1月にオープンした(社医)厚生会 中部国際医療センター(岐阜県美濃加茂市健康のまち1-1、Tel.0574-66-1100)では、高度専門医療部門として、救急医療、循環器疾患、糖尿病、腎、関節再建、脊椎治療、脳卒中、リハビリテーション、治験・臨床試験管理の各センターを設置している。このほか、がん専門部門として、消化器がん、肺がん治療、前立腺がん、乳がん治療・乳房再建、頭頚部がん、皮膚がん、通院治療〈化学療法25床〉、がんゲノム診断・診療、陽子線がん治療の各センターを設置した。
◆ハイブリッド手術室を新導入、血管造影室4室
3階には、岐阜県中濃地区初となる新設のハイブリッド手術室1室を含む手術室11室、4室の血管造影室、ICU 10床を設置した。旧病院の手術室数は7室であった。
新規導入のハイブリッド手術室では、大動脈ステントグラフト留置術、ペースメーカー埋め込み術、大動脈弁狭窄症に対するTAVI(カテーテル治療)が可能となり、このほかICD(埋め込み型除細動器)、CRT(心臓再同期療法)などの手術が可能となった。ハイブリッド手術室には、GEヘルスケアの最新鋭機Discovery IGS 740モバイル血管造影システムを導入した。自走式のDiscovery IGS 740では、天吊り式の固定システムのレールによる制限の煩わしさから解放され、設置場所や室内配置をかつてない柔軟さで設計できるとしている。
また、内視鏡下手術支援ロボット「ダ・ヴィンチ」を最新機種のXiに更新した。前立腺がん、膀胱がん、腎がん、胃がん、直腸がん、鼠経ヘルニア根治術に用いる。3D画像、術野を最大約15倍に拡大、術者の手振れ補正などの特徴を備える。
◆内視鏡手術570件、3D内視鏡カメラを導入
旧病院では、20年度に年間約570件の外科用内視鏡手術を行った。泌尿器科はほぼ全例、消化器外科は7割、産婦人科は4割、耳鼻咽喉科は2割を占めている。新病院の腹腔鏡手術システムは、オリンパス製の3D内視鏡カメラを採用しており、3D映像により2D映像では難しかった対象臓器を立体的に捉え手術の精度向上と時間短縮を実現する。これにより、内視鏡下での手術件数が増加すると見ている。
◆東海地区トップクラスの冠動脈治療数
4室の血管造影室には、島津製作所Trinias unity editionなど最新鋭の血管造影装置を完備し、うち3室は循環器専用である。同病院では、東海地区トップクラスの冠動脈治療数を誇っており、これまで以上に、不整脈治療(カテーテルアブレーション)、下肢動脈形成術、脳血管疾患、肝臓がんの治療を幅広く行う。
手術部門では、それぞれの扉が閉まらないと、開閉できない仕様だ。いずれかの部屋の扉が開くと、他の扉にロックがかかり、空いた扉を閉じない限り次の扉が開かないようになっている。これにより手術室内の清浄度を保つことができ、人工股関節置換術をはじめとする人工物を留置する術式や、脊椎手術、脳血管外科手術などが可能となる。手術室は、クラス1000となっており、手術を行う医師やスタッフも宇宙服のような特殊な手術用の術衣を着用して、作業者からの落下菌を防ぎ、より高度な感染予防を行っている。
◆人工透析室は42床、うち2床は陰圧個室
腎センター(人工透析室)は、同時に42床(うち2床は陰圧個室)の透析治療が可能である。現在、外来患者約100人、入院患者約20人の透析治療を行っており、20年度の血液浄化の実績は1万6400件であった。全床血液透析ろ過(オンラインHDF)対応で、幅広い尿毒素の除去により、かゆみなど諸症状の改善効果や透析中の血圧安定に効果がある前希釈オンラインHDFが可能である。
行うことができる血液浄化治療は、潰瘍性大腸炎のGCAP(白血球除去療法)、家族性高コレステロール血症、難治性のネフローゼ症候群のLDLアフェレシス(血漿吸着療法)、重症の閉塞性動脈硬化症のレオカーナ(吸着型血液浄化療法)、難治性腹水症のCART(腹水濾過濃縮再静注法)などである。
◆細菌検査を新規に開始、高気圧酸素治療2台
検査部門では、日本BDのMALDI Biotyper siriusを導入し、新たに細菌検査も開始した。
また、高気圧酸素治療装置は2台導入した。東海地方ではトップクラスの治療件数を誇り、年間約2000件の治療を行っている。海のない岐阜県では、潜水病の治療用途はほとんどないといっていいが、突発性難聴の治療を多く行っている。
◆2000台の医療機器をバーコードで保守管理
院内には約2000台の医療機器が使用されている。医療機器管理室では、医療機器が常に最良の状態で使用できるよう臨床工学技士によって点検機器やシミュレーターを用いて点検・校正を行っており、また、保守管理システム(MARIS V4)を用いて1台1台バーコードにより管理している。
◆旧病院は中部脳リハビリテーション病院で再開
なお、中部国際医療センターオープン後の旧木沢記念病院は、(社医)中部脳リハビリテーション病院(美濃加茂市古井町下古井590、Tel.0574-66-5800)として、再スタートした。病床100床を備え、慢性期の脳機能障害を改善し、患者の社会復帰を支援する専門性の高い病院として、脳卒中、外傷性脳損傷などの脳疾患の後遺症を抱える患者のリハビリテーションをはじめ、高度な画像機器を使った検査により、認知症の早期発見に取り組む。敷地面積は1万6400m²、建物延べ床面積は2万9962m²で、空いているフロアについては、福祉施設などに活用することを検討している。
同病院では、(独)自動車事故対策機構中部療護センター(50床)も併設。交通事故により脳が損傷し、意識不明となった重度後遺障害者の社会復帰の可能性を追求しながら、適切な治療と看護を行っている。PETやMRIなどを備えている。
(この稿終わり)
(編集長 倉知良次)