商業施設新聞
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第371回

(株)ポータークラシック 代表取締役 吉田玲雄氏


店内で映画を感じる世界観を
銀座から世界へ発信力高める

2023/3/7

(株)ポータークラシック 代表取締役 吉田玲雄氏
 (株)ポータークラシック(東京都台東区)は2007年、「世界基準のスタンダード」をコンセプトとして銀座を拠点に立ち上げた。日本から世界へ文化や伝統を広め伝える独自のモノ作りは、世代を超え愛されている。22年12月には銀座本店のリニューアルが行われ、世界観を強めた発信力を強化していく。同社代表取締役の吉田玲雄氏に話を聞いた。

―― 事業概要から。
 吉田 15年ほど前に、父である吉田克幸と2人でポータークラシックを立ち上げた。モノ作りの原点に戻り、日本が誇る素材や職人たちを守りたい、広めていきたいと思っている。カバン以外に衣類、アクセサリー類なども制作し、世界に通じる感性、後世に残るモノづくりを心がけている。

―― 銀座本店のリニューアル経緯は。
 吉田 20年のコロナ禍において色々な商業施設が閉店するなか、店舗の役割を改めて考えさせられ、このタイミングだからこそ新たな表現がしたいと思った。その中で「映画のセットとポータークラシックが合わさったらどうなるか」と感じたのがきっかけで、当初は漠然としたアイデアだったが、世界で活躍する映画美術監督の種田陽平氏と出会い、依頼に至った。

―― コンセプトは。
 吉田 これまでの当社の歩みや想いを種田氏と話し合い、「船」という表現に辿り着いた。当社の大きなテーマとしている「旅」とも親和性が取れていると感じた。また、銀座は東京のクラシックを感じられ、今後の発展も期待できる。そんな銀座からポータークラシックを発信していく=船出するためにぴったりの表現であると思った。

―― 店作りのこだわりは。
映画のセットをイメージした新本店
映画のセットをイメージした新本店
 吉田 面積自体はリニューアル前と比べ約2倍となった。店内は映画のセットのような空間づくりとして、セクションに分かれている。入り口から左はミュージアムのようなエリアを設け、季節ごとに商品や配置が変わる。奥に船長の部屋があり、その横に当社の職人がモノ作りできるスペース、衣類の展示棚を配置した。中央には店のシンボルとなるマストヤードが目を引く。丸窓を模した絵は、旅の到着地をイメージしたハワイを描いた。また、休憩スペースは船員たちのシネマラウンジをイメージし、レジはフランスのバーカウンター風になっている。こうすることで1つの店内で様々なストーリーを体験し、様々な旅を一つの空間で感じることができる。
 お客様の頭の中で物語が作られていく空間となり、リアルと架空の境目を感じずに楽しんでもらえたら嬉しい。

―― 足元の状況は。
 吉田 コロナ前より売り上げは伸び、目標値を優に超えている。コロナ禍でも売り上げを伸ばし、業界としても珍しい成長の仕方だ。1日数千人が来店するわけではないので、お客様一人ひとりに丁重に接し、訪れた人すべてがハッピーになって帰ってもらいたいと思っている。だからこそ長くファンでいてくれるお客様が多く、情勢に左右されずに成長できたと思う。
 来店層としては男性が多いが、夫婦や親子での来店も増えている。商品はジェンダーレスや世代を超えて使えるものが多いので、今後の利用層拡大にもつなげたい。広告などを積極的に発信したりしないのは、当社のストーリーを含めて好きでいてくれるお客様が広告塔となってくれているからだ。

―― 様々なブランドがありますが他社との違いは。
 吉田 マイペースにモノ作りと向き合っている。中でも「上質にこだわる」ことと「メイドインジャパン」であることは大きな特徴だ。ただこだわるだけでなく、いくら良い商品を作っても届かないと意味がない。その点、当社の販売員は商品を誰よりも愛し、ストーリーを理解し、良さを伝えてくれる。「作る表現」と「売る表現」のどちらもバランスが取れているのが当社の強みだと思っている。

―― 新本店に期待することは。
 吉田 銀座の新しい名所として仲間入りできれば嬉しい。流行を追わない独自のモノづくりで、銀座からポータークラシックを表現したい。なにより良い商品を作り続けることを大切にしお客様の心を動かす場所でありたい。
 日本のものづくりは作り手の感性次第で伸びていくと期待している。店は良い商品を最適な形で提供し、顧客満足度を大事にする場所であることが理想だ。

―― 今後の展望は。
 吉田 コピー&ペーストができないモノ作りや店作りを行っていく。そのためには、良い商品を作ることに加え、商品を魅力的に伝える場所として店を活かせるかが重要になる。
 出店は場所ではなく、当社の商品や表現と親和性の高い拠点を探したい。映画を映画館で観ると、観たこと自体が思い出になるように、店舗に来てもらうことが思い出の一つになる場所で展開したい。

(聞き手・鈴木さやか記者)
商業施設新聞2484号(2023年2月21日)(6面)
 ズームアップ!注目企業インタビュー

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