投資が継続する。

 海外設備投資はリーマン危機後の円高もあり、13年にかけて大きく増加。その後は円安や中国の成長鈍化などで停滞し、19年以降は米中貿易摩擦に伴う海外減速やコロナ禍により減少したが、21年度から持ち直し、23年度も大幅増の計画。コロナ禍後、国内投資に比べて海外投資がいち早く持ち直したため、海外設備投資比率が拡大したが、23年度計画では、国内投資の伸びは海外より高まるため、比率はやや低下する。3年後の設備投資先として重視する国・地域としては、北米に次いで中国も高く、タイ、ベトナムが次ぐ。

 カーボンニュートラルの影響について、設備入れ替え契機になるとの回答が増加し、投資喚起が期待される。一方で、カーボンニュートラル達成時期を不明とする企業は22年度より減ったが、大半が50年としており、足元の投資を促す変化は見られなかった。

 23年度の設備投資に占める脱炭素関連投資の割合は、「なし」とする企業が減少し、1割未満の企業がやや増加したが、金額ベースに引き直すと13%となり高まってはいない。設備投資の内容として、省エネ、再エネが多く、2割の企業がEV関連を計画。要素技術ごとの割合も大きな変化は見られなかった。

 23年度の研究開発に占める脱炭素関連は、脱炭素インフラを担う一般機械やEV関連開発を進める自動車などで脱炭素ウエートが高く、金額ベースでは約20%と設備投資の脱炭素割合を上回る。また、22年度をやや上回った。研究開発の内容は省エネ、再エネのほかEVや資源循環が多いが、水素関連が22年度から3%ポイント高まった。

 脱炭素の取り組みを進める上での課題としては、「技術的な問題」が最多だが、「開発コスト」は低下。一方「調達先の制約」の割合が上昇した。カーボンニュートラルに向けて今後活用を期待する燃料は、石油や鉄鋼など製造業を中心に水素が最多となった。次いで、発電燃料としてバイオマスが挙げられたほか、製造業では化石燃料の中でもCO2排出量が少ないLNGが多く挙がった。

 22年度のデジタル化投資は、例年同様計画から下方修正されたが、8.4%増と2年連続で増加した。23年度は33.8%増を計画。製造業では、一般機械でCO2管理、輸送用機械でエネルギーマネージメントなど脱炭素関連もあり32.3%増、非製造業では鉄道のMaaSアプリなど利便性向上の投資や電力・ガスの遠隔保守管理などにより35.3%増加する。設備投資に占めるデジタル化投資の比率は、有形固定資産への投資が堅調な製造業が低下するものの、省人化やインバウンドへの対応などが見られる非製造業を中心に高まる。

 研究開発費は、22年度は輸送用機械で新モデル開発やCASE・脱炭素関連、化学で新薬や電子材料、一般機械で脱炭素関連などの開発が行われた。売上高の回復もあって9.6%増加し、計画を上回る伸びとなった。23年度の計画は前年比5.1%増となり、例年並みの増加ペースとなる。脱炭素関連などが継続するほか、輸送用機械では電動化、一般機械や電気機械ではIoT関連が見られる。
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