JR西日本グループの山陽SC開発(株)(岡山市北区)は、JR岡山駅直結の商業施設「さんすて岡山」、岡山駅前の地下街「岡山一番街」を中心にSCを管理・運営している。2020年にさんすて岡山を3期に分けて大規模リニューアルし、地元客と観光客の双方を取り込んでいる。同社の代表取締役社長 福嶋圭氏に話を伺った。
―― さんすて岡山のリニューアル概要から。
福嶋 20年3月に完了した第1期は、新幹線改札口に近い南館の食を強化した。まず、2階のお土産ゾーンを拡充し、岡山県の名店や瀬戸内の魅力を発信する土産やスイーツを扱う店を集積。店舗数は従来比約2倍となる16店に増やし、観光や出張の際に立ち寄りやすくした。加えて、在来線中央改札口側の区画は、弁当や総菜の店を配置した。奥の飲食店ゾーンは、テイクアウトコーナーを併設した店舗を配置し、滞在時間に合わせて柔軟に対応できるようにした。一方、南館の1階はランチや通勤通学の合間に利用できるデイリーニーズに対応した飲食ゾーンとした。駅立地だが、車で来館する人や駅まで自転車を利用する人も多いため、駐車場などの導線に近い区画は、食品スーパーの「ユアーズ」を2階から移設し、さらに100円ショップの「キャンドゥ」、ドラッグストアの「マツモトキヨシ」を導入し、ワンフロアで日常使いの回遊がしやすくなった。
20年5~6月の第2期では、在来線中央改札口前の南館橋上エリアのデリカゾーンをブラッシュアップし、岡山県初など話題の店舗を誘致した。
20年9月の第3期は、駅前広場に面する北館をリニューアルした。ゆっくり買い物を楽しめるよう高感度なライフスタイルを提案するゾーンとし、トレンドのファッションや雑貨、カフェなどを配置した。
―― リニューアル後の効果は。
福嶋 さんすて岡山全体で店舗面積約1万1800m²、104店となり、売上高は21年度に約94億円、22年度に約122億円と好調だ。リニューアル直後はコロナで苦戦したが、22年度は行動制限が解け、お土産などの食物販店や飲食店が急激に回復した。新幹線のぞみが停車する中核都市でありながら、食物販店や飲食店が手狭だったが、観光客と地元客の双方をターゲットとしたゾーニングを行い、店舗を増やしたことで、駅を利用する多くの人々に十分に行き届いていると感じる。
―― 特に好調な店など。
福嶋 南館のデリカゾーンに出店した「成城石井」だ。成城石井の最西端の店舗であり、オープン時は連日行列ができるなど話題を呼んだ。コロナ禍でのおうちニーズも相まって自宅でのプチ贅沢に利用していただいているようだ。トレンドに敏感な主婦層を取り込めており、地元の方への新しい切り口になったほか、新たな層の開拓もできた。南館、北館のアパレル群は、やや回復が遅れているが、コロナの5類移行後の集客に期待したい。
このほか、西館はサービス業態など目的来店性の強いゾーンで、「GU」を導入して以降、目的来店される方が増えており、単館としても集客力が増している。
―― 岡山一番街について。
福嶋 店舗面積は8160m²で、79店を集積している。22年度の売上高は約73億円で、トレンドに敏感な女性をメーンターゲットとした店舗構成としている。店舗の入れ替えも随時行い、飽きの来ない施設づくりを心がけている。
―― 岡山一番街の今後の取り組みや課題は。
福嶋 24年に開業50周年を迎えるにあたり、ファッション分野の強みを活かし、現在利用いただいている30代女性層を中心としたニーズを逃さないようにしつつ、20代女性層やギフトなどの来店購買頻度を高められる施策も考えていく。
―― 岡山駅周辺の環境が変化しています。
福嶋 岡山駅周辺ではイオンモール岡山の開業以降、来街されるお客様が大幅に増加した。岡山一番街でもテナントの入れ替えに併せてMDの見直しを行い、不足業種の拡充などを進めてきた。
今後、駅前広場まで路面電車が乗り入れる計画や駅前の大型再開発ビルも計画されており、岡山駅を中心とした賑わいがさらに増すと考えられる。こうした駅前の賑わいに対応できる施設づくりに注力したい。
―― 岡山駅以外の施設の動向は。
福嶋 「さんすて倉敷」と「さんすて福山」は、地方の中核都市の玄関口の商業施設として、観光だけでなく、地元の方のニーズをさらに取り込んでいくことが課題だ。そのため、食物販などを中心に地元密着の業種を充実させたリニューアルを段階的に推進している。
(聞き手・今村香里記者)
商業施設新聞2497号(2023年5月30日)(1面)
デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.408