商業施設新聞
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第312回

(株)パルコ 浦和店 店長 小林昭夫氏


グランドフロアを大規模改装
都心と郊外のハイブリッドに

2021/12/28

(株)パルコ 浦和店 店長 小林昭夫氏
 さいたま市のJR浦和駅前にある「浦和PARCO」は2021年秋、グランドフロアの大規模リニューアルを行った。これまで浦和エリアに足りなかった専門店や機能を新たに導入し、顧客層の幅を広げるほか、施設の利便性を向上させるなどより使いやすく、ニーズを捉えたショッピングセンター(SC)へ進化した。(株)パルコ 浦和店 店長の小林昭夫氏に話を聞いた。

―― 業績の推移から。
 小林 当施設は2007年のオープンで、22年に開業15周年を迎える。そのような中で、直近3年で見ると19年度(20年2月期)に売上高271億円、動員客数1148万人と過去最高の数字を記録した。一方、20年度(21年2月期)は、新型コロナの影響で休業要請などがあったが、6月以降においては19年度とほぼ同等の業績となった。そして、21年度(22年2月期)9月以降は少しずつ消費モードの回復が見られ、20年度とほぼ同じような成長曲線、同程度の業績の推移となっている。

―― コロナによって消費行動に変化は見られるか。
 小林 “ステイホーム”の浸透により“家にとどまる”ということが増えた結果、人々のライフスタイルが変わり、新しい消費や都市型の消費がこの街に創出されたと思う。
 巣ごもり需要による「食」を中心とした専門店が好調に推移したこと、ステイホームによって大型店を中心としたインテリア専門店などが堅調だったことなどは顕著な例だろう。
 また、都市型の消費として、例えばレディスファッションは売り上げを堅調に伸ばした。これまで都市部で消費してきたものを、ステイホームにより地元・足元商圏で消費するようになったという行動変化が直近の業績にも寄与している。

―― 今回の大規模改装について。
 小林 商業施設の顔である1、2階のグランドフロアのリニューアルとして過去最大規模となる28区画約3300m²を対象に新店12店の導入、16店の改装を行った。この街に住む新しい3世代の人々にアジャストしていくことを目指したほか、浦和および周辺は人口増が目立つエリアであることから、この街の役割が変化する中、それに合わせて進化させた。
 今回、グランドフロアに都市部で活躍する専門店の誘致を行い、近年多く来店される20~30代のミレニアル世代の夫婦・ファミリー層といった新たな顧客層にも応える環境を整えた。価格訴求型よりも都市型の成熟したMDを揃えたことにより都心型、郊外型の良いところをハイブリッドしたPARCOとなった。
 例えば、ファッションでは「BEAUTY&YOUTH UNITED ARROWS LIMITED STORE URAWA」、ベイクルーズは3ブランド複合の新業態などセレクトショップなどを新たに導入した。また、既存店で堅調だった「URBAN RESEARCH DOORS」はMDを追加し移転増床、「PLST」も増床した。いずれもリニューアル後、順調に推移している。
 また、特にナチュラル・オーガニック系コスメ専門店は浦和エリアに足りなかったので「Cosme Kitchen」「SABON」などをシンボリックな形で導入し、過不足なくお客様に提案できる環境を整えた。さらに、増床した「nana's green tea」は、ベビーカーや小さい子ども連れのお客様が増えたことを受け、小上がりスペースを設置し、外にはベビーカー置き場も設けた。こうした取り組みもシンボリックなものとして挙げられる。
 コロナ禍において、各専門店とも出店は慎重な考えを持っている。そのような中でも我々のプランニングや、浦和というマーケットの可能性に共感し、出店していただいたことは非常に大きなことで、感謝を申し上げたい。

―― 浦和PARCOの強みは。
大規模リニューアルを行った浦和PARCO
大規模リニューアルを行った浦和PARCO
 小林 目新しさという視点から、ポップアップ企画を大事にしている。1階には1区画あたり3~5坪・計5カ所のポップアップスペースを設置しており、20年は売り上げ約2億2000万円、年間で122の企画を行った。この開催数は他の商業施設と比べても多いと思うし、PARCOの中でも数としては非常に多く開催している。目新しさを提供し、飽きさせない工夫だ。
 浦和エリアは今後も人口増が見込まれ、住む人が変われば当然ニーズも変わってくる。こうした需要に素早く対応するとともに、今後も新型コロナによって与えられた影響をよく見て、施設の運営を行っていく。


(聞き手・副編集長 若山智令)
商業施設新聞2425号(2021年12月14日)(2面)

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