商業施設新聞
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第324回

JR西日本SC開発(株) 事業企画部 次長 兼 カンパニー統括本部 事業戦略室 副室長 最上太郎氏


タイで日系テナントの進出支援
第1弾施設は23年末に開業

2022/3/29

JR西日本SC開発(株) 事業企画部 次長 兼 カンパニー統括本部 事業戦略室 副室長 最上太郎氏
 「ルクア大阪」や「天王寺ミオ」を運営するJR西日本SC開発(株)は、2021年10月に(株)ザ モール グループ(以下モールグループ、タイ・バンコク市)と包括業務提携契約を結び、海外展開の足がかりを掴んだ。強みであるテナントとの関係性やリーシング力を生かし、日系テナントの海外進出を支援するとともに、得られた知見やノウハウを国内のデベロッパー事業に還流する計画だ。タイでの取り組みについて、事業企画部 次長の最上太郎氏に話を聞いた。

―― 提携先にモールグループを選んだ理由を。
 最上 モールグループは百貨店の「エンポリアム」やショッピングセンターの「エムクォティエ」など、バンコク有数の商業施設・百貨店を運営する、タイ国内で2番目のデベロッパーである。当社はこれまで海外展開の機会をうかがっていたが、海外拠点もなく、現地の情報も十分に入手できないため、検討段階でとどまっていた。
 一方、モールグループはかねてタイに進出していない日系テナントが欲しいと考えていたこともあり、ルクア大阪や天王寺ミオに視察に訪れた。その視察で、ルクア大阪などの施設やリーシング力を高く評価していただいたことから、当社の強みである日系テナントとの関係性やリーシング力を生かす形での協業が始まった。

―― 提携の仕組みは。
 最上 モールグループの要望を踏まえ、現地の商業施設に出店する候補となる日系テナントを当社が見出し、そのテナントに係る情報や強みなどを紹介するという流れだ。現地施設への出店につなげることで、現地の商業開発に貢献するとともに、日系テナントの海外進出をお手伝いする。
 タイは東南アジアの中心地で、バンコクの人口は500万人を超える。ハード・ソフトの両面でお洒落なものを好む感度が高く、情熱も持ち合わせているため、日系テナントが一番力を発揮できるマーケットだと確信している。当社は現地に拠点がないので、資産を持つデベロッパーとしての参画は難しいが、コンサルティングであれば無理なくできると判断し、提携に至った。

―― 紹介する日系テナントの業種について。
 最上 ラーメン店やとんかつ店はすでに進出済みであるが、未進出の飲食チェーンは多い。モールグループからはこうした飲食だけでなく、ファッションや雑貨、食品などオールジャンルでご要望をいただいている。現在、モールグループはBTSプロンポン駅近くにおいて、約250億円を投じて延べ25万m²のSC「エムスフィア」を開発中であり、同施設に当社紹介の日系テナントが出店する予定だ。

―― エムスフィアの概要を。
 最上 買い物体験を新たに定義づけるような施設として開発を進めるSCだ。バンコクの街が経験したことのないファッション、ライフスタイル、エンターテインメントで構成され、中層階から下に商業ゾーンを設ける。上層階は米国有数のスポーツ・音楽企業であるAEGと提携し、最新鋭の音響設備を備えた6000人収容のコンサート施設「EmLive」が入る。商業ゾーンは5層を想定し、すでにリーシング活動を開始しており、23年12月の開業を目指す。当社としては感度の高い日系テナントを誘致したい。

―― 将来展望は。
 最上 モールグループとコンサルティング事業を進めることで、当社の収益に貢献することに加え、本業のデベロッパー事業の価値も高められると考えている。コンサルティング事業はタイだけでなく、アジア各国の商業施設において実施することを視野に入れており、並行して現地デベロッパーに対する情報収集も進め、新たなパートナー探しにつなげたい。海外だけでなく、国内も含めたコンサルティング事業を展開し、デベロッパー・テナント双方の実業のお役に立つことができればと考えている。
 そして、このコンサルティング事業を通じて得られた知見やノウハウを、国内のデベロッパー事業に還流し、テナントが当社グループの商業施設に出店する付加価値を高めていきたい。すでにJR西日本グループや当社グループの商業施設に出店していただいているテナントはもとより、出店者以外のテナントやグループ外のSC事業者と協業し、コンサルティング事業で得られた知見を基に、当社施設の運営レベルを磨き上げる。こうすることにより、SC業界全体の発展にも寄与したいと考えている。

(聞き手・副編集長 岡田光)
商業施設新聞2437号(2022年3月15日)(1面)

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