電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第535回

電子機器トータルソリューション展は会場に大賑わいが戻ってきた!


西村経産大臣も来場し、ラピダスの小池社長も一大熱演

2023/6/16

 日本電子回路工業会(JPCA)など12団体が主催する「電子機器トータルソリューション展」は2023年5月31日(水)~6月2日(金)に開催されたが、大盛況裡のうちに終了した。出展者数は516社を数え、1273ブースが集まり、約5万人を動員するという活況ぶりであった。会場のあちこちで「コロナ規制が解除されて、みんなが会えるようになったのは嬉しいね」という声が聞こえていたものである。

 「日本電子回路工業会は、昨年に創立60周年を迎え、その輝かしい歴史を歩んできたことには敬意を表したい。ちなみに私も60歳を迎えたが、まだまだ元気だ。そしてまたニッポン半導体は国家プロジェクトを中核に据えて、一気に上昇しなければならない。元気を取り戻す時がきた。そして電子基板を支える皆様も重要な役割を果たしておられる」

西村経産相(左)とJSRの吉本執行役員(右)
西村経産相(左)とJSRの吉本執行役員(右)
 こう語ったのはこの展示会に顔を見せ、なおかつレセプションで挨拶し、多くの人たちと談笑していた経済産業大臣の西村康稔氏である。西村氏は、半導体を中心とする電子デバイス産業が世界を動かす原動力であり、このウェーブに日本はどうあってもついていかなければならないと強く示唆していた。そしてまた大型の国家戦略プロジェクトカンパニーであるラピダスの北海道千歳の大型工場建設は、何よりも大切という感想も述べていたのである。

 筆者も会場のあちこちでつかまり、いろんなブースを見せていただいたが、確かに業界の人たちの笑い声は戻ってきた。そしてなんとも言えない賑わいの時間がそこには流れていたように思う。その背景には、いよいよ我が国政府が本腰を入れて半導体を中心とする電子デバイス産業の一気上昇を狙う、という意思がしっかりと反映されていた気がするのだ。

 「我が国ニッポンの行く道は、3つのキーワードにつながる画期的な半導体チップを作り上げていくことである。そのキーワードは何といっても圧倒的な低消費電力、ハードとソフトの融合およびAgile(高速サイクル)、そして画期的な短TAT製造と短いTAT設計にある。死に物狂いでここに向かっていくしかない」

 基調講演の席上で力強くこう語ったのは東京大学教授の黒田忠広教授である。黒田氏は東芝出身、政府の国家プロジェクトであるRaaSの総責任者であり、学の分野で国家プロジェクトを強く支えている人である。講演の終わりの方で「今やニッポンの大学・高専は連携しなければならない。100校に及ぶ全国の学の半導体ネットワークを構築して、徹底的な人材育成に注力する」と述べた時には、会場に一種異様なため息があったような気がする。そこまでやるのか、という人たちの声も聞こえてきた。

 基調講演の最後に登場したのは、今や半導体業界の注目を一手に集める国家戦略カンパニーであるラピダスの代表取締役社長、小池淳義氏である。小池氏もまた経営理念として、「半導体産業に必要な人材を持続的に生み出す」「顧客企業と対等の立場で議論を重ね需要を生み出す」「前工程・後工程を融合しグリーンイノベーションを起こす」という3カ条を掲げたのだ。

 小池氏はよく知られているように、日立製作所において半導体グループの生産技術のトップにあった人である。そしてまた日立とUMCの合弁会社であるトレセンティテクノロジーズにあっては取締役社長に就任。その後、東芝とNANDフラッシュメモリーの分野で共闘を組んだSan Disk(現在のウエスタンデジタル)日本法人の代表取締役社長も歴任されたのである。そしてかつての半導体王国ニッポンの起死回生を狙う、というラピダスが設立されるとともに、その最高責任者に就いた。小池氏は熱弁をふるって、次のように観衆に呼びかけたのだ。

 「ラピダスの北海道千歳の新工場はかつてない壮大なスケールとなる。第一工場と第二工場に分かれるが、設計と前工程、後工程が融合する全く新しいファンドリーモデルをこの日本で立ち上げていくのだ。この壮大な夢にかけていきたい。そしてニッポン半導体で生き抜く人たちとともに、これからも多くの夢を共有していきたい」


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 取締役 会長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』(以上、東洋経済新報社)、『伝説 ソニーの半導体』、『日本半導体産業 激動の21年史 2000年~2021年』、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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