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伯鳳会東京曳舟病院、救急災害医療用Medical-ConneX導入


CT・USと生化学・免疫装置を同時搭載のシーメンス移動型医療ソリューション

2021/12/14

 (医)伯鳳会(兵庫県赤穂市惣門町52-6 赤穂中央病院、Tel.0791-45-1111)グループは、新しいモビリティ・ソリューション「Medical-ConneX(メディカル・コネクス)」を完成し、東京曳舟病院(東京都墨田区東向島2-27-1、Tel.03-5655-1120、診療21科目、病床数200床)に導入することを、製造元のシーメンスヘルスケアと共同記者会見して発表した。Medical-ConneXは、世界で初めてCT、US(超音波)、生化学・免疫装置を同時搭載した移動型医療ソリューションで、災害医療に加え、新型コロナウイルス対策医療でも活用が期待されている。伯鳳会グループとシーメンスヘルスケアが2017年に締結した、高度な救急災害医療の提供を目的としたパートナーシップ契約に基づいて開発した。

 伯鳳会グループ理事長の古城資久氏は「過去の災害救援活動の経験から、被災地での医療機能が損なわれた場合、被災地域外への患者搬送が困難、また域外搬送が可能な場合でも治療の優先順位選定への苦慮などにより救命が困難な事例が想定されている。ただし、医療機能が損なわれた被災地であっても、一定の画像診断、生化学検査を行えれば救命率が上がると考える。そこで今回のCT、US、生化学検査装置を備えたトレーラートラック型診療所およびその電源車の導入を企図し、シーメンスと検討を開始した。この車両が全国の要所に整備されれば、特に山間部、へき地の被災現場では大きな力になると考える。10台程度が備われば日本全土を網羅できる」と説明した。

 東京曳舟病院院長の山本保博氏は「Medical-ConneXは、諸外国の病院船とは異なり、島嶼などでも港があればどこへでもフェリーで運び、駆けつけることができる。災害現場での医療管理は、将来的にはMedical-ConneXを用いて対応するのが最善と考える。このシステムは、疾病再発から急性期外科内科疾患を中心とした対応が考えられる。災害発生から1週間~1カ月の間は救急対応、外傷・外科疾患、内科疾患、慢性疾患に対応し、さらに数カ月~数年間はリハビリテーション、復旧・復興に携わることができる」と話す。また、新型コロナ感染症の猛威とアフターコロナの準備について「今後はコロナ専用病院の新設のほか、『Homespital』を考えなければいけない。Homespitalとは、ホーム(Home)とホスピタル(Hospital)から考えた造語で、自宅と病院の中間的な施設機能を持ち、新型コロナ感染症の軽症と中等症の中間的な臨床患者をこの施設に収容する。後に患者が減少していなくなったら元の施設に、例えばホテルなどに戻すような病床施設である。ここでMedical-ConneXの果たす役割を期待できる」と述べた。

◆災害発生時に駆けつける病院・動く病院
検査用車両の外観
検査用車両の外観
 東京曳舟病院への納入は、検体検査と画像診断機器を搭載した検査用車両と、電源供給のみならずITシステムや物品保管庫を配した電源用車両の2台の構成となっている。Medical-ConneXは、地震・台風などの自然災害や事故・テロなどの人為的災害現場で、迅速かつ高精度な救命救急医療の一翼を担う。迅速な出動と運用を行うために、東京DMAT(Disaster Medical Assistance Team)をはじめとした災害派遣チームとともに定期的な訓練に参加し、災害発生時には多くの命を救うため被災地に「駆けつける病院」を目指す。

 Medical-ConneXは、患者とドクターが「つながる」こと、いつどこにいても質の高い医療に「つながる」ことをコンセプトに、シーメンスヘルスケアが国内で開発・設計した新しいモビリティ・ソリューション。自然災害やテロなど緊急性の高い救急災害の現場に医療を迅速に届けることに重点を置きながらも、新型コロナウイルスなどの感染症対策や健診、往診、巡回診療にも対応できるように、一般病院で使用するCT装置や検体検査装置、AIソフトウエアといった幅広い装置やシステムなどを大型車両に搭載したことで“動く病院”を実現している。災害時と平時での使い分けができるため費用対効果の向上にも貢献する。

◆AI画像解析ソフトで迅速適正な画像診断支援
検査用車両内部のCT装置
検査用車両内部のCT装置
 同システムは、救命救急における外傷初期診療のプライマリーサーベイ(優先度の調査)の必要項目に対して、その場で適切な検査を行える検体検査機器や画像診断機器を搭載している。検査用車両には、CT装置、免疫生化学分析装置、超音波装置を同時搭載し、車両拡幅機能によって効果的なワークスペースの確保が可能。電源用車両には、発電機、注射薬・医薬品のための冷蔵庫、試薬保存のための恒温器や管理薬物などの物品保管庫に加え、検査用車両で生成される画像データ、検体検査データ、ベッドサイドモニターのデータなどを一元管理する統合医療情報管理システムや、画像診断の専門医が不在の状況下でも、迅速で正確な画像診断をサポートするAI画像解析ソフトウエアを搭載することで適正な診断が行えるようにしている。検査用車両と電源用車両を独立させたことにより、様々なケースに柔軟に対応できる拡張性がある。さらに、車載された検査装置の安定的な動作や試薬の迅速な補充ができるように、室内の温湿度や車両位置をリアルタイムでモニタリングできるシステムを搭載し、医療現場の救命活動が滞らないようサービス体制にも万全を期している。

◆曳舟病院は東京都指定の災害拠点・二次救急
被災地の救護現場のイメージ
被災地の救護現場のイメージ
 導入した東京曳舟病院は、高度な救急医療を行う東京都指定の災害拠点病院で、加えて東京DMATの指定病院。東京DMATは、04年8月に日本で初めて設立され、震災などの自然災害や交通事故や爆発などの災害現場に派遣される医療チーム。同病院の前身は白髭橋病院で、17年4月に現在地へ移転し変名した。診療21科目、病床数200床、血液透析24床で、東京都指定二次救急医療機関、災害拠点病院として24時間365日の安心安全の医療体制に取り組んでいる。東武スカイツリーライン・曳舟駅に直結している立地からも、地域住民の健康維持・増進を支える体制を整えている。


(笹倉聖一記者)

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