買取専門店「買取大吉」を展開する(株)エンパワー(東京都新宿区)は、リユース市場の拡大を受けて店舗網の拡充を図っている。2023年9月期は300店を出店する見通しで、中長期では、店舗数1200店を目指す。着々と商業施設内への出店実績も積み重ねる同社の店舗展開について、代表取締役社長の増井俊介氏に話を聞いた。
―― 貴社の概要を。
増井 10年10月に会社を設立しており、買取大吉のフランチャイズの運営や、貴金属を中心とした古物の買い取りを手がける。買取大吉は「ご縁の良い買取、大吉。」をブランドコンセプトに掲げ、全国各地に773店(直営141店、FC632店、8月22日時点)を展開している。直営店はブランドの認知度向上を狙ってターミナル駅や駅前の立地に出店し、FC店は地元のフランチャイジーが地域密着型店舗として運営する。
―― 店舗の特徴は。
増井 (1)店舗継続率(店舗が閉店せずに継続している割合)、(2)直営店舗数、(3)買取品目数の3つが挙げられる。(1)の店舗継続率は22年9月期に97.4%を記録した。退店率は2.6%で、圧倒的に質の高いテナントとなる。この数字の裏付けとして、本部からFC店へのサポートが手厚いのも特徴だ。買取大吉では本部に査定のサポートシステムを敷いており、査定時はFC店とオンラインで接続するため、FC店は接客に集中できる。
(2)の直営店舗数は業界トップクラスの141店を運営しており、直営店で打ち出した施策の中で、成功したものはFC店にも展開している。(3)の買取品目数も業界トップクラスで、様々な商品を買い取れるため、お客様の来店頻度は自然と高まる。買い取り自体はリピート商売のため、お客様とのコミュニケーションを重視し、次につながる丁寧な接客や清潔な身だしなみを心がけている。その甲斐あって、買取大吉のリピート率は40%程度と業界内でも高い水準にある。
―― 店舗フォーマットについて。
増井 21年10月に店舗デザインを一新した。ロゴは2通り、カラーは青に統一したが、店舗のファサードは出店する施設側の個性や方向性に合わせて展開しており、多種多様な“顔”を持つ。店舗面積は直営店が15坪前後、FC店は5~15坪を目安とし、路面・ロードサイドタイプ、RSCタイプ、NSC・SMタイプの3つの店舗デザインを用意している。
―― 顧客層や買取商材について。
増井 競合店では50代以上が80%を超える傾向にあるが、買取大吉では20代が8%、30代が11%、40代が15%と、50代以下が30%以上を占めるなど幅広い層に利用いただいている。買取商材は貴金属が50%、時計が16%、ブランドが11%、ジュエリーは8%、地金は7%、金券は3%、酒類は2%、切手は2%、その他は2%という構成で、粗利率が高い貴金属、時計、ブランド、ジュエリーが全体の90%を占めるのも特徴だ。顧客は富裕層が多く、施設にとっては優良顧客となり得る可能性があり、買取後に現金をお渡しするので、施設内での消費も見込める。お客様から買い取った商材は専門業者に販売しており、最近はインターネットオークションも開始している。
―― 商業施設内にも出店実績がある。
増井 店舗数のうち、約半分が商業施設内に出店している。とりわけ、食品スーパーが入居している商業施設と相性が良い。すでに競合店が出店している商業施設もあるが、市場規模に対して店舗が不足していると日々感じる。お客様が相見積もりを取ることを考えれば、施設内に2店、3店あっても良いだろう。今後の出店計画としては、23年9月期に300店を出店する見通しで、24年9月期には350店の出店を予定している。当社は買取店の店舗数No.1を目標として掲げており、中長期では、1200店の構築を図っていく。
―― 拡大に向け課題は。
増井 店舗開発、人材採用、他社とのアライアンスが重要だ。他社とのアライアンスでは(株)コメダと実験的に協業を図った。コメダ珈琲店の500店を対象に、同店の駐車場にキャンピングカーを導入して買取フェアを実施したが、お客様の反応は上々であった。
23年9月期は広告予算75億円を投入し、タレントのIKKOさんを起用したCMや、月間6000万枚の折込広告を打っており、それらには施設名も入るので商業施設の宣伝にも貢献している。こうした出張買取、催事買取、広告なども強化し、買取大吉のブランド力向上に努めていきたい。
(聞き手・副編集長 岡田光)
商業施設新聞2510号(2023年8月29日)(5面)