岡山市北区の問屋町(といやちょう)は、JR岡山駅から南西約3kmにあり、近年は若者に人気のお洒落スポットとして知られる。卸問屋の建物をリノベーションして、カフェ、アパレルなどが軒を連ね、その中核に2018年10月、複合商業施設「問屋町テラス」がオープンした。この問屋町テラスを開発・企画したのがベルデ企画(株)。地元岡山のデベロッパーとして、代表取締役の片岡雅人氏に話を伺った。
―― 開発の経緯から。
片岡 問屋町は、およそ50年前の土地区画整理事業によって、岡山駅前の繊維問屋などが移設して誕生した。中心部には繊維問屋などが定期的な展示会を開催するための象徴的な建物として、総合展示場「オレンジホール」があったが、老朽化で解体が決まった。所有者の共同組合岡山県卸センターが跡地の事業用定期借地利用者のコンペを実施し、当社は天満屋グループと共同で参加した。
かねて問屋町は独自性のある面白いエリアだと感じており、まちの魅力や情報を全国に発信できるポテンシャルもある。所有者や地元の方の要望である新たな賑わいづくりを目的に、事業コンセプトの“みんなで創るマチ”を目指し、複合商業施設を提案した。
―― 面白いエリアとは。
片岡 長屋風の卸倉庫など趣のある建物が並び、荷物の積み降ろしにも便利な広い道路のある開放的な街並みだ。路上駐車の規制も少なく、卸倉庫はリノベーションで多様な店舗が入居し、若いオーナーが個性あふれるショップを営むなど、日本ではあまり見られない光景だ。駅やバイパスなど交通の利便性が良く、広域アクセスにも優れる。容積率が400%と高い商業地域であることも後押しし、マンション開発が進んで居住人口が伸びている点も不動産収益性の魅力の一つだ。
―― 問屋町テラスの概要を詳しく。
片岡 敷地6970m²、延べ3424m²のオープンモールで、商業施設と住宅展示場が一体となっている。商業棟は2階建て延べ1613m²。飲食・食物販、ヘアサロン、保育園、クリニックなど13店を集積する。中央に芝生広場を配置し、これを囲むように9棟延べ1810m²の住宅展示場を設けた。商業棟の2階はテラスデッキを備え、住宅展示場の外観を眺めるのに丁度良い。設計・施工は(株)ティ・シー・シーが担当しており、四方から自由に出入りできる施設設計とし、特にイベント時の集客に効果を発揮している。
―― なぜ住宅展示場を導入したのか。
片岡 感度の高い若者が集まる問屋町の特徴を生かし、現在から将来に至るライフスタイルに注目した。商業×住宅=たのしさ×あこがれと位置づけ、“人生の幸せの1ページを彩るサードプレイス”として、あこがれを身近に感じてもらい、各ライフステージに応じたサービスを提供している。カフェデート、ジュエリーや住宅購入など、日常から特別なシーンの買い物や体験の場として利用していただいている。
―― リーシングや客層は。
片岡 店舗は地元の中小企業が中心だ。住宅展示場も大手メーカーに限らず、地元のハウスメーカーが出店できる枠を確保し、地元の安心感とこだわりがつまっている。問屋町に軒を連ねるショップとの回遊性も高く、問屋町全体の店舗業態の幅も広がっている。
客層は若者のほか、ニューファミリー層が来店し、さらにその祖父母世代も付随するなど、全世代を取り込めている。若者がデートスポットで立ち寄った際に住宅展示場を見たり、住宅展示場に訪れたお客様がまちの店舗に立ち寄ったりと、相乗効果も生まれている。地区を管理する協同組合岡山県卸センターとも協力し、駐車場の確保に力を入れており、“来店のしやすさ”も賑わいの増加に寄与している。
―― 最近の動向を。
片岡 密にならないオープンエアな空間や、大型SCのように一斉に規制がかからない店舗環境下が功を奏し、来場者数はコロナ前をおおむねキープしている。広場イベントの規制による集客減はあったが、今年の夏休みは親子連れなどを想定したイベントに期待している。
―― 将来に向けて。
片岡 最近は広域からの集客力も向上し、まちのブランド力が高くなる一方、賃貸価格の上昇や路駐マナーなど様々な課題も浮き彫りになってきた。これらの課題を地域と一体になって取り組み、問屋町の魅力を全国に発信していきたい。
(聞き手・今村香里記者)
商業施設新聞2455号(2022年7月26日)(1面)
デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.828