半導体テスター大手のアドバンテストは2020年度(21年3月期)に続いて、21年度も予想を大きく上回るかたちで事業が進捗している。半導体の高性能化に伴うテスト需要の拡大に加えて、半導体不足解消のための顧客企業の先行発注の動きを受けて、売上高・受注高・利益の各項目でいずれも過去最高を更新する見通しだ。22年も主力のテスターを中心に良好な事業環境が続くなか、吉田芳明社長に現況および今後の見通しについて伺った。
―― まずは、足元の業績動向から。
吉田 決算発表のとおり、第3四半期(10~12月)の受注高は前四半期比33%減の1363億円となった。もともと、第3四半期と第4四半期でそれぞれ1000億円、下期トータルで2000億円を見込んでいたが、大きく上ぶれている。第2四半期も当初は1000億円弱を見込んでいたが、結果的に2000億円を超える水準となり、予想を大きく上回った。
―― 受注急拡大の背景は。
吉田 微細化など半導体の性能向上に伴うテスト需要の拡大はもちろん、当社の生産リードタイムも非常に長くなっているため、これまで以上に顧客企業が先行発注を行うようになっていることも大きい。3カ月分程度前倒しで入っている印象だ。
―― 部材確保が課題です。
吉田 兎にも角にも部材調達が最大の経営課題だ。テスターの生産キャパそのものには余裕があるが、やはり部材の手配に苦労している。半導体テスターは周知のとおり、先端品から旧世代品まで様々な半導体を多用する。ただ、他の産業に比べると調達量が少ないため、アロケーション競争になるとどうしても分が悪くなってしまう。我々も半導体メーカーに直接交渉するなどしているが、第3四半期決算発表の場でも説明したとおり、「改善しているとはいえない」状況だ。
―― 半導体テスターの市場見通しについて。
吉田 22年(暦年)の半導体テスター市場のうち、SoCテスターは45億~50億ドル(前年実績41億ドル)、メモリーテスターは14億~15億ドル(同13億ドル)を見込んでおり、ともに増加する見通しだ。SoCはHPC(High Performance Computing)市場が牽引役となるほか、自動車・産業機器関連の伸び率も高くなりそうだ。シェアは前年から伸びて、21年は50%弱を確保できたと見ている。22年も得意とするHPC顧客の投資拡大で上昇が期待できそうだ。
―― 競合企業とテスター市場の見方に違いがあるようにも見受けられます。
吉田 これは顧客ミックスの違いによるものと考えている。当社はSoCテスターで幅広いHPC顧客を抱えている一方、競合企業はスマートフォン関連で大きな顧客を抱えており、22年はその投資の端境期にあたると考えている。
―― メモリーやディスプレードライバー(DDIC)向けの需要動向は。
吉田 メモリーは大幅に伸びるとは予測していないがい、縮むこともないだろう。中国顧客で投資計画の見直しが入り、21年度におけるメモリーテスターの売上計画を減額修正した。中国メモリーメーカーの存在感は以前よりも大きくなっており、当社に与える影響も少なくないが、投資計画がキャンセルになったわけではなく、来期中には業績寄与してくれるものだと理解している。DDICの引き合いは非常に波が激しく、読みづらい。ただ、自動車のパネル向けなど需要はかなり増えている。
―― 最後に中計の進捗や見直しの必要性について。
吉田 21年5月に、23年度を最終年度とする3カ年の第2期中期経営計画「MTP2」を発表した。3カ年平均の売上高目標として、3500億~3800億円を据えているが、1年目の21年度はこれを大きく上回るかたちで着地しそうだ。あくまでも3カ年平均ではあるが、22年度見通しによっては目標値の見直しを図ることを検討している。
(聞き手・編集長 稲葉雅巳)
本紙2022年3月3日号1面 掲載