今年もまたJPCA Show(東京ビッグサイト)の基調講演をやらせていただいた。満席満杯の盛況であったのだ。この展示会は最近になって「半導体産業展」「光電融合デバイス特集」「AIデバイス特集」などの新企画が盛りだくさんであり、半導体から実装基板、さらには電子機器までのトータルソリューションを追究するコンセプトとなっている。これがウケて、ブース数、動員数ともに前年を大きく上回ったようだ。
筆者に続いての講演は、キオクシア岩手の柴山耕一郎社長であった。NANDフラッシュメモリーの量産で知られるキオクシア(東芝グループ)は、今や株式市場で大騒ぎとなっている銘柄なのだ。株式時価総額は50兆円を優に超えており、国内企業で時価総額トップに浮上している。
そのキオクシアの一大量産拠点がキオクシア岩手(北上市)であり、柴山社長の講演は実に面白かった。キオクシアは1987年に世界初のNANDフラッシュメモリーを開発しており、2007年にはこれまた世界初の3次元NANDフラッシュメモリーを登場させており、その技術力には定評がある。スマホの3台に1台はキオクシアのメモリーが使われている。今後は、生成AIを動かすデータセンター向けに多くの製品群を取り揃えていく。
「AIチップの王者であるエヌビディアからは、非常に厳しいリクエストが来ている。今後は、SSDをGPUの拡張メモリー階層として再定義することが望まれている。推論のところのスピードアップを図りたいのだ。いわば、GPUの横にフラッシュメモリーを置いてしまう、これにキオクシアはきっちりと対応していく」(柴山社長)
そしてまた、柴山社長は東北における半導体産業の進展を推進すべく、キオクシアは全面的に協力していくともいうのだ。24年に設立された東北半導体エレクトロニクスデザインコンソーシアムは、今や170社・団体が集結しており、日本政府は九州シリコンアイランドの次は東北シリコンコリドーと考えているようだ。東北エリアには、半導体関連の企業が460社を超えており、この人材を育て、産業集積していくことについてもキオクシアは全面協力するという。
「人はうまくいっている時は決して成長しません。人は艱難辛苦を乗り越える時に成長する。少し逆説的かもしれないが、落ちていく時がチャンスなのです!キオクシアは非常に厳しい道を歩いてきたが、苦しい時にこそ高い志をもつことが重要と考えていた」(柴山社長)
今や国内外の注目を集めるキオクシアの大活躍ぶりであるが、苦しい時にどれだけ耐えたかが問われ、そしてその中でも世界一を目指すという柴山氏の言葉はまことにもって示唆に富んでいる。
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泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 取締役 会長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』(以上、東洋経済新報社)、『伝説 ソニーの半導体』、『日本半導体産業 激動の21年史 2000年~2021年』、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。