電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第534回

日研トータルソーシングは「人材会社が描く半導体人材」の内覧会開催


熊本テクノセンターでハイブリッド内覧会を実行し、設備学習を見せた

2023/6/9

新装された熊本テクノセンターではまさに実戦さながらの研修が実行されている
新装された熊本テクノセンターではまさに
実戦さながらの研修が実行されている
 日研トータルソーシング(本社=東京都大田区西蒲田)は、1981年4月に設立された人材カンパニーである。同社の最大の特徴は技術をしっかりと持つ人材育成に徹底注力していることなのだ。2023年5月25日に新たに移転改装し、学習のための設備陣容のバージョンアップを図った熊本テクノセンターにおいて、ライブおよびwebによるハイブリッド内覧会を開催した。

 「日研トータルは年間1000人の新卒採用を進めている。また年間1万人の中途採用にも注力している。弊社の最大の武器は全国に40カ所の研修施設を持つことだ。このうち熊本、北上、四日市、仙台、東広島には半導体専門の研修施設がラインアップされている。重要なことはプロセス開発や設備保全のカリキュラムを徹底的に学習することにあると考えている」

 こう語るのは日研トータルソーシングにあって、常務取締役の任にある小嶋香月氏である。小嶋氏によれば、同社の教育センター9カ所は認定職業訓練校に指定されており、半導体関連については同社における研修を終えた後に日本半導体製造装置協会(SEAJ)の最終研修を受けることでハイレベルの機械系エンジニア、電気系エンジニアを育て上げることができるという。

 最近ではVRを利用した安全教育、ジオラマによるプラント設備全般の理解なども行っている。また共通教育、機械系研修、電気系研修などを31日間で行い、その後オプション研修などを行うというコースが一般的だとしている。半導体設備などは定期的なメンテナンスがどうしても必要であり、これに関する研修にも力を入れている。また物流やロボットなどの知識もどこかで必要になってくる。

 テクノセンターで研修を受講した人材は、保全事業部、ロボティクス事業部、フィールドサービス事業部などに配属される。一方、技術系のバージョンとしてはエンジニア事業部、IT事業部、R&D事業部、コンストラクション事業部などがある。

 半導体業界の例でいえば、ウエハー加工前工程(DIFF、CVD、II、LITHO、DRY、PVD、WET、CMP、プローブ検査)、ウエハー加工後工程(ダイシング、マウンティング、ワイヤーボンディング、モールド、トリム&フォーム、マーキング)、シリコンウエハー製造(インゴット引き上げ、スライス、鏡面研磨)などを一気に研修するのであるからして、ただことではないと言えよう。

 「構成部品の原理原則を理解することが最も大切なのである。設備は部品の集合体であるからして、ここを徹底的に学習しなければ、とりわけ半導体業界では通用しない。短い期間に凄まじい勢いで習得していくのが大変なことであるが、弊社に繋がる人たちはみんなよく頑張っている」

 こう語るのは、施設内覧で詳しく説明された熊本テクノセンター長の遠山敏浩氏である。ちなみに来賓のスピーチとして来られた九州経済産業局の情報政策課長である田口賀徳氏は、「2022年3月に九州半導体人材等育成コンソーシアムを立ち上げた。これは経産省の半導体強化の一環としてできた組織であり、人材カンパニーの方々にもひたすら協力を仰ぎたいと思っている」とコメントされた。

 また、熊本県商工労働部にあって半導体立地支援室長の任にある吉仲範恭氏は「熊本県は全庁横断組織を作り、半導体強化を強く打ち出している。新たに100haの工業団地を用意し、半導体企業様の誘致に総力をあげていく。そしてこの誘致のためにはやはり地元の人材育成が大切だ」とコメントしたのだ。

 確かに今や九州シリコンアイランドから北海道千歳のラピダス新工場に至るまで、まさにシリコン列島ニッポンという様相を呈しており、設備投資ラッシュの時代が到来している。しかして生産のすべての基礎はやはり人材にあるのだ、ということを強く認識した内覧会であった。こうしたアクションがニッポン半導体産業を復興させることに大きく貢献するのは、確かなことであるとは言えるだろう。


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 取締役 会長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』(以上、東洋経済新報社)、『伝説 ソニーの半導体』、『日本半導体産業 激動の21年史 2000年~2021年』、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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