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50年来の悲願、加須病院が延べ2万3209m²・304床で6月1日開院


3次救急センター開設、ハイブリッド手術室で多様な心疾患に対応、ダビンチは泌尿器科から

2022/5/17

埼玉県済生会加須病院の外観
埼玉県済生会加須病院の外観
 埼玉県済生会栗橋病院(埼玉県久喜市小右衛門714-6、Tel.0480-52-3611)を移転する形で建設されていた「埼玉県済生会加須病院」(加須病院)が2月に竣工、同月末の引き渡しを経て、3月26日に落成式が行われた。加須病院は7階建て延べ2万3209m²で、診療科目は26科、許可病床数は329床(稼働病床304床)を備える。また、埼玉県内初の常駐型救急ワークステーションの院内設置、医療機器では「ダビンチ」の導入、救命救急センターの指定を目指した施設や設備の整備など、意欲的な取り組みも行っている。落成式に出席した加須市の大橋良一市長は「中核病院の誘致は加須市として50年来の課題であり、市長として私の最大の責務と位置づけ、市長就任以来、市民の命と健康を守るため、最重要課題として今日まで取り組んできた。ついにこの日を迎え、感無量だ」と述べ、同病院の完成を喜んだ。なお、開院は6月1日を予定している。

 加須病院の所在地は、埼玉県加須市上高柳1680で、東武伊勢崎線の加須駅から徒歩7分。加須駅南口から済生会通りをまっすぐ進むと病院がある。敷地は4万1380m²で加須市から無償貸与された。施設はS造り7階建て延べ2万3209m²、災害拠点病院として機能するため免震構造とした。指定病院は地域医療支援病院、災害拠点病院、臨床研修病院、第二種感染症指定医療機関を受けている。診療科目は内、呼内、消内、循内、小、外、呼外、心血外、脳外、救、リハなど全26科で、許可病床329床(稼働病床304床、感染症4床、救命救急センター20床、ICU8床、HCU20床含む)を有している。設計は(株)内藤建築事務所、施工は清水建設(株)が担当した。

落成式の様子
落成式の様子
テープカットの様子
テープカットの様子

埼玉県東部消防組合 救急ワークステーションを併設
埼玉県東部消防組合
救急ワークステーションを併設
 病院全体のデザインとしては、誰もが利用しやすいようユニバーサルデザインに基づいたものを採用したほか、外来や入院患者にも分かりやすい動線の確保、案内表示のサインも工夫した。廊下も広くとることで明るく、開放感がある印象だ。

 フロア構成は、1階に総合案内、救命救急、MRI室、CT室、血管造影室、内視鏡室、放射線、入退院支援、保育室、厨房に加え、県内初設置となる常駐型救急ワークステーション(運営は埼玉東部消防組合)、2階は各診療科の外来診療室、化学療法室、リハビリテーション室、健診センターなど、3階は集中治療室、手術室、透析室、管理室などで、4~6階を病棟(4階96床、5階95床、6階93床)とし、個室病床は58床を設け、個室化率は約20%。

4階の個室
4階の個室
4階の2人室
4階の2人室
ICUは全8床を設置
ICUは全8床を設置
HCUは全12床導入
HCUは全12床導入


◆三次救急医療を提供、救命救急C指定受ける

 加須病院は主な特徴として「三次救急医療の提供」を掲げている。救命救急センターの指定を受けるため、ICU8床、HCU12床の計20床の救急専用病床を設けた。また、救急専用のCT室、血管造影室の配置、手術部門と直結するエレベーターを設置するなど、救急医療を強化。病院内に配置した埼玉東部消防組合の救急ワークステーションとも緊密に連携していく。加えて、救急医療の最後の砦としての機能を果たすため、三次救急を実施する救命救急センターとして、3月22日の埼玉県救急医療部会において、新たに県内11カ所目の救命救急センターに指定された。加須病院の開院に伴う加須市と埼玉県済生会との包括的連携に関する協定書についても1月に締結した。

◆ハイブリッド手術室整備、ダビンチ導入へ

 また、より高度な医療を提供するため当初計画から、数カ所の設計変更を実施。例えば手術室は6室あるが、そのうち1室を先天性心疾患、虚血性心疾患、大動脈瘤、弁膜症、不整脈などの多様な心疾患に対し、患者にとって最も質の高い治療を提供するため、高性能なX線撮影装置と、手術寝台を備えたハイブリッド手術室を整備。これにより、手術時間の短縮や精度の向上などが期待でき、患者にやさしい低侵襲な治療を可能とする。また、低侵襲手術支援ロボットのダビンチを導入することとし、さらにダビンチをいつでも使用可能とするため、特別な設備を施した手術室を2室設けた。ダビンチは患部の周囲が狭いなど難易度の高い腹腔手術において正確な手術を可能とし、傷口が小さく、体にやさしく、早期に社会復帰が可能であるというメリットがある。同病院では6月1日の開院に合わせて導入し、地域住民の体にやさしく、質の高い医療を提供する。

ダビンチを導入する手術室
ダビンチを導入する手術室
透析室
透析室
1階に並ぶ検査室
1階に並ぶ検査室
広くとられた2階廊下
広くとられた2階廊下


  なお、ダビンチは泌尿器科(前立腺がん)より開始し、呼吸器・消化器外科へと手術領域を順次拡大させていく予定。

 (福)恩賜財団済生会の炭谷茂理事長は「栗橋病院は建物の老朽化に伴い、移転新築することとなった。栗橋病院は1989年7月に210床で開院、99年には新病棟を建築し、現在は329床を有する病院となった。今回移転新築した加須病院は、これまで栗橋病院が提供してきた医療を継承し、さらに発展させ6月に開院するが、加須病院は利根保健医療圏および圏央保健医療圏における拠点病院として、HCU、ICU、感染病床などを備えた304床を有し、急性期病院として地域住民に高度医療を提供する。また、新たに心臓血管外科の創設、低侵襲手術のロボット(ダビンチ)の導入計画もあり、地域住民により質の高い医療を提供していく」とコメント。

 (福)恩賜財団済生会 埼玉県済生会支部長の原澤茂氏は「6月1日の開院時には救急救命センターとして、大いに地域医療の救急に尽力していけると確信している。もちろん救急救命センターに加えて、高度な心臓血管手術やハイブリッド型手術室、ダビンチなどを用意し、地域医療の提供、高度な医療の提供は当然やっていけると期待している」と話した。
(副編集長 若山智令)

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