商業施設新聞
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No.904

冷食革命が到来


岡田光

2023/5/9

 昨年秋、本紙で冷凍食品を保管する業務用冷凍庫を特集する企画に参加した。冷凍食品は我が家でも欠かせない存在で、昔は私が冷凍チャーハンを購入し、休日の昼間に勢いよく鍋を振るっていた。最近は幼稚園に通い始めた息子のために、妻が味の素冷凍食品のポテトスナック「アンパンマンポテト」を頻繁に購入しており、食卓や弁当のおかずによく使用している。焼き芋も含め、ポテト好きな息子にとっては大好物の一品であり、私が「アンパンマンポテト少しちょうだい」とおねだりすると、「あかん」と関西弁で一蹴される。

 一般社団法人日本冷凍食品協会の調査によると、コロナ禍2年目の2021年における冷凍食品国内生産は、数量が前年比2.9%増の159万6214t、金額は同5.2%増の7371億円となり、いずれも前年実績を上回った。家庭用は数量が前年比3.6%増の79万8667t、金額も同5.2%増の3919億円と前年を上回り、調査開始以来、いずれも最高値を更新。大分類の品目別では水産物や調理食品が増加に転じ、小分類ではパン・パン生地、餃子、カツ、ミートボールが大きく増加したという。その一方で、うどん、パスタ、シチュー・スープ・ソースは前年を下回り、減少した。

「5.0°F」の店内風景
「5.0°F」の店内風景
 この調査結果からも分かるように、近年、家庭で冷凍食品を扱う機会が増えている。私の妻や周囲のママ友は専業主婦が多いが、3歳年上の実姉はスーパーマーケットで働いており、小学生以上の子どもを持つ家庭は共働き世帯が多い。例えパートタイムであっても、労働していることに変わりはなく、疲れて家に帰ってきて、一から料理しようと考える人は少ないだろう。また、洗濯物を取り込んでたたんだり、風呂を掃除したりと、料理だけに集中できないことも、冷凍食品に手が伸びる原因かもしれない。

 こうした家庭の事情を汲み取り、いち早く冷凍食品に目を付けたのが百貨店だ。関東では松屋銀座が冷凍食品売り場「ギンザ フローズン」を開業。約350種類を揃え、銀座で展開する名店の冷凍食品や、急速冷凍した鮮魚などをラインアップしている。関西では京阪百貨店が守口店に冷凍食品・キッチン用品売り場「5.0°F(ゴエフ)」をオープン。約200アイテムを揃え、併設のキッチンカウンターを活用し、新たなライフスタイルを提示している。百貨店のほかにも、スーパーマーケット、ドラッグストア、コンビニエンスストアなどが冷凍食品の販売を強化しており、8~9月には「久世福商店」などを展開するサンクゼールが、冷凍食品および輸入食品を取り扱うブランド「MeKEL(メケル)」の1号店を開店する予定だ。

 ただ、冷凍食品の扱いを増やす小売各社も、それを支える業務用冷凍庫を販売するメーカーも、頭を悩ませているのが電気代の高騰だ。冷凍食品はその名のとおり常温では保管できないので、小売りの売り場では業務用冷凍庫が欠かせない。しかし、その業務用冷凍庫を動かすためには電気が必要となる。最近はフロンを使用せず、地球温暖化係数が低いCO2冷媒を用いた業務用冷凍庫が増えつつあるが、電気代の高騰をカバーするほどのインパクトはないだろう。電気を生み出す自家発電と、多少の温度変化でも解凍しない冷凍技術をうまく組み合わせ、そのバランスを取ったものが、時代の寵児になるかもしれない。
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