（株）KOKUSAI ELECTRIC（東京都千代田区）は、日立国際電気の半導体製造装置部門が分離・独立して2018年6月に発足した半導体製造装置専業メーカーだ。独立以降、同社を取り巻く環境は大きく変わり、5GやIoT、DX（デジタルトランスフォーメーション）に伴う半導体需要の拡大を受けて、製造装置市場も大きく伸長した。一方で米アプライド　マテリアルズとの経営統合は、中国当局からの承認が最後まで下りずに断念。新たな事業運営に向けた、準備を現在進めている。日立国際電気時代から事業を統括している金井史幸社長に足元の半導体投資動向、ならびにIPOを含む今後の経営方針について話を聞いた。

―― 足元の事業見通しから教えて下さい。
　金井　2021年度（22年3月期）売上高は、期初時点で前年度比1桁台のプラス成長を見込んでいたが、韓国および台湾の大手半導体メーカーの積極投資に加え、中国地場企業の投資も予想以上に伸びたため、業績予想をすでに2回修正しており、現在は前年度比3割以上の増収を見込んでいる。もう一段伸びる余地はあるものの、第4四半期（22年1～3月）の状況がもう少しクリアになってくる必要がある。

―― 具体的な上ぶれ要因は。
　金井　もともと22年に予定していたが21年中に前倒しされた案件がいくつかあり、これが業績拡大に大きく影響している。アプリケーション別でみると、ファンドリーとDRAMが予想を上回るペースで投資が進んでいる印象だ。

―― 一方で22年市場を不安視する向きもあります。
　金井　主要顧客が投資を前倒ししている分、若干踊り場を迎える可能性もあるが、中長期的にみても半導体製造装置市場が今後も高い成長を遂げていく見方に変わりはない。我々もそうした中長期の視点に立って事業体制を強化している。

―― 部材調達や装置の生産体制も重要な要素となりそうです。
　金井　21年のWFE（Wafer Fab Equipment）市場は800億ドルを上回り、そう遠くないタイミングで1000億ドルも射程圏内に入ってくる。そういった状況を見据えながら、事業体制を構築していく。
　部材調達でいえば、かなりタイトな状況に変わりはないが、一部特殊品を除けば年度内の調達に支障をきたすことはないだろう。17～18年当時にボトルネックとなった石英に関しても、マルチベンダー化を進めており、安定調達ができている。ただ、長期的な視点に立てば、今後足りなくなることは明白で、サプライヤー企業にも対しても長期フォーキャストの開示などを通じて方向性を共有し、しっかりとバックアップしていければと考えている。

―― 生産体制は。
　金井　主力の富山事業所、ならびに韓国の天安工場はフル操業が続いている。天安工場については、建屋の一部を改修して生産フロアを拡張し、従来に比べて月10台程度多く装置が生産ができるようにする。富山事業所は16年末に新棟が竣工しているが、25年度までの中期経営計画策定にあたって、新たな工場建屋を建設する必要性を感じており、現在基礎的な検討を進めているところだ。なるべく早いタイミングで決断したい。

―― 最近の事業進捗は。
　金井　当社は縦型炉をベースとした成膜技術に強みがあり、近年ではALD領域に独自の成膜技術である「BCD（Balance Controlled Deposition）」を提案し、大きな成果を得てきた。優れた段差被覆性を備え、3D化に伴い成膜時間が伸び、枚葉装置では生産性の問題が出る工程が増えてきている。ここに対して、バッチ式であっても良質な成膜を行えるということが顧客からの評価につながっている。また、今後は成膜装置に続く柱として、トリートメント装置の拡大に期待している。膜質性能の改善・補修を目的とするもので、半導体プロセスの複雑化に伴い、今後需要が本格化すると期待している。

―― 最後にIPOを含む今後の事業運営の方向性について。
　金井　アプライド　マテリアルズ社との経営統合はなくなってしまったが、今後は先々いろんなかたちで協業する機会があればいいと思っている。また、プロセスマーケティングの手法など彼らから学ぶことも多く、今後の当社の事業運営にも活用していきたい。
　今後の事業運営の方向性としては、IPOを含め、色々な選択肢を継続して検討を進めているところだ。