電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
新聞情報紙のご案内・ご購読 書籍のご案内・ご購入 セミナー/イベントのご案内 広告のご案内
第471回

京セラ(株) ロボティクス事業部 事業部長 森田隆三氏


ロボット関連の新規事業を加速
AI協働型を10月ごろ投入へ

2022/4/15

京セラ(株) ロボティクス事業部 事業部長 森田隆三氏
 京セラ(株)は、新規事業の1つとしてロボティクス関連の取り組みを進めている。ロボットの自律的な動作を実現する独自のAI技術を開発しており、そのAIを用いた協働ロボットシステムの市場投入に向けた取り組みを進めている。今回、ロボティクス事業部の事業部長である森田隆三氏に話を伺った。

―― ロボティクス事業の概要について。
 森田 近年、当社グループでは新規事業の創出に力を入れており、その1つとして2019年からロボティクス関連の取り組みを開始し、その成果として、20年10月に独自のAI技術を活用した協働ロボットシステムを開発した。ティーチング作業を極小化し、非常に簡易な操作でロボットに指示できることが特徴で、取り扱うものが刻々と変わる多品種少量生産や変種変量生産の現場でも柔軟に対応できる。

―― AI協働ロボットシステムの構成は。
ばら積みピッキングを行う京セラの協働ロボットシステム
ばら積みピッキングを行う
京セラの協働ロボットシステム
 森田 既存の協働ロボットのコントローラーと、当社のAIを搭載した産業用PCをEthernetで接続するとともに、当社のクラウドシステムとも接続するという構成だ。システムには、京セラドキュメントソリューションズ(株)の複合機の技術、京セラコミュニケーションシステム(株)(KCCS)のクラウド技術、KCCSのグループ企業である(株)RistのAI技術など、当社グループが持つ技術を総合的に活用している。協働ロボットにはテックマン・ロボット社(台湾・桃園市)の製品を用いている。

―― 技術的な特徴について。
 森田 核となるAIは、協働ロボットのコントローラー内で自律的にリアルタイム処理をする「エッジシステム」と、現場のデータをもとに学習する「クラウドシステム」で構成される。例えば、ピック&プレースの作業の場合、クラウドにあるライブラリーから対象物の情報をエッジに読み込ませ、「トレイAからトレイBへ移動させる」といった作業目的をタブレット上の直感的な動作によって指定するだけで、ロボットが経路上の障害物を検知し、最適な経路を自律的に生成して作業を行う。

―― そのほかの特徴については。
 森田 環境光変化に対するロバスト性が高く、照明条件が変わっても常に安定した物体認識が可能である。また、AIライブラリーを入れ替えるだけで、対象品種の段取り替えを完了できることも強みで、こういったライブラリーを活用したシステムが他のAIロボットシステムとの大きな違いとなる。用途としては、ピック&プレースのほか、マシンテンディングなどでも活用でき、当社グループの工場では、工業部品約400種のマシンテンディング作業をこのAI協働ロボットシステムで自動化することに成功した。

―― 市場投入の時期や今後の事業方針について。
 森田 10月ごろの市場投入を予定している。販売方法としては、パートナー企業などを通じて当社のAI協働ロボットシステムを提供し、その後、AIサービスをサブスクリプション型で提供するモデルを想定している。その市場投入に向けて、まずはライブラリーの拡充やコントローラーの性能向上などを図っていく。また、当事業部はメンバー約60人のほとんどがエンジニアであり、本格的な事業化に向けて販売やサポートに関する人員も強化していく。最初は製造業において、変種変量や少量多品種対応が求められる工程での提案を進めていき、中期的には製造業だけでなく、物流、農業、小売といった非製造業向けへの展開も検討していきたい。そういった新たなロボットアプリケーションやロボットユーザーを開拓していくために、ロボットメーカーをはじめ様々な方と連携していければと考えており、お客様がこれまでロボットの活用を諦めていた領域での自動化に貢献していきたいと思う。


(聞き手・副編集長 浮島哲志)
本紙2022年4月14日号9面 掲載

サイト内検索