商業施設新聞
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No.841

リモートワークで問われる働く場所


北田啓貴

2022/1/25

 2022年は新型コロナ禍が私たちの働き方にどのような変化を与えるのだろうか。筆者の肌感覚でいえば、コロナが拡大し始めた20年はリモートワークを軸とした働き方が急速に進み、年間を通じて出社する人々も少ない印象だった。テレビの情報番組でも、在宅でも働きやすい環境をつくるための工夫などが紹介されているのをよく目にした。21年に入ると、コロナの変異株の影響で新規感染者数が急増、同年8月には国内の新規感染者数が2万人台まで拡大するなど、感染症の問題が20年に比べて深刻化していった。一方で、働き方についてはリモートワークが定着した中、大手企業でも円滑なコミュニケーションを図れるように、従業員に対し週3~4回の出社要請を行うなど2つの働き方をハイブリッド化することで、生産性の向上を図ろうとしている。そして21年秋時点では、1日あたりの新規感染者数が減少し、ワクチンの接種も進んだことで通勤時もコロナ禍前のような賑わいを取り戻しつつあった。

 では、アフターコロナを見据えたこれからの働き方に求められるのは何か。それは出社とリモートワークをハイブリッドしつつ、さらに生産性を向上することだ。そのうえで重要な要素のひとつは、リモートワークにおける、より働きやすい環境づくりである。これまではリモートワークといえば、感染症拡大防止の観点からも不特定多数の人とあまり交わらない在宅勤務が基本だった。ただ、リモートワークに関する様々な調査結果をみると、個々の家庭環境や仕事のモチベーションを上げるうえで、自宅が働く場所として必ずしも適切とは言えないようだ。

ワークスペースを完備した東生駒駅1階の「住まいの情報ステーション『SMART SPOT』」
ワークスペースを完備した東生駒駅1階の「住まいの情報ステーション『SMART SPOT』」
 そのうえで働く場所について、住宅街などがある郊外の商業施設や駅の遊休地などを活用した開発が進みつつある。例えば21年11月に大阪府松原市でオープンした商業施設「セブンパーク天美」には、(株)セブン&アイ・クリエイトリンクが展開するカフェとコワーキングスペースを融合した「COTOLIBA」をオープンした。半個室のワークスペースや会議ができる個室も有料で利用することができ、自宅以外で働くリモートワークのスペースとして活用しやすい。また、近鉄不動産(株)は21年12月、大阪市にある「近鉄難波ビル」と奈良県生駒市にある近鉄難波線・奈良線東生駒駅1階の2カ所に「住まいの情報ステーション『SMART SPOT』」を開設した。このうち、東生駒駅の施設については喫茶店を改装した広々とした店舗で、ワークスペース3席とビデオ会議にも使用できるプライベートボックスを導入している。駅近で住宅街もあることからタッチパネルを用いて、住まいに関する情報や相談以外での利用者の集客が期待されている。

 ここ最近は、新たな変異株による感染拡大の影響で、在宅によるリモートワークが求められるだろう。しかし、新規感染者数の増加が落ち着けば、働き方だけではなく、働く場所を見直してみてもよいのかもしれない。
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