(株)図書館流通センター(東京都文京区)は、公共図書館、学校図書館、専門図書館など全国の図書館を対象顧客とし、書誌情報データベースのTRC MARC作成や、図書館の受託運営をメーンに事業を行っている。4月にはイオンモール富津(千葉県富津市)に「富津市立図書館」をオープンするなど、商業施設への進出も盛んだ。同社関東支社支社長の瀬戸英輔氏に話を聞いた。
―― 受託運営事業の内容から。
瀬戸 図書館の運営を行うもので、1996年に「福岡市総合図書館」(福岡市早良区)で窓口業務を開始した。2003年の地方自治法の改正により指定管理者制度が社会教育施設に導入されて以降は「北九州市立門司図書館」(北九州市門司区)の指定者管理をはじめ、当社における重要業務として取り組んでいる。
当社の売り上げは現在、窓口業務委託や指定者管理者制度による図書館運営事業が最も大きい。元々は以前から行っていた図書館への図書納入業務が大きな割合を占めていたが逆転し、事業規模では約半分を占めている。
―― 多岐にわたる場所で図書館を運営していますね。
瀬戸 ショッピングセンターなどの商業施設や、駅前再開発で建設された複合施設など図書館を設置する場所は多様化している。商業施設では16年にイオンモールつがる柏(青森県つがる市)へ「つがる市立図書館」、17年にメルカ(岡山県玉野市)に「玉野市立図書館」、18年に中央林間東急スクエア(神奈川県大和市)に「大和市立中央林間図書館」、直近では22年にセンテラス天文館(鹿児島市)に「鹿児島市立天文館図書館」が2フロアにわたって設置された。
中でも、つがる市立図書館は当社として初めてイオンモール内へ設置した図書館だった。4月にイオンモール富津に開設した富津市立図書館はイオンモール内での2館目となる。
―― イオンモールつがる柏で蓄積したノウハウは。
瀬戸 モール内に出店している専門店や、イオンモールの施設側とのコラボ企画やイベントなどは開設当時から積極的に行っている。例えば図書館内のサイネージで地域の農家さんを支援するようなものも実施してきた。こうした経験は大きな財産であり、ノウハウだ。
―― 4月1日に富津市立図書館を開設しました。
瀬戸 富津市立図書館の面積は約1400m²で、イオンモール富津の3階にオープンした。収蔵能力は最大8万冊で、開設時には6万5000冊を用意した。富津市には市立図書館がなく、今回待望の図書館の開設ということで大きな期待を集めていた。
また、オープン前からペイントアート、本箱を作るワークショップや絵本の読み聞かせを行うなど、図書館を身近に感じてもらう取り組みを行った。
―― 今後の戦略について。
瀬戸 図書館の設置を決めるのは自治体だが、我々とともに過去様々な場所に図書館を設置してきた。ロケーションは商業施設や再開発ビルなどの複合施設などに加えて、閉店した商業施設の跡地に出店することもある。
以前の図書館は静かな場所に設置する郊外主義がメーンだったが、今は人々のライフスタイルが変わり、共働きの家庭も増えた。通勤で毎日駅を利用するので、図書館も駅に近い場所へ移転・新設するケースも見られる。
例えば、東京都世田谷区では図書館カウンターを二子玉川駅前や下北沢駅前などに設置し、そこで予約本の受け渡しと返却だけできるようにした。利用者も多く、利便性向上にもつながっているようだ。
―― 運営において注力しているところは。
瀬戸 レファレンスや選書などの図書館専門業務は専門性を追求したスタッフを配置し、その軸はぶれない。また、スタッフの育成や研修にも力を入れている。そこを第一に考えつつ、その後に地域や地元との連携や賑わい創出などをその都度考え、行うようにしている。
スタッフの研修は、ライブラリー・アカデミーという関連会社があって、そこでオンライン研修など当社独自のコンテンツを提供しており、当社が抱える約8000人のスタッフがいつでも研修を受けられるシステムを整えている。新人研修から始まって1年目・2年目研修、責任者研修、館長候補研修、館長研修などきめ細やかな研修を積み上げていけるようにしている。これは当社独自のものであり強みと言える。
―― 今後の抱負を。
瀬戸 イオンモール富津にオープンした富津市立図書館でも、本の貸し出しだけにとどまらず、積極的にイベントや作家の講演会などを行い、イオンモール全体の集客に貢献したい。また、ロケーションを問わず自治体などから要請があれば積極的な事業展開・図書館設置を行い、図書館を身近に感じてもらえるようにしたい。
(聞き手・副編集長 若山智令)
商業施設新聞2495号(2023年5月16日)(7面)
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