公益財団法人いわて産業振興センターが運営する「いわて半導体関連人材育成施設」(I-SPARK、岩手県北上市)は、次世代のエンジニア育成拠点として作られ、実にユニークな活動を続けている。
「岩手県は東北のなかでも半導体関係企業が多く集積する地として知られている。北上市とその近隣市には大手のメモリーメーカーであるキオクシア岩手、そしてデンソー岩手、ジャパンセミコンダクターなどがあり、アクティブな活動を続けている。大谷翔平さんの出身地である奥州市には、東京エレクトロンテクノロジーソリューションズがあり、活発な生産を行っている」
こう語るのは岩手県商工労働観光部にあって、半導体産業振興担当の任にある下村久也氏である。下村氏によれば、岩手県下には半導体関連企業が155社あり、遠くは大分県、首都圏では東京都や神奈川県などから進出している企業があるという。
さて、人材育成を掲げるI-SPARKは2025年4月に開設。産学官が連携して運営する日本唯一の実践的な半導体人材施設となっており、最先端の半導体製造装置、産業用ロボットを用いてエンジニアの育成を行っている。外国を含む岩手県以外の人たちも受け入れており、インド人もI-SPARKで学んでいるという。
「I-SPARKを支えるパートナー企業としては、キオクシア、デンソー岩手、東京エレクトロン、アプライドマテリアルズ、サンディスク、ラムリサーチ、ジャパンセミコンダクターなどがいます。素晴らしいメンバーに参加していただいており、学ぶ人たちにも活気があります」
こう語るのは、公益財団法人いわて産業振興センターにあって施設長の任にある関照絵氏である。関氏によれば、協賛企業は随時募集中であり、パートナー企業は年間1口50万円、サポーター企業は年間1口10万円。低価格であるため、サポーター企業はアムコー・テクノロジー・ジャパン、TOWA、アルバック、ジャパンマテリアルなど41社にも及んでいる。
半導体設備の保守・メンテナンスを行う人たちのカリキュラムとしては、初級コースA・B・Cを用意している。コースAについては、25年度の受講者が34人。コースBは15人、コースCは19人であった。
「受講するだけではなく、施設の見学も受け付けています。また、地元の小中学生に対しては『半導体とは何か』という基礎的な研修を行っています。高専、大学の人たちの施設見学も増えています」(関氏)
つまりは、若年層に対して半導体に関する興味を喚起し、大学・高専などの教育を通じて次世代の若き人材を育成するという作戦である。そしてメーンとなる半導体製造装置のエンジニア育成については、実機を使っての教育を行うというスタイルだ。
I-SPARKには半導体製造装置が3台あり、東京エレクトロンのエッチング装置が2台設置されている。エッチングとは、リソグラフィーによって転写された回路パターンをマスクして、薬品やイオンの化学反応を利用して、成膜を削り取る工程である。
また、アプライドマテリアルズの成膜装置も設置されている。成膜はCVD法によるものである。これらの装置を題材に装置メンテナンス技術について学ぶことができる。岩手県が開始したI-SPARKの人材育成は青森、秋田、山形、宮城、福島などにある半導体関連企業にも多くのインパクトを与えつつあり、「東北シリコンコリドー」の中核施設として今後多くの期待を集めていくだろう。
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泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 執行役会長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』(以上、東洋経済新報社)、『伝説 ソニーの半導体』、『日本半導体産業 激動の21年史 2000年~2021年』、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。