商業施設新聞
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No.846

ガソリン価格と外出


松本顕介

2022/3/1

2月14日の週に1リットル166円の看板を見つけた
2月14日の週に1リットル166円の看板を見つけた
 昨年秋からガソリン価格が高騰しており、今なお高止まりしている。経産省が発表した2022年2月14日時点の価格は171.4円/リットルで、前週より0.2円値上がりしている。巷間いわれているのが、「コロナのワクチンが普及して、世界的に経済活動が再開し、原油の需要が高まった」というものらしいが、オミクロン株はなお猛威を振るっている。なお政府はガソリン価格が政策発動の基準である170円を超えたため、1月27日から1リットルあたり3.4円の政府補助金がガソリン元売り会社に支払われた。これは昨年11月に政府により閣議決定されたコロナ経済対策に基づくものだが焼け石に水的な気もする。原油先物価格はウクライナ情勢もあり、さらに不透明感が増している。まだまだ価格が下がることはなく、家計の財布を直撃し、「ステイホーム」を余儀なくされるのか。

 その一方で、EUの欧州委員会は温室効果ガスの大幅削減に向け、ハイブリッド車を含むガソリン車など内燃機関車の新車販売について2035年に終了する方針を打ち出した。中国も2035年までに新車販売のすべてをEV(電気自動車)などの新エネルギー車やハイブリッド車にする計画だ。米国は、カリフォルニア州が2035年までにガソリン車の新車販売を禁止したという。EV対応が遅いと指摘されていたトヨタ自動車も「2030年にB(バッテリー)EVをグローバル販売台数で30車種・350万台を目指す」と発表し、世間をあっと言わせた。世の中に、EVの流れが雪崩を打って押し寄せている。今のガソリン価格の高騰を「今に見ていろよ」と嘲笑うかのようだ。

 だが、ガソリン市場には以前から逆風が吹いている。なんといってもガソリンスタンドの数が急減しているのだ。まだ昭和が色濃く残る平成元年の1989年は全国に5万82857カ所あったのだが、2020年度は2万9005カ所と、もはや半分近くにまで減っている。当然この先、家の周辺の給油所も激減し、給油をするのに無駄にガソリンを使って給油所に行かねばならない時代が来るのだろうか。それともガソリンスタンドがさらに減り、不便さを感じる前に自身もEVに乗り換えているのだろうか。地方都市は日常の足として車は欠かせないもので、街の風景として地方都市の幹線道路にはチェーン店とガソリンスタンドが目に留まるが、今後はチェーンストアの大型駐車場に充電中のEV車がずらっと並び、ガソリンスタンドの姿が今よりずっと減るかもしれない。跡地は何になるのだろうか。

 だが、ガソリン車からのEVシフトについて、話はそう単純ではない状況だ。ECが進化し、出かける機会がより減少しそうだ。ECは今や生鮮にも広がり、ヒトは買い物に出かけなくとも、「ポチ」ればモノがやってくる(届けられる)時代に突入している。最近は生鮮品にもEC需要が高まっており、特に生鮮品のような日常必需品が向こうからやってくれば忙しい時にわざわざ行かないというスタイルは今後一層普及するだろう。

 さらに時代は進化する。買い物だけでなく公園に行ったり、商業施設でウインドウショッピングを楽しみたいから出かけるという行動も、メタバースなる現実世界と似た仮想世界によって大きく変わるかもしれない。デジタル化された街、公園、商業施設や店舗などが1つの仮想世界に出現するらしい。そうなると外出そのもの必要性が薄れてくることになる。出かけること自体が“ハレ”となるような特別な価値を持つ時代が来るのか。その時あのころはガソリン価格が高かったなあと2022年を思い出すだろう。
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