(株)ニコン(東京都品川区)は、2026年5月に発表した中期経営計画において、半導体露光装置事業を企業価値最大化に向けた挑戦事業と位置づけ、経営リソースを積極的に投じていく姿勢を強調した。FPD露光装置を含む精機事業として、30年度(31年3月期)に売上高2900億円(26年度見通し1880億円)、営業利益330億円(同120億円)の達成を目指す。半導体装置事業部長の笠井紀昭氏に半導体露光装置の事業戦略を聞いた。
―― 4月に半導体装置事業部長に就かれました。
笠井 1996年入社で、一時的に顧客サポートの部門に携わった時期もあったが、キャリアのほとんどは半導体露光装置の開発部門に従事してきた。
―― 半導体露光装置の基本方針は。
笠井 液浸を含むArF露光装置を軸に事業を再構築していく。特にArFドライは中長期的にみても年間40~50台の安定的な市場規模が見込める。年によって若干上下するが、ArFドライ市場における当社シェアは20~30%を獲得できている。
―― ArFドライの主力アプリケーションと機種展開は。
笠井 当社でいえば、メモリーとロジック向けに強みを持っている。驚異的な利益を上げているメモリーメーカーではあるが、リソグラフィーのレイヤーコストに対する意識は以前と大きな違いはないと思っており、EUVを液浸に、液浸をドライに置き換えるニーズは根強い。当然、スループットに対する要求も強く、25年から受注を開始した「NSR-S333F」は従来機種に比べて、スループットを約30%改善している。滑り出しも上々で、26年5月に初号機の検収を終えたところで、他からの引き合いも強まっている。
―― 液浸の進捗は。
笠井 率直に言って25年度は非常に厳しかった。アップグレードはあったが、新規装置の販売につながらなかった。現在、液浸は一部顧客との技術コラボレーションを通じた販売・受注活動に力を入れており、これが実って1台の新規装置販売の契約を結んだ。ほかの顧客とも商談を進めている最中だ。液浸の新規装置を売っていける素地は徐々に整ってきたと思っており、きめ細やかさ、小回りの良さなどを競合との差別化要素として押し出していきたい。
また、以前からアナウンスしているとおり、28年には液浸の新機種投入も予定しており、これら施策を通じてまずは液浸市場でのシェア10%を獲得できればと考えている。
―― KrFは。
笠井 KrFは中古装置の販売が中心だが、新機種の「NSR-S215D」の投入を機に、既存装置の置き換えを進めていきたい。インストールベースで当社のKrF露光装置の設置台数はグローバルで多く、いわゆる「ニコンファブ」という工場がいくつもある。ここの置き換えを積極的に提案している。
―― ポストセールスに対する取り組みは。
笠井 顧客サポートはオンラインでも行えるようになってきているので、人員の最適化も考えながら質を高めていく。また、露光装置とアライメントステーションの「Litho Booster」を組み合わせた新しいサービスの開始も検討している。27年1月には計測精度を約35%、処理能力を約10%高めた「Litho Booster 1000」を投入予定だ。ウエハープロセスの多点アライメントに加え、今後はWafer to Waferボンディングなど先端パッケージ用途での拡大にも期待している。
―― 先端パッケージ向けにデジタル露光装置の投入も開始しています。
笠井 L/S=1.0μmの高解像度かつ600mm角の大型基板にも対応したデジタル露光装置「DSP-100」は、すでに製品開発向け装置として1台、量産向け装置として1台の計2台の受注を得ており、27年の出荷を予定する。顧客からデモ依頼も増えており、確かな手応えを感じている。また、1.5μmの解像力でありながら、スループットを向上させた新機種の開発も進めており、顧客ニーズに幅広く対応できればと思っている。
(聞き手・編集長 稲葉雅巳)
本紙2026年9月24日号17面 掲載