自らを変革し続け、独創的なモノづくりに挑み、水晶デバイス業界で「小型ならリバー」のポジションを確立したリバーエレテック(株)(山梨県韮崎市)。同社は今、超高周波対応で世界初となるKoT(Kerfed orthogonal plate waves for zero Temperature coefficient)カット水晶デバイスで、新たな歴史を創ろうとしている。同社代表取締役社長の萩原義久氏に、最新動向や新中期経営計画のR2028での展望などお聞きした。
―― 2026年度は増収増益予想ですね。
萩原 26年度業績は期初予想から上ぶれ着地が見通され、売上高は前年度比3%増の59億円、営業利益は3年ぶりに黒字転換して8400万円の利益計上を予想する。前年同期は主力のスマートフォン(スマホ)向け音叉型水晶振動子が米国関税政策影響などで低迷したが、26年度はスマホ向けが回復するほか、車載向けATカット水晶振動子の好調、医療ヘルスケア向け音叉型水晶振動子の伸長が期待できる。
―― 医療ヘルスケア向け伸長の背景は。
萩原 音叉型水晶振動子のTFX-05X(32.768kHz)は、固相拡散接合で振動子とケースを一体成型にした当社独自のクリスタルケース採用により、1.2×1mmと超小型・超薄型を実現している。また、回路も低消費電力設計のため、医療ヘルスケア市場のスマートリングや血糖値センサー、補聴器を身に着けた状態での長時間使用に最適である。そのため、TFX-05Xの採用数は期初の月産100万個から現状は同150万個まで増加傾向にある。低消費電力設計の回路容量に合わせて10~20ppmに周波数を調整するには高度な設計および生産技術を要するが、当社はこのハードルを克服し、低消費電力対応を実現できた。
―― 26年度設備投資計画は近年で最大です。
萩原 ご指摘のとおりであり、26年度の設備投資額は前年度の3.6億円から大幅増額の11.3億円を計画している。この大半が、マザー工場である青森リバーテクノでの高周波対応KoTカット水晶デバイスの量産向け製造設備導入に充てる予定である。KoTカット水晶デバイスは無から有を創出する新製品のため、量産用設備自体を設備会社と共同開発し、26年度内から量産を開始してトライアンドエラーを通じて改善を重ね、28年度の本格立ち上げにつなげられるよう進めていく。ちなみに、KoTカット水晶デバイス用のICも米国IC設計専業メーカーと共同開発した自社オリジナルICとなっている。
―― KoTカット水晶デバイスの特徴を。
萩原 AIサーバー用光トランシーバー向けでの先端開発では、500MHz超の高周波対応が求められており、当社はKoTカット水晶デバイスにおいて625MHzでジッター値12フェムト秒を実現し、かつ2520サイズと小型のKCRO-05を25年度に開発し、現在一部のお客様でサンプル評価が進んでいる。KoTカット水晶デバイスは、単なるクロック用途にとどまらず、低ノイズ、優れたジッター特性により通信の信頼性を大きく向上させる役割を担う重要パーツとなる。将来的には宇宙向けもターゲットになり得る。
―― 新中計R2028について。
萩原 KoTカット水晶デバイスは新中計での最重要トピックであり、28年度からの本格立ち上げが最大の焦点になる。順調な立ち上げを想定し、28年度の業績目標を売上高93億円、営業利益15億円、ROIC13%以上に見定めた。ただし、直近の光トランシーバー向けでは156.25MHzや312.5MHz対応のATカット品が主流のため、足元はATカット品で貢献しながら、28年度以降はKoTカットへのシフトの波を捉えていきたい。
―― モビリティー向けについては。
萩原 ATカット水晶振動子でIATF16949認証を取得し、FCX-04S、FCX-06Sの採用が堅調に推移している。音叉型水晶振動子では既存のTFX-03に加え、車載グレードの信頼性要求に応える音叉型水晶デバイス新製品を開発中であり、27年度内に青森リバーテクノでの量産開始を目指している。
―― 今後の展望を。
萩原 音叉型、ATカット型という既存の2つの柱に加え、KoTカットを新たな柱に育て上げていくことが、中長期に向けて重要なカギとなる。“斬新な変わったことに挑戦したい”という創業以来のDNAを体現したMade in JapanのKoTカット水晶デバイスを世界に発信し、新たな歴史の創出に全社一丸で挑んでいく。
(聞き手・高澤里美記者)
本紙2026年9月17日号5面 掲載